【4人目 医者の男】

高級そうなスーツをきっちりと着込んだ男は、重々しい空気で語り始めました。

 

「神父様。私の罪を聞いて下さい。


私は医者をしています。自分で言う事ではないですが、看護師や患者さん達から信頼して貰えて

順風満帆な医者人生だと思います。


ですが、私は医療ミスをしてしまいました。

患者の取り違えです。


私は長年、仕事のプレッシャーから不眠症に悩まされており、その日も睡眠薬を飲んでやっと3時間ほど眠れる状態でした。


注意が散漫だったのは認めます。

そんな日に限って提携している会社の健康診断の予定があり、いつもより患者さんが多かったのです。


健康診断を受けた人の中に、癌が見付かった人が居ました。

もう何箇所にも転移しており、完全に手の施しようがない状態でした。

すぐに告知して、治療の方針を決めなければいけないので、その日の内に告知することにしました。


ただ、この時不運が重なったのです。


そのがん患者は「佐藤」という平凡な名前でした

その人の一人前に居た患者も「佐藤」だったのです。


私はカルテを取り違えてしまいました。


間違った人物にガン告知をしてしまったのです。


幸いその事には誰も気が付いておらず、その患者も当院で治療をする事にはならなかったので

どこか別の病院に行けば「只の誤診」として処理されるでしょう。


でも私は本当のがん患者の方への告知を怠ったのです。

どちらにしても手の施しようがないので、些細なミスではありますが

私の完璧な医者人生のしょうもないミスを誰にも話すことが出来ないのが心苦しく

ここで神父様にお話させて頂きました。


これで神は私を許し、願いを叶えてくれるでしょうか?」

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