第72話 獣人達の覚悟(1)

「あんたニンゲンなのに強いな!!」

「ホントよね!あのクヴァイをあんな簡単に!」

「お仲間もとんでもないな!すっげぇ!!」


 虎の獣人達を縛り上げていると、すぐにチユリさんが手伝い始め、それを見た他の獣人達も手伝ってくれた。

 そして、この騒ぎである。


 目をキラキラとさせて詰め寄って来る獣人達に苦笑いをしていると、チユリさんが笑顔で理由を教えてくれた。


「獣人は強い者に敬意を抱いたり、好意をいだやすいのですよ。」


 なるほど。

 俺と同じようにレイリー達もそれぞれ詰め寄られているようだ。


「ところで、何故ニンゲンのあなたが獣人の集落に?それに、お仲間もエルフ種、人魚種、鬼に精霊と来ている。もしや、あなたは勇者様なのでしょうか?」


 年重の獣人の女性がそう聞いて来た。

 ふむ・・・


「それでは、詳しく話をしよう。だが、あなた方は飢えなどで健康状態が良くなさそうだ。少し食事の準備をするので、半刻後にこの集落の入り口付近の広場に集まってもらえるか?みんなで食事をしよう。あ、それとそこにいる虎獣人をどうするのかだが・・・任せても良いだろうか?」

「はい、では、その間に決めておきましょう。」


 という事で、俺たちは食事の準備をする事にした。

 食材は、ここに来るまでに狩った獣や、道中見つけた野菜などを使えば良いし、調味料はたくさん持っているからな。


「じゃあ、ボクはシノブさん達を手伝って・・・」

「あ、チユリはわたしとルールーと一緒にあなたの家に行くわよ?」

「え?」

「お母さんが病気なんでしょ?一度診せてよ。もしかしたら治療法がわかるかもしれないし。リーリエもこっちに来れる?」

『はい、行けますよ?』

「へ?あ、ありがとうございます!こちらです!!」


 レイリーとルールー、リーリエはチユリさんと一緒にチユリさんの母親の元に向かう。

 ・・・ん?

 リーリエってそんなに離れる事が出来るのか?

 

 なんというか・・・自由なステータスだな。

 まぁ、考えても仕方がない。

 

 というか、最近気がついた事がある。


 リーリエは俺に何かを気が付かれたくないようだ。

 

 ・・・それが、百合さんに関係する事なのか何かはわからないが、リーリエが言わないって事は気が付かれたく無いって事だ。

 今はまだ知らないフリをしておこう。


 なんとなく、その方が良い気もするしな。





 俺とリュリュとキョウカが食事の準備をしていると、レイリー達が帰って来た。

 

「どうだ?」

「そうね・・・まず、普通の回復魔法では病気は治せないわ。だから、キュアっていう症状を改善させる魔法を使ったんだけど・・・駄目だった。」


 レイリーが難しそうな顔をしていた。

 チユリさんもしょんぼりしている。


『忍様、生活魔法のキュアでは駄目でも、まだ希望はあります。』


 そんな空気を打ち破るようにリーリエが切り出した。

 

『光魔法の状態異常回復であれば、可能性があります。』

「ルールーもそう思うの。そして光魔法は・・・」


 ・・・ヴィクトリアさんが使用出来る、か。

 なら、なんとしても会って教えて貰うか一緒に来て貰うかしなければな。


「なら、ヴィクトリアさんに絶対に会わないとねぇ!」

「そうさね。事情を話せば協力してくれるかもしれないからねぇ。」

「そんなに甘い奴じゃないの・・・でも、なんだかんだで協力はしてくれそうな気がするの。」


 ふむ。

 目的が一つ加わったな。

 頑張らねば。


「おお、いい匂いじゃ!」

「久しぶりのお肉・・・」

「はぁ・・・お腹がぺこぺこぉ・・・」


 そんな話をしていると、獣人の集団がぞろぞろと歩いてきた。


「結論は出たのか?」

「・・・はい、あの者達は・・・」

「いや、良い。あなた方が納得する結論が出たのなら、俺にとやかく言う資格は無いからな。」


 処刑されたのか、それとも追放されたのかわからない。

 だが、実際の被害者である彼らが納得したのであればそれで構わない。


 それよりも、とりあえず飯だ!


 もう、涎が垂れているようだからな。

 まずは暖かい飯を食べて落ち着いて貰おう。

 話はそれからだ。







 かなりの量の食事を準備したのだが、あっという間に無くなってしまった。

 元々獣人は健啖家なようで、凄まじい勢いで食事が消えていくのを見ると、気持ちいいくらいだった。


 そして、これほど飢えさせているのを見ると、虐げていたあの虎獣人達に腹が立ってくる。

 まぁ、原因は排除したから、今後は大丈夫だと思うが・・・まぁ、提案だけしてみるか。

 っと、その前にまずは俺たちの素性を説明すべきか。


「さて、みんな落ち着いたか?では、俺の事について話そうと思うのだが、良いだろうか?」


 俺がそう言うと、獣人達が俺を見た。

 さて、話すとするか。







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