ちょっとした休憩
まる
第1話
時刻は午前9時15分。
窓から見える車道には、沢山の車とバスが走っている。流れが止まる気配はない。
店の扉は換気の為開け放たれているが、今日は連日の暑さが息をひそめていて、熱風は入ってこない。
お陰で店内の室温は快適を保っている。
落ち着いたウッド調の内装と、暖色灯でほのかに照らされる空間。
壁には年代物のダイヤル式電話とタイプライターが飾ってある。
(この空間好きだ。)
初めてふらりと訪れたサンドウィッチ店で、モーニングをたしなみながら、ふとそんな事を思った。
私はとあるお店の開店時間まで、時間つぶしをしている。
今まで似たような時間つぶしをしたことはあったが、何かを思ったことは無かった。
もっぱらネットカフェで漫画を読みあさり、気づいた時には時間が溶けていた。
そんな時間の過ごし方をするのが常だった。
理由はわからないが、思考する心の余地ができるのは良い事だ。
もしかしたら、温かいローズヒップティーが、モーニングセットに付いてきたからかもしれない。
(これは美味しい)
思えば、暗くない物思いにふけるのは、どれくらいぶりだろう。
朝起きて外出し、近くの駅まで移動できるようになっただけでも大きな進歩だ。
更にフラッシュバックで過呼吸も起こさず、音楽を聴きながらのんきに呼吸をしている。
仕事を辞めて半年。
こんなに心穏やかな午前中は初めてかもしれない。
そしてまた、今自分が心穏やかであると自覚したのは全くもって初めてのことである。
こんなに何にも急かされず、憂鬱さも感じず、ただ目の前の景色を見て、心地良さを感じる感覚は。
もしかしたら心が健康な人からすれば、
【ゆっくりする】とか
【ぼーっとする】とか、
そういうありふれた時間なのかもしれない。
だがしかし、私にはこれが初めての感覚だ。
これがもしそうなのだとすれば。
私は今、人生で初めて、ちょっとした休憩をしている。
ちょっとした休憩 まる @maru0maru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ちょっとした休憩の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
慮る/まる
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
私の友人/まる
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
のんび~り散策ライフ最新/蓮条
★33 エッセイ・ノンフィクション 連載中 49話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます