#23.発達障害の治療薬
自分はどうも発達障害らしい。
そんな話を、ちょっと恐る恐るではあったのだけれど、同じリワーク仲間の藤本さんに相談してみたのです。そしたらば、
「自分もバリバリですよ」
とのこと。いやーマジっすか、こんな身近にいたのに全く気が付かなかったです。
「ていうかリワークの中にも多いんじゃないですか? 僕も診断されたのは3カ月くらい前ですけど、そんな気がしてます」
「そうなんですか……いや、全然っ分からないです」
藤本さんはご自身なりに色々と勉強もされたようでした。障害の傾向は人それぞれ強弱はあれど、ストレスを受けやすく、ダウンしやすいんじゃないかという仮説。
「カバネさんは薬もらってます?」
「発達障害の薬ですか?」
「そうです。ADHDの治療薬としては2種類あるみたいなんですが、僕はコンサータという薬を飲んでますね」
「それってどういうものなのでしょう……」
「初めて飲んだ時、世界が変わって見えましたね」
えっ世界? それヤバくね?
「もの凄く静かというか、音もですし、視覚とか匂いとか、何だかすごく落ち着いて見えるんです」
「落ち着きですか」
「例えば、僕は疲労が溜まるほどはっちゃけたくなる傾向があるんですけど、それが治まるというか」
「マジですか」
「ゆっくり考えられるというんですかね。衝動性や注意力の問題が凄く落ち着いています。ただ……」
「ただ?」
「除法型の薬といって、効く時間が12時間とかキッカリ決まってるんですね。んで、効果が切れるとドッと疲れが出るという」
「ドッと」
「えぇ。分かり易いくらいにドッと来ます」
ふむぅ。まぁ薬には多かれ少なかれ、副作用があるわけなのでそれはいいとして、衝動性や注意力の問題が改善される(落ち着く)というのは非常に興味深い点でした。
「あくまで個人の感想ですけどね。人にもよると思いますし、先生に一度相談してみては?」
「そうですね。ありがとうございます」
そんな具合に背中を押してもらって、過日、先生へと相談することになりました。
「うん、良いんじゃない? まず少量から服薬してみて、様子を見るでいいんじゃないかな」
先生から思いの外あっさりと出たOK。
どうも僕の症状は、ドーパミンやノルアドレナリンといった脳内伝達物質の不足などによっておこるらしいのです。そしてコンサータという薬は、それら神経物質の働きを強める効果があるのだとか。
「人によっては副作用も強く出るから、最初は少なめで。効果がありそうだなと思ったら少しずつ増やしていきましょうか」
続けて薬に関する注意事項を教えて貰いました。
覚醒作用が強いので、もし朝に飲み忘れたとしても昼以降は飲まないこと。でないと夜に眠れなくなってしまう。
間違えても容量以上は飲まないこと。効果が強く出過ぎて、副作用に繋がる可能性が高くなる。
あと、この薬は流通も管理されている薬だから、まかり間違っても人に渡さないこと。等々。
そうして翌日の朝から服用することになったのだけれど……正直、藤本さんの言う「世界が変わった」感はありませんでした。静かだな、とか、ゆっくりしているな、とか、そんな印象も特には感じず。
けれど幾つかの変化は明確に感じられて、その一つが日中の眠気。いつもは昼食後の眠気が極めて酷いのに、これがびっくりするほど眠くならない。
もうこれだけで人生における一つの不安が消失したというか、昼過ぎの眠気に怯えなくて済むというのは非常に劇的なもの。みんなこんな不安のない状態でお昼の会議に臨んでいたのかー、マジかー、みたいな。
あと非常に微妙な感覚として、ほんの少しだけ思考がゆっくりになった気する。
例えば家を出る前、ハンカチ、財布、スマホを持ったか確認してから出発できるようになったの。何を言っているんだ? と思われる方もおられるかもですが、僕はよく確認せずにババっと家を出て後で『あああああ忘れてるやんけっ!』となることが多かったの。考えるより早く出発している的な。
でも、行動する前に1テンポだけ考える時間を持てる気がする。ある意味で落ち着いた感覚。動く前に考えられる。それは大きな変化でした。
一方で明確な副作用も。
お腹の奥で何か詰まっているような胃部の不快感。体調が悪い時は吐き気を感じたりとか。あとは手先がプルプル震える。生活に支障が出るほどではないけれど、時折、手が微妙にプルプル震える。
これらの変化や副作用は本当に人によるのだと思います。後から他の人に聞いたりもしたけれど、効果を実感できる人もいれば、できない人もいる。むしろ副作用が強くて合わない人もいる。副作用を全く感じない人も。
これを飲めばADHDが治る、というものでは無いのかも知れません。あくまで個人の所感です。くれぐれも一般論でさえないただの主観とご認識いただければ。
そんな感覚を先生に報告・相談した結果、僕は継続服用する運びとなりました。
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