第28話 言葉の力
解離性障害とは、抱えきれないほどのトラウマが原因で発症する。私の場合は言葉の暴力が主な原因だった。発達障害と診断された私は発達障害の偏見のせいで、解離性障害を発症したのだ。ネット上や本で得た発達障害への偏見や誹謗中傷で十代の私はたくさん傷ついてきた。
現在はトラウマ治療である、『EMDR』を受け、診断名は解離性障害から複雑性PTSDとなっているが、それでも、偏見に対してびくびくしている、あの頃の私がまだ、心には残っている。
今でも、コロナ禍での十代の少年少女たちを見ると、あの頃に味わった苦難を受ける運命が待っていたとすれば、どんな悲しみを抱え込んだのだろう、と思う私がいる。
進学クラスにいたのに、別の学科に転科させられて、その挙句に別の高校に転校させられて、その高校さえもやめさせられた。将来の夢なんて、とてもじゃないけれども描けなかった。親があまりにも不憫だったから、修学旅行の代わりに連れて行ってもらった京都で宍戸さんから褒めてもらえたのだ。
大学だって、本当は行きたかった。好きな勉強をして、サークルに所属して同年代の仲間と交流して、おしゃれなカフェでパソコンを開いてレポートを書いて、教授の興味深い話を聞いてその知識を吸収する。秋めく図書館で蔵書を片端から開いて、本の香りを味わう。
大多数の若者が大学に進学するにも関わらず、心の底から学問を追求したかった私はそのスタートさえも締め出された。もし、大学で勉強ができるなら授業をさぼって遊びに出かけるなんてしない。幅広い教養を身に着け、いろんな可能性に賭けてみたかった。
その話を聞いて、そうか、京大生でもあまり本を読まないのか、と正直なところ、思ってしまった。もちろん、読書家の京大生もいるとは思うけれども、その言葉は高校をやめさせられた少女には、暗い迷宮に射し込む一筋の光のようにも感じられた。おこがましいけれども自信にもなった。
三月書房では、今は亡き思想家の吉本隆明も来店したこともあるという、由緒ある本屋なのだ。
宝箱のような三月書房には何度かお世話になった。今の私にとってバイブルのような町の本屋さんである。
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