第32話 危機


原作も読み、原作者のアーシュラK=ルグウィンの思想に影響され、古代中国の道家思想やネイティブアメリカンの思想、当時ではまだ珍しかったフェミニズムなどに触れた。


 劇中、王子アレンに対してハイタカが告げる台詞がある。



「疫病は世界の均衡を成り立つ上の一つのバランスだが、今回のそれはその均衡を破壊しようとする動きだ。そんなことができるのはこの世の中でたった一つしかない」


 まるで、コロナ禍を予言するかのようなこの台詞を私は何度も反芻した。




 この文章を書き始めてから、世界は再び、戦争の危機に瀕している。


 ウクライナでの侵攻による、悲しいニュースが途切れない日はない。


 この前、御池に私は行った。


 ああ、長閑な風景が湖の前に広がっている、と思えた。


 この地域で伝わった、地球の地殻変動を知りえる神話がかつて、世界を破壊したのだから、とウクライナの惨状を知りながら、私はあの時のように不安に駆られている。


 


 もし、このタイミングで大噴火や大津波が襲来したら?


 どうなるのだろうか?


 もし、戦争の余波が世界中に広がり続けたら? 


 


 私は不安を抱えて生き続けている。


 こうやって、小さく発信することくらいにしか、私にはできないのだから。


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