テストの結果

「瑠夏の点数は国語65点、古典35点、数学35点、化学30点、生物35点、英語40点、日本史55点、世界史45点、現代社会38点、保健体育85点……合計463点ね」


俺は梨音にテスト用紙を渡し、点数を音読してもらっている。愛しの彼女にテストの点を見られた挙句、読まれるのは嫌だった。

ちなみになぜ、梨音に点数を読んでもらっているかというと、自己申告だと不正が行われる可能性があるからである。だが、やむを得ない。ジャッジは公平でなくてはいけないからな。


「瑠夏。さっきも言ったけど、私があれだけ教えたのにこの点数はちょっと……うん」

「梨音……ごめん。教えてもらっておいて本当に情けないよ」

「やっぱり瑠夏は私が養わないとね……」

「いや、待って! でも、入学したばかりよりはだいぶ点数は上がってるんだよ!」


ヒモルートはどうにか回避しないと……!


「一番酷くて化学15点だったから!」

「……やっぱり私が養うわ! だから勉強できなくても大丈夫よ!」

「……でも、テストのときは勉強教えてくれよ?」

「……え、えぇ。じゃあ、テスト返すわ」


なんか、露骨に嫌そうな顔したな……本当にこれからも勉強教えてくれるんだろうか?


「よーし! じゃあ次は紫苑だね! 梨音ちゃん! ジャッジお願いします!」


紫苑はルンルンとしながら、自分の答案用紙を梨音に渡した。えらい自信だな……これ俺、負けるんじゃないか? と、少し内心ヒヤヒヤした。


「紫苑の点数は国語40点、古典80点」


は、80!? マジか!?


「数学40点、化学25点、生物30点、英語50点、日本史40点、世界史45点、現代社会50点、保健体育60点……合計460点ね。僅差で瑠夏の勝ちね」

「くっ……負けた! 古典に賭けてたのに!」


紫苑は詳しそうに床に手をつけ、項垂れた。とりあえず、俺は無事に梨音とデートできることに安堵したのだが、それ以上に気になることがあった。


「紫苑ってさ、古典得意だったっけ?」

「え? いやいや、むしろ苦手だけど? 授業のときはいつもボロボロだし」

「じゃあ、梨音の教え方がよかったとか?」

「うーん……それもよかったけど、やっぱり今回の問題がすごく自然に理解できたことかな? 今回の問題、源氏物語だったでしょ?」

「そうだったな……」


それは知っている。知っている上で聞いたのだ。


「古文とかわからないのに、読んでいるうちに六条御息所の気持ちが自然と理解できてね……だから解きやすかったのかな、って」

「……」


これは古典の復習のために源氏物語を調べていたとき……つまりテスト後に分かったことなのだが、六条御息所はヤンデレの元祖と言われている女だ。彼女の気持ちを理解してしまった紫苑はやっぱり……


「それ、とてもよく分かるわよ紫苑! 六条御息所様って、本当に共感性が高いわよね! だから応援したくなっちゃうっていうか……」


ああ、ここにも該当者がもう一人……


「葵の上ポジションの梨音ちゃんは黙ってて」

「なっ!? 誰が葵の上よ!」


やっぱりこの二人、ヤンデレなのだろうか……薄々。いや、バリバリ気づいていたけど。


「そういやさ、紫苑」

「なに? 慰めの言葉なんていらないよ」

「いや、そうじゃなくて……うちの学校は赤点確か30点未満は追試だったよな?」

「そうだけど、それがなに……あ」

「……気づいたか。紫苑」

「うん……紫苑、化学追試だ」

「……ドンマイ」

「だから慰めの言葉はいらないって! ふん!」

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