保健室にて

 ――俺はあの後サッカー部未所属組からボコられ、充希に保健室まで連れてきてもらった。


痛ててててて……


「瑠夏、大丈夫?」

「だ、大丈夫……大丈夫……」


そして、そこには梨音もいた。さっきの格好のままで……だからなんだろう。非常に顔を合わせ辛い。顔を見ただけでも熱ってしまいそうだからだ。


だが……


「おー瑠夏〜。俺の方めっちゃ見てるけどどうした〜? 愛しの彼女さんの顔見るの、恥ずかしいのかい?」


反対側には充希がいた。こいつの顔は別の意味で見たくないな……


「……そもそもお前が口滑らせなければこんなことには!」

「まぁまぁ、どのみち球技大会当日までにはバレていたと思うぜ? それに今、ウジがあいつらをなだめてると思うから」

「そういう問題じゃねぇんだよ……」


と、俺は口で言ったが氏真ならいい感じで説得してくれそうだな。と安心もしていた。


「瑠夏、ごめんなさい。私が応援に来たせいで……」

「いやいや、梨音は悪くないって! むしろ、梨音が来てくれなかったら、俺多分一度もシュート決められないまま終わっていたと思うよ」

「そうかしら……?」

「だからさ梨音。お願いがあるんだけど……」

「……こっち見てお願いしてくれるなら、いいわよ」


おぉ……マジか。でも、この頼みをしないと俺は球技大会に万全な状態では望めない。だから、ようやく梨音に顔を向けることができた。


「ひゅ……///」

「る、瑠夏!? 顔赤いわよ? か、かわいい……」

「ああ……いや、ま、まず俺のお願いを聞いて……」

「あ、そ、そうね!」


俺は顔が紅潮した上に、梨音から言われた言葉により動揺したが、どうにか平静を保ち、話をはじめた。


「もし梨音のチームのバレーボールと、俺らのチームのサッカーの時間が被らなかったら、応援に来てくれるかな?」

「そんなの! 言われるまでもないわよ!」


ほんの少しだけ、断られるかなとは思っていただけに、俺は少し驚いた。なぜそう思ったかというと、梨音も充希や氏真と同じく、球技大会を遊びだと思っているんじゃないか? と思っていたからだ。


「なんなら、時間被ってても瑠夏の応援優先するわよ!」

「うん。それはチームメイトに迷惑かかるからやめようか」

「えー……でも」

「俺だって梨音の応援行きたいし……」

「大丈夫? それだと今日のチームメイト以外の人にも付き合ってることバレて、ボコられるかも知れないわよ? それに、球技大会なんかで私は本気を出すつもりなんてないわよ?」


やっぱり梨音もその考えだったか……それでもいいさ!


「心配ありがとう。梨音。でも、保身なんかより、愛する彼女の応援がしたいんだ! それに、今日一度ボコされたから耐性はついた!」

「……耐性がついたってのは嘘ね」

「あっ……はい。本当はボコられるの少し怖いです」

「でも、ありがとう。確かに瑠夏の応援があれば、私頑張れるわ!」

「り、りりり梨音……!?」


梨音は急に俺の手を触ってきた。しかもすごくベタベタと……そのせいか、俺はまた顔が熱くなった。


「へへへ……お前らのイチャイチャ、胃もたれしそうだぜ」

「「は!?」」


や、やべぇ! 梨音に夢中なあまり、充希がいたこと忘れてた!


「もっとイチャついてもいいいんだぜ〜?」

「い、いや……お前が見つめてるとしづらいんだよ!」

「ははは……」


充希の茶化しにはムカついたものの、俺の球技大会へのやる気が、梨音のおかげで急上昇したのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る