真面目女子の恋愛フラグ

@saku-ride

第1話 手元に届いた勝負下着

 桜井明日香は、小包を開けて呆然とした。中には、色とりどりの下着が入っていたからだ。

 仕事を終えて帰宅したら、まるで見計らったかのように宅配のお兄さんがやって来た。差出人は会社の同期である鈴木知美だ。研修旅行で仲良くなって以来、ずっと親しくしている。今は絶賛産休中のため、この前明日香は出産祝いを送った。そのため、内祝いかなと気軽に開けたのだが……。

(なんで下着? しかも、上下セットで五組もある)

下着と言っても、いやらしいものではない。色味もコーラルピンクやアイスブルー、ラベンダーなど可愛らしいパステルカラーだ。最初の驚きが去ると、レースやリボンの美しさに心を惹かれ、ビニル越しにまじまじと眺める。

(すごい……。レースもバラだったり、お花をかたどってる。こっちなんて、リボンの真ん中にパール!)

 普段シンプルで地味な下着を身に着けている明日香は、繊細で美しい下着を間近に見るのが初めてだった。思わずうっとりと観察する。

(いや、それより知美に何のつもりか聞かないと)

 我に返って、手元のスマホでメッセージを送る。

「あれ?」

 よく見ると、小包の底にポストカードが入っていた。

(何のつもりか、ここに書いてあったかも)

 焦ってカードを取り出し、メッセージを確認した明日香は、思わず赤面してカードを放り投げた。そこには太字で〝これを着て日置を落とすべし!〟と書かれていた。

(これを着て!? これを着て……日置にせまれってこと!?)

 その様子を想像して、ますます顔が赤くなる。日置は職場の同期であり、ずっと片想いして来た相手だ。色恋が苦手な明日香は、アプローチなどもちろんできない。しかし、同期の強味で、他の女子社員よりかは仲が良いと思う。(日置に、下着姿で……いやー! 無理無理無理!!)

明日香は頭を振りながら、熱を覚ますためにシャワーを浴びることにした。知美は赤ちゃんが生まれたばかり。どうせすぐに返信は来ないはずだ。

 短いバスタイムを終え、明日香は冷蔵庫からビールと、昨日の残りのおかずを取り出した。シャワーのおかげで、明日香は落ち着きを取り戻している。

(知美から返信が来るまで、くつろいでいよう)

 お皿には和風回鍋肉がのっていた。春キャベツが安かったため回鍋肉にしたのだが、いつも同じじゃつまらないと、昨日は白だしを入れてみた。それが大正解で、味噌の甘味がさっぱりとまとまって、ビールが進む。

 明日香は舌鼓を打ちつつ、スマホで映画を流した。明日香は映画が好きなため、映画が見放題になる動画配信サービスを利用している。

(あ〜、幸せ)

 仕事を終え、ビールを片手に好きな映画を観る。明日香が最もリラックスする時間だ。季節は初夏で、気温が高くなってきているため、ビールがより美味しい。

 幸せに浸っていると、スマホが着信を告げた。相手は知美だ。

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