Ⅱ 品定めの観覧客
「──確かに腕っぷしの強い者は集まるでしょうが、剣ばかりか火器も使う実戦で役に立ちますかな?」
「いや、狭い船上での白兵戦となれば、間合いの近い素手での戦法はむしろ優位に働く。何かと役に立ってくれるだろうさ」
天高く秋晴れの空の下、老若男女様々な階層の人々がひしめき合う
いずれも「大きな一つ眼から放射状に降り注ぐ光」──プロフェシア教のシンボル〝神の眼差し〟と、それを挟む羊の巻角の紋章を描く白い
「なるほど。それでこの大会を見たいと急に言い出されたんですね」
また、そのとなりでは、やはり白い
彼女も同じく白金の羊角騎士団に属する魔術担当官、もとは流浪の民の魔女で、なおかつ修道女でもあった過去を持つメデイアという異色の女性団員だ。
「ああ。良い人材が見つかれば良いのだがな……」
メデイアの言葉に、ドン・ハーソンは開会式の行われている
彼ら羊角騎士三人がここを訪れたのは、単に娯楽として武闘試合を楽しむためではない。中流の騎士階級ながらも
しかも、そもそもは護教のために組織された修道騎士団であったものの、若き皇帝カルロマグノが彼らに求めたのは異端よりも海賊の討伐であったために、より広い分野からの人材登用をハーソンは欲しているのだ。
カルロマグノは大海洋国家エルドラニア王国の国王でもあり、遥か海の向こうに発見した新たなる領土〝新天地〟の海を脅かす海賊に頭を悩ませているのである。
ともかくも、そんなわけでちょうどイスカンドリーアの近くまで来ていた彼らは、この帝国一武闘会の話を偶然耳にして、急遽立ち寄ることにしたという次第である。
「とりあえず、一番の注目株は前回の優勝者、〝暴君〟ことハブリゲスのアミーゴスと、そのライバル、準優勝だった〝鉄人〟の異名をとるノルマンディーノのリュックスですな」
ハーソンの傍ら、会場入口前で売っていた公式パンフレットを眺めながら、副団長アウグストが選手を値踏みするかのようにそう言った──。
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