ムカデゴーレム

 ソイルは早速ゴーレムの改造作業に取り掛かる。


 セモリナさんはソイルがなにをしようとしてるのかがわからず興味津々で聞いてきた。


 ソイルは図面を描きながら答える。


「ムカデから悪路に対する解決策を思いついたんですよ」


「ムカデからってどういうこと?」


「多分完成すれば僕の言っている事がわかると思います」


 ソイルは悪路を物ともせず歩き回るわちゃわちゃと無数に生えるムカデの足を見て、ゴーレムも沢山の数を並べたら悪路でも問題なく歩けるんじゃないかと思いついたのだ。


 既に作り込んだバックパック5つをジョイントの魔法でくっつけ長さ10メトル程の長いコンテナを作り出す。


 そのコンテナの左右の長い側面をゴーレムの肩にかつがせる感じでくっ付けまくる。


「出来た!」


 コンテナの左右に各5体のゴーレムがくっついて足がたくさん生えた姿はムカデそのものだった。


 それを見たケイトさんもセモリナさんもドン引きだ。


「キモイわ」


「キモイわね」


「悪夢に出てきそうな魔界の造形物だわ」


「そこまでムカデに似せなくともいいのに」


 第一印象はすこぶる悪かったけど、それはあくまでも見た目。

 悪路の走破性能は抜群なはずだ。


 ソイルはムカデゴーレムの性能を力説する。


「このムカデゴーレムは見た目は悪いですが、10体のゴーレムが同時に一つのコンテナを運搬するので数体のゴーレムが穴ぼこで足を取られても他のゴーレムがリカバリーをし悪路をものとせず走ることが出来ます。それにバックパック1箱に対してゴーレム二体の割合で配置していますので速度も上がっているはずです」


 以前ソイルは、2体のゴーレムでバックパックを持って運ぶ実験をした。


 バックパックを手に持って運んでいたのでどうしてもゴーレム同士が向い合う感じになってしまいゴーレムの走行としては無理のある横歩きになってしまって走行速度がいちじるしく遅くなってしまった。


 しかし、今度は前歩きとなるようにゴーレムを配置した。


 また、悪路への対処でゴーレムを増やし悪路の走破性だけではなく、1体のゴーレムに掛かる重量負荷も下げ運搬速度も上げたのだ。


 早速、村を出た道で走行試験を始める。


 先頭のゴーレム1号と2号が合図をとると他のゴーレムが復唱する。


「ゴレ! ゴレ! ゴレ! ゴレ!」


「「「ゴレ! ゴレ! ゴレ! ゴレ!」」」


 号令で歩くタイミングが取れているのか、1体2体が穴でつまずいても全く問題なく走れている。


 しかも速度はゴーレム本来の歩く速さに近く、馬車より若干遅い程度の速度。


 これならハーベスタ村からウッドストック迄10時間ちょっと、日の出に出れば日の入りには到着出来そうだ。


 試験途中、同族に縄張りを荒らされたと勘違いしたムカデがゴーレムを襲ってきたが、ゴーレムたちに引きつぶされてぺっちゃんこだ。


 ソイルはこれでもかと自慢気に語り出す。


「どうです、ムカデゴーレムは! これなら悪路でも荷物を運びまくりだし、速度も速くなりましたよ。素晴らしいでしょう?」


 そんなソイルにケイトさんもセモリナさんはぐうの音も出ない。


「確かに悪路の走破性能が凄いわね。悔しいけど完敗よ。あと、ムカデゴーレムって名前は気持ち悪いから止めなさい」


「確かに馬車並みの走行速度は凄いわね。その勝ち誇った顔がムカつくけど完敗よ。あと、ムカデゴーレムって名前は気持ち悪いから止めてよね」


 二人がなんで悔しいかわからないソイルであったがムカデゴーレム改めトレーラーゴーレムは無事完成。


 その後、コンテナの保冷性能に問題があることが発覚したがコンテナの内側に軽石を吹き付けることで解決。


 問題だらけだった輸送問題は全て解決した。


 ソイルたちは翌朝の輸送作戦を待つばかりとなった。

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