場所を変えて再び相談
――部室棟の近く。俺たち三人はそこに集まっていた。その理由は、サッカー部の活動がもうすぐで始まるからである。
「うーん……」
俺は紫苑がなぜ自ら学校から去ろうといたのか考えていた。良心の呵責か? それともあいつなりの償いか? それとも、自分から申告することで罪を軽くするためか? グルグルと三つの仮説が頭の中で回っていた。
「俺、紫苑の様子見に行った方がいいか? 家隣だし……」
「それはさすがにやめておけ。自分から申し出るほどなんだ。お前にすら会いたくないかも知れないだろ?」
「でもな……」
たしかにその通りだが、お互いモヤモヤした気分のままでいるのもよくない。だから充希の意見に全体的に賛成もできなかった。
「まあ、気持ちは分からんでもないよ。恋人とは違った大事な幼馴染だもんな」
「ああ……」
「……私以外の女を気にかけるのはムカつくけど」
「まぁまぁ門矢。あまり目くじら立てんなって」
充希は門矢さんをなだめつつ、話を進めた。
「仮に様子を見に行くとしたら、数日待って落ち着いてからにするか、平野が復学してきたタイミングのほうがいいと思うぜ?」
「……」
「後、お前の親友としてハッキリ言いたいことがある!」
「な、なんだよ……」
充希の声のトーンが少し高くなったため、俺は変に身構えた。
「前から思っていたけど、お前は優柔不断なんだよ! 保健室でも平野と話し合いしたけど、どうせ変に気をつかってよくわからない弁明をしたんだろ?」
「い、いや……俺はまともに話し合いをしようと……そしたら、紫苑が急に服を」
「言い訳はいい! あいつがたとえ何をしてこようが、言葉を使ってはっきりと意思表示をすればいい話だろ!」
「か、簡単に言うなよ……」
「とにかくだ。もし今度お前が平野と話し合いをするなら、ハッキリと意思表示をしろ! 俺は門矢と付き合っている。だから君とは恋人にはなれないってな!」
「……言うけど、大丈夫なのか?」
「まあ教室でお前に暴行を加えた以上、簡単に引き下がるやつとは思えないが……お前自身の意思を表明すれば、上手くことが行くかもしれないぜ?」
「わ、わかったよ……」
確かにそうだ。紫苑も悪いが、ちゃんと意思表示をしなかった俺も悪い。流されてばかりだ……まるで桃太郎に出てくる桃のように。
「二人とも、さっきから平野さんの話ばっかりして……」
「ご、ごめん……」
「いやいや、そこでも不満に思うのかよ……」
俺は謝り、充希は呆れていた。
「あっ、そうだ門矢。お前の彼氏、借りるけどいいか?」
「み、三葉君? もうすぐで部活はじまるんじゃないの? それに……私の瑠夏になにをするつもりなの!?」
「いや、俺はそんな趣味ねぇから! 手短に済ますって。行くぞ、瑠夏」
「お、おう」
「瑠夏、変なことされそうになったらすぐに逃げるのよ」
「そんなことは絶対に起こらないから大丈夫だよ」
門矢さん、意外と頭の中は変なことでいっぱいなのでは……と少しだけ思いつつ、俺は充希について行き、一緒にサッカー部の部室に入った。
部室の中には薄汚れたサッカーボールや洗濯していないであろうユニフォームなどがそこら中に散りばめられていた。
「うわあ……」
「おい、お前今汚いって思っただろ」
「いや、これ見て思わないほうがおかしいから……」
「前は綺麗好きの三年生マネージャーがいたんだが、OK大学を目指すために引退して以降はこの有様だ。ははは……」
「いや笑いごとじゃねえよ。そのマネージャーさんにどんなに迷惑かけていたか悔い改めろと部員全員に伝えてくれ……」
俺は呆れてため息をついた。
「って、そんな話をしに来たんじゃないんだ! お前に大事な話があるんだ!」
「……それで、話って?」
二人きりということは余程のことなのだろう。俺は再び身構えつつ、話を切り出した。
「単刀直入に言う。門矢をデートに誘え」
「え?」
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