第56話 破滅の力

ドゴォォォォォォン!!

ドォォ・・・・・・ン


「凄い音!もう始まってる!!」

「ルーちゃん大丈夫かなぁ!?」

「わかんないねぇ!だが、ここまで衝撃が来るなんざとんでもないね!!気を抜くんじゃないよ!!」


 レイリー、リュリュ、キョウカ共に緊張が溢れる表情で走る。

 俺もおそらくそうなっているだろう。


 目の前にいないにも関わらずここまで届く戦いの衝撃、そして圧倒的な気配が二つ。


 一つはあの化け物の気配、そしてもう一つは・・・


「ルールー、これほどの魔力・・・流石は勇者パーティの一員だった、という事か・・・!!」


 見た目は子供の癖に、凄まじい魔力の圧を感じる。

 出会った当初に親父を圧倒したというのも頷ける話だ。

 

 ルールーは言っていた。

 俺たちの力は、出会った当初の親父と同じくらいの力だと。


 そしてそんなルールーを超えていると思われるあの化け物。


 はっきり言って絶望的だ。


 だが、なんとかしてルールーを助けないと!


 

 そう思って走る速度をあげる俺たち。



  



 しかし、そんな俺たちを嘲笑うかのように状況は悪化する。



 突然、ビシビシという音を立てて周囲の風景がひび割れる。


「なんなのぉ!?」

「!?これ、位相のズレが壊されてる!?」

『なんという事!このまでは森にも甚大な被害が・・・!?』


 リュリュの叫びにレイリーが答え、リーリエも驚愕している。

 ルールーが術を維持できない程ダメージを受けたのか!?

 それとも無理矢理こじ開けるだけの魔力をあの化け物が放っているのか!?


パキンッ!!!!!


 大きな何かが割れる音。


 その瞬間、周囲の風景が砕け散り、目の前には森の風景と・・・


 ドォォォォン!!!


 巻き起こる火災、木をなぎ倒す音、そして・・・


「なんだい!?あんな所にでっかい木がいきなり!?」

「違うわ!多分あれが聖樹なんじゃない!?」

「だんだん爆発が近寄って行ってるよぉ!?」


 くっ!?

 急がないと!!


 俺たちは急いで聖樹と思われる木に向かう。


 だんだんと爆発などの発生点に近づいている。



 そして、


「追いついた!ルール・・・な!?」


 俺たちの目の前に血まみれで、それでも歯を食いしばって立っているルールーと、依然黒い闇を纏った化け物の姿だった。


「ルーちゃん!」

「ルールー!!大丈夫!?」

「な!?レナの子達!?なんで逃げてないの!?来ちゃ駄目なの!!」


 リュリュとレイリーの呼び声でこちらに気が付き目を丸くした後、追い返そうとするルールー。


「レイリー!リュリュ!魔法で化け物に攻撃!キョウカ!俺と撹乱するぞ!」

「おうっ!」

「駄目なの!!手を出しちゃだめなの!!お願い!逃げてなの!!」


 懇願するようなルールーの叫び声。

 

「それは聞けない!親父達の仲間を見捨てられるか!!スキル【鬼神の血】!」


 すでに気功術は発動させているし、各称号も発動している。


「おおおおっ!!!」

「だめぇぇぇぇぇ!!」


 レイリーとリュリュの魔法の援護の最中、化け物に立ち向かう。

 ルールーの叫び声が聞こえるが、構わず俺は高速で動き回って化け物に近づく!

 

「【気闘術】!くらえ化け物!!せぁぁぁぁっ!」


 俺は剣鉈と腰鉈を振り抜いた。

 的はデカい!

 絶対避けられん!! 


 バキィィィィン!!!


 化け物の身体に直撃した刀身が砕け散る。


 バカな!?

 ミスリルなんだぞ!?

 ゴウエンですら避けたのに!


「グオオオォォォォォォッ!!!!!!!!!」


 化け物が叫んだ瞬間、目の前が真っ暗になって凄まじい衝撃が襲った。


 何が・・・起こった・・・!?

 凄まじい痛みで頭が回らない。


「嘘だろ!?シノブがあんなに簡単に!?くそっ!!」

「アイツお父様とお母様を殺した時よりもさらに強くなってる!?魔法も全然効いてない!!」


 キョウカとレイリーの声。


 今のはいったい・・・


「アイツの咆哮なの!!咆哮に魔力を乗せてるの!!ルールーが時間を稼ぐから、レナの子を回復させて逃げるの!!化け物!食らうが良いの!!『ソーンフィールド』!!!」


 ルールーが血まみれの手を化け物に向ける。

 すると、化け物を中心に大量の茨が生え、不規則に動きながら化け物を縛り上げようとする。


 揺れていた視界が戻り注視すると、茨は岩ですら粉々に砕いているようだ。

 凄まじい魔法だ・・・


「グルゥゥゥゥッ!!!!」


 ブチブチブチィッ!!!


 無理矢理茨を引き裂きながら一歩一歩近寄ってくる化け物。

 少なくとも出血しているようには見えない。


「はやく・・・はやく逃げるの!!アイツが使う力は破滅の力・・・」


 ルールーがそう叫んだ瞬間だった。


「ギャオォォォォォッ!!!」




 化け物の叫び声。


 そして、信じられない位大きな魔法陣が空に浮かび上がる。


「嘘・・・」

「そんな・・・」

「・・・こ、こんな・・・」


 絶望的な状況に呆然と空を見上げ足を止めるレイリー、リュリュ、キョウカ。


「ぐっ・・・みんな俺を盾に・・・」


 身を呈してでもみんなを守ろうとした俺の言葉を遮るように、


「未熟!!動きを止めるななのっ!!こっちに来るの!『ディバインシールド』!!ここから絶対に離れないの!!」


 ルールーから放たれる神々しい光のドームが俺たちを包む。

 その瞬間



 カッッッッッ!!!!



 凄まじい閃光と轟音!


「「きゃああああああ!?」」

「くぅっ!?」

「うおっ!?」


 衝撃が俺たちを襲う。


「くぅぅぅぅっ!?」


 ルールーの苦しげな声。


 そして光は収まり・・・


「・・・化け物め。」


 俺たちの目の前には、肩で生きをしながら俺たちを守ってくれたルールーと、依然、悠然としている化け物、そして・・・



 ルールーが守った所以外、半径100m以上に渡り一面えぐり取られたような地面だけを残した森。

 

 視界にある聖樹だった。


「破滅の・・・力・・・」


 どうすれば良いんだこんなの・・・

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