第67話 元魔族領へ!

「では行ってくる。」

「シノブ殿!お気をつけて!!」

「レイリー様!無事のお帰りを祈っております!」

「勿論よ。あなた達も後は頼むわね。」

「リュリュ?ちゃんと帰って来るのですよ?」

「うん!ママ、ディアをお願いねぇ?」

「キョウカ!帰って来たら可愛い服ちゃんと着てね?」

「うっ・・・あ、アタイには似合わねぇってのに・・・」

「ルールー様、シノブ殿やレイリー様方をお頼みしますぞ。」

「任せるの。ちゃんと無事に帰って来るの。」

「リーリエ様、こちらはお任せ下さい。あなた様の計画通り開拓を進めます。」

『お頼みしました。とにかく安全第一でお願いしますね?』


 ディアの広場でみんなを前に出発の挨拶をしているところだ。

 それぞれ挨拶を交わし、俺たちは今日から旅に出る。


 前世を含めて、旅に出るのは初めてだ。

 キョウカの村に行った時にも二週間ほど出かけたが、それでも旅というほどでは無いと思うしな。


 広場にいる者達は笑顔だが、中には心配そうな者達もいる。

 というよりも、笑顔の者達も心配する気持ちを見せないように笑顔でいるのだろう。


 絶対に帰って来なければな。


「ディアを頼む!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」」」」」」」」」」」


 最後にそう言って俺たちはディアを後にした。



 



 移動は、基本小走りだ。

 

 本当は、馬車か何かがあると良いのだが、残念ながら馬がいない。


 一応、旅先で入手出来た場合を考慮し、馬車そのものはみんなで作り上げた。

 それも、リーリエの知識を使ったもので、かなりの速度が出せる・・・予定らしい。


 なんでも、さすぺんしょん?というものを使用しており、また、軸や車輪にミスリルを大胆に使ったため、頑丈さも軽さもある特別製との事だ。

 ぶれーきもあり、速度調整も出来る優れもの、というリーリエの言葉を聞いたが、俺にはそれらがどんなものかは詳しく知らない。

 本当はべありんぐ?という物を作りたかったらしいが、大きさを揃えられなかったそうで見送られたそうだ。

 だが、ミスリルを使用した事で無くても十分な効果があるらしい。

 

 リーリエの力作だ。

 だから出来れば途中で馬を捕まえたい。


 








 

 旅立ってから5日が経過した。

 旅は順調だ。


 それにしても、魔物化した生き物が多い。


 幸い、ディア付近ではこれほどの魔物化した生き物はいない。

 鬼族の里に行った時でも、これほど多くなかった気がする。


 この短期間に増えたのか?


「違うの。これは多分・・・集まってきているの。」

「集まってる?なんで?」

「魔物化した生き物は、知性ある者が集まるところを狙うの。だからこれは多分・・・」

「ちっ!目指す場所はディア・・・って事かい?」

「え〜っ!た、大変じゃないのぉ!?」


 ・・・そういう事か。

 これは、戻った方が良いのか?


『進みましょう。』

「リーリエ?」


 何故だ?


「なんでよ?」

『ディアにいる方々は、忍様達が鍛え直したでしょう?中型までの魔物であればそうそう負けませんし、大型であっても囲めば負けないでしょう。もう少し信じようと言っているのです。彼らだけで乗り越えれば自信にも繋がりますしね。それに・・・』


 リーリエはそこで言葉を切る。


『今は、忍様達にしか出来ない事を成すべきでしょう。少しでもディアのために。』


 信じる、か。

 確かにそうだ。

 彼らも強くなった。

 俺たちには俺たちにしかできないことを。


「進もう。但し、出来る限り魔物化しているものは倒しながら。」


 レイリー達が頷く。

 なんとしても、ヴィクトリアさんに会って知識を得なければな。








 俺たちは旅を続けた。

 そして、10日目。


「・・・かなり遠くまで来たな。」


 俺達は森の中を進んでいる。

 ルールーの話では、この森は広大で、迂回するよりも通り抜けるほうが時間の短縮になるとの事だ。


 一応、森の中にも道はあるが、それでもまっすぐなものは無い。

 方角はルールーが地脈から読み取り問題は無いので、獣道らしき場所を通り抜けていく。


「・・・ん?何か大きな気配が・・・」

「確かにするの。魔物の気配が。でも・・・なんだかおかしいの。魔物同士で戦っているような・・・」

「確認した方がいいねぇ。どちらにせよ魔物なんだ。倒しておいた方が良いだろう?」


 確かにキョウカの言う通りだ。

 数を減らした方が良い。


 俺たちは気配のする方に進む。


 するとそこには驚くべき光景があった。


「くっ・・・!?」


 しゃがみこんで脇腹を押さえている女の子と、


「ブルルルルルッ!!」


 その前に立ちはだかり周囲を威嚇している巨馬。


「「「「「「「「「「「ガルルルルルルッ!!!」」」」」」」」」」」」


 それを取り囲む10匹の狼だった。

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