期末テストは苦労ばかり!

苦あれば楽あり

「えー皆さん。今月乗り切れば夏休みが来るとか調子こいていますが、二週間後に期末テストがあります。期末テストで赤点とか取りやがったら

よくて夏休み没収、悪くて留年です。肝杉からは今のところ留年生は一人も出ていませんが、お隣の矢場杉からは去年留年生が複数人出てしまいました。では、せいぜい勉強頑張ってください。ではみなさん、さようなら! テストのスケジュール、黒板に書いてありますので今日のうちにメモしておいてください! 明日の朝、消しに行きます!」


そして、放課後が終わった直後、クラスメイトたちはまるで水を得た魚のように一斉に黒板に近づき、各々スマホで撮影をした。


「はぁ……本当におバカね。ハイエナのように一斉に飛びかかるなんて。私みたいに冷静にメモしていれば、あんな人混みに行かなくて済むのに」

「あー、うん……そうだね」

「瑠夏、私のメモ見せようか? スマホで撮ってもいいわよ」

「いや……いい」

「瑠夏、どうしたのよ? 様子が変よ?」

「いや、別に……」

「……もしかして、またストーカーされたの? 今度は誰よ!? また藤井さん!? それとも成司!?」

「いや、ストーカーとかされたわけじゃないから……」


あと、なんかしれっと成司先輩のこと呼び捨てにしてるな……さすがに本人の前では言わないよな?


「じゃあ、なんでそんな無気力なのよ?」

「……まぁ、テストがあるからさ」

「そんなに落ち込むことかしら? まだ悪い点数が取れるって決まったわけじゃないのに」


逆にいい点数が取れるって決まったわけでもないんだよな。


「じゃあ、そういう梨音はどうなの?」

「私はいい点数取れるって思ってるわよ。毎日しっかり授業聞いて、重要なところはしっかりノートに書いて、家に帰った後はしっかり予習復習してるんだから!」


……聞く相手を間違えたな。五月のテストで学年一位だった梨音にとって、テストもただの授業の一環に過ぎないんだな。


「あれ? る、瑠夏!? なんか余計落ち込んでない!?」


本当に今でも思う。梨音、俺とよく付き合えるな……こんなバカな俺と。


「うぅぅ〜……るーちゃ〜ん……」


テストと聞き、落ち込んでいる人はもう一人いた。その子は身体を震わせながら、蚊の鳴くような小さな声を出しつつ、俺に近づいてきた。


「紫苑、どうしよう……追試なんてやだよ!」

「紫苑までそんなこと言って……全く」

「成績優秀な梨音ちゃんには紫苑の気持ちなんてわからないよ! 調子乗んな!」

「いや、別に調子に乗ってるわけじゃないわよ……二人とも、普段の授業をちゃんと聞いて、ちゃんと重要なとこノートに書いていればテストなんて朝飯前よ」

「「……」」


梨音の正論が、俺たちの耳を無慈悲にも突き刺した。

なぜなら、俺たちは普段授業をそんなに聞いていないからである。俺は先生の話を聞き流しているし、紫苑に至っては寝ているときもある。寝ていないときは一応授業をちゃんと聞いているのだが……


(本当、なんで俺たち肝杉高校に入れたんだろうな……)


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