テストの後には……

「はい、みなさん席に着いてください」


俺たちが少しだけ言い争っている間に、先生が教室に入ってきた。


「ほら二人とも。先生が入ってきたから、喧嘩は後で、ね」

「はいはい……」

「別に喧嘩してたわけじゃないんだけどな……」


俺たちは梨音に促され、それぞれ席に座った。


「えー……みなさん、テストお疲れ様でした。赤点のやつはご愁傷様です。追試、がんばってください」


先生のその言葉に心が痛んだのか、赤点であろう生徒たちは一斉に下を向いた。もちろん、紫苑もだ。


「それでは、赤点以外の人は夏休みを楽しんで……と言うとでも思いましたか?」


……え?


「残念ながら、夏休みの前には矢場杉高校との合同球技大会があります!」


……えぇ!? 待て!? そんなの聞いてないぞ!


「待ってましたぁ! 球技大会!」


と、ここで充希が急に大声を出しながら、席から立ち上がった。


「三葉君、席に座ってください」

「ああ……すみません」


しかし先生に咎められ、バツが悪そうな顔ですぐ席に座った。


「えー、では球技大会の説明をします……バスケ、サッカー、バレーのどれか一つ参加したい競技を選んでもらいます。そして、それぞれチームを組んでもらいます。ちなみに、一学年全三クラスが参加しますので、明日の一時間目と二時間目はどうチームを組むのか、話し合いをしてください」


うわ……どれも苦手なやつだわ。しかも仲のいい男子は充希しかいないから、必然的にサッカー選ぶしかないか。多分男女別だし。いや、待てよ。


「あの……先生」

「ん? なんですか流川君」

「欠席することってできますか……?」

「えぇ。構いませんよ」

「で、では僕は……」

「ですがこの合同球技大会に出席しましたら、体育のフル単位をあげます」

「やっぱり出ます!」

「よろしい」


先生め……普段体育をサボったり、結果を出せていない俺たち運動嫌い組の心まで透かしやがって!


「先生!」

「はい、平野さん」

「チームは男女混合ですか? 紫苑、るーちゃんと同じチームがいいんですけど」

「残念ながらチームは男女別です。それに、平野さんはそもそも球技大会に参加できません」

「え? なんでですか?」

「あなた、追試ありますよね? 追試の人は球技大会には参加できないです。なぜなら日程が被っているからです」

「……はい」


紫苑は意気消沈し、席に座った。


「それでは、どの競技にするか明日まで考えてください。では、また来週!」


そう先生は一礼し、あいさつし、教室から出ていった。


「いやー、瑠夏! 楽しみだな!」

「いや、運動嫌いの俺に言ってくるなよ……」


充希は先生がいなくなってすぐ、俺の近くまで来て、こんなことを言ってきた。はぁ、だから運動好きの脳筋は困るんだよ。


「で、瑠夏! お前はどの競技にするんだ!?」

「テンション高いなおい……仲のいい男子お前しかいないから、消去法でサッカーにするよ」

「おお! そうか! サッカーはいいぞ!」

「別にサッカーが好きだから選ぶわけじゃないんだけど……」

「まぁ、これをキッカケにお前がサッカー好きになってくれたらいいんだけどな!」

「いや、そもそも運動好きじゃないから!」


でも……こいつは本当にサッカーが好きなんだな。


「瑠夏!」

「梨音? どうしたの?」


突然、俺たちのところに梨音がやってきた。


「私はバレーボールにするわ! 瑠夏は?」

「俺と同じサッカーだってよ」

「えー、バレーの方がいいわよ?」

「いやー……男女混合だったらバレーにしてたんだけとさ」

「まぁ、でも。時間空いてたら私の試合、見に行ってね」

「わかった」

「それに……」


その言葉を言った直後、梨音は俺の耳に口を近づけ


「……私のブルマ姿、見れるしね」

「……」


少し誘惑するような甘ったるい小さな声でそう言ってきた。


「よ、よし! 球技大会頑張るぞ!」

「おお! 気合い入ってるなー! 瑠夏!」


梨音の誘惑のおかけで、俺のやる気は一気に急上昇した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る