第41話 ミスリルの武器
キョウカも落ち着き就寝準備をする。
・・・実は、キョウカが来てからこの時間が俺を悩ませているのだ。
何故なら・・・
「シノブ〜?早く来なさいよ。」
「シノブ〜ン寝よ〜?」
「・・・さっさと寝るぞ・・・うう、緊張する・・・いや、女は度胸だ!シノブ!早くしろよな!!」
そう、就寝時間だ。
俺の家にある布団は、元々俺が使っていた布団、そして両親の布団の計三組だ。
そしていまここにいる人数は四人。
布団が足りないのだ。
だから俺は別の所で寝るとそう言ったのだが・・・
「何言ってるのよ。駄目よそんなの。」
「そうだよぅ。ここはシノブンのおうちなんだからねぇ。」
「・・・あ〜、居候のアタイが別で寝るぜ?」
そう言って譲らないのだ。
勿論、女性であるキョウカを布団も無く寝せるわけにもいかない。
しかし布団が無いのだ。
だから俺が別で寝る。
俺はそう主張した。
だが、
『ギリギリギリ・・・し、忍様に布団もな、無しで寝せるわけにはい、いけません・・・きぃ〜〜〜っ!なんでこんな事にっ!!・・・ほ、方法がないわけではありません・・布団を並べて・・・みんなで・・・ぐすっ・・・みんなで横になるの・・・です・・・しくしく・・・』
何故か半泣きのリーリエからの助言で、ほぼ強制的にみんなで寝る事になってしまった。
初日はほとんど寝られなかった。
というか、いくら布団を並べたとしても、狭いものは狭い。
なるべく端の方で身を縮こませていた。
隣で寝ていたレイリーはスヤスヤと寝ていたが。
その翌日のリュリュは、最初こそもぞもぞとしていたが、やがて寝息が聞こえてきたので寝られたらしい。
だが、キョウカだけは隣で寝ることは無かった。
まぁ、それが普通だよな。
なにせ、俺はみんなと結婚をしているわけでは無いのだから。
そう、思っていたのだが・・・
「・・・おい、キョウカ。」
「な、な、なんだ?」
「どういう心変わりだ?君は隣を拒否していたじゃないか。」
「・・・うっせ。いいだろ別に。」
何故か今日は、キョウカが隣で寝ることになった。
ようやく、レイリーとリュリュが隣で寝るのに慣れて来ていたのだが・・・
『う・・・う・・・ついにキョウカさんまで・・・』
そしてリーリエの情緒が不安定だ。
大丈夫かこれ?
「は〜い二人共早く寝るわよ!(ふふふ・・・リーリエに義理立てしてこっちからは手を出さないけど、シノブが手をだしたら仕方がないわよね〜♬)」
「シノブン、きょーちゃんおやすみ〜(ふぅ〜だいぶシノブンが傍にいるのに慣れたねぇ。もっとシノブンと仲良くしたいなぁ。えへへぇ♡いつもシノブンと一緒〜!)」
「・・・ほら、早く横になりな!(くぅっ!?レイリーもリュリュもいっつもこんな照れくさいの我慢してんのかい!?しかしアタイはなんでこんな・・・でも、なんとなく隣で寝たくなった・・・というか、レイリーとリュリュだけなのが悔しいっていうか・・・なんだこの気持ちは?)」
・・・なんてこった。
『・・・忍さん・・・ぐすっ・・・明日はやることいっぱいですよ・・・早くお休みに・・・お休みになって下さい・・・(ふぇ〜ん!早く忍さんのお布団を作ってもらわないと!でも、綿が無いんですよね・・・それと布も。どうにかしないと・・・間違いが・・・間違いがあったら・・・ふぇ〜ん!)』
翌日、眠い目をこすり日課の気功術の鍛錬と、同じ様に目をこするキョウカとの軽い組み手を行い朝食。
そして、その後は昨日言っていた話を聞いた。
『まず、忍様には採掘したミスリルを使った武具や防具を製造して頂きます。本来は適切な炉が必要ですが、私が調べた所、レイリーやリュリュ、キョウカさんの手助けがあればなんとか出来るようになるでしょう。』
リーリエが提示したその方法とは、キョウカが魔法で火力を上げ、レイリーが魔力を増幅してミスリルに流し込む、そして俺が鍛造でそれをミスリルに留めながら成形を行い、焼入れという熱した金属を冷やす工程をリュリュの魔法で行うというものだった。
なるほど。
みんなで協力するのか。
というわけでやってみる。
最初は小物で試して見た。
「・・・中々難しいわね。」
「結構魔力使うな。」
「ふ〜・・・疲れるねぇ。」
結果は失敗。
レイリー、キョウカ、リュリュも難しい顔をしている。
かくいう俺もそうだ。
かなり難易度が高い。
『みなさん、頑張って下さい。ミスリルの武具は力を増幅させますし、武器としても優れています。きっとみなさんの力になるでしょう。』
それからは試行錯誤だった。
何日もかかった。
勿論、日々の生活もある。
基本、午前中は生活に必要な狩りなどをし、午後からは鍛冶。
そして、そんな生活が一月ほど続いた。
結果として、ミスリルの鍛冶は成功した。
はじめて成功したときにはみんなで喜んだ。
一度成功したら、その後は失敗する事は無かった。
というのも、俺が【魔法鍛冶】というスキルを入手できたからだ。
これで格段に作業しやすくなったし、驚く効果もあった。
大変嬉しい。
まあ、それはまた別の話なのだが。
今、俺たちの前には、それぞれに作った武器がある。
レイリーには弓と耳飾り、そして指輪。
この弓はミスリルで出来ており、魔力を流しながら引くとしなるようになっていて、さらに放つ弓に魔力を乗せることが出来るようになった。
耳飾りは魔力を流す事で身体能力の向上。
指輪は魔法の発動体で、威力が向上するものであり、全員が持っている。
リュリュは、魔法筒とサークレット、そして指輪だ。
魔法筒というのは、俺たちの世界にあった銃というものと同じような形状をしている。
但し、火薬によって鉄の礫を打ち出すわけではなく、魔力を使用し魔法を打ち出すというものだ。
詠唱が無い分だけ魔法よりも早く、連射も可能だ。
威力は強力な魔法ほどではないので、威力が必要な時は指輪を使って魔法を使えば良い。
サークレットはレイリーの耳飾りと同じ効果だ。
キョウカは、手甲と脚甲だ。
最初、斧を作ろうとしたが、それは俺の家にある炉では難しかった。
なので、手甲と脚甲に魔力をこめる事で防御と、それを使った体術による攻撃力の上昇、また、同じ様に指輪を渡してあるので、魔法威力の向上が可能になった。
そして、最後に俺だ。
俺は、剣鉈と腰鉈を一振りずつと、腕輪を作った。
腕輪の効果は耳飾りやサークレットと同じ。
指輪も同じだ。
剣鉈と腰鉈は魔力を込めることで切れ味が段違いになり、また少しだが攻撃範囲を伸ばせる事が判明した。
とりあえず、これで鍛冶は一度止め、それぞれ武具に慣れるため、狩りや組み手などに時間を費やす事になった。
そして一週間が過ぎ、武具にも慣れてきた頃、リーリエ的に嬉しい発見があった。
アダマス氏族の一人が、綿をみつけて来たのだ。
『すぐに採取しましょう!すぐに!!』
すぐに食いついたリーリエ。
だが、発見した場所は少し離れた場所らしい。
「他にも何かあるかもしれない。みんなで行ってみようか。」
こうして、俺たちはその場所に向かう事にした。
そして、出会ったのだ。
災厄に。
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