第15話 レイリーがいる日常

「シノブー!これ終わったよー!!」

「ああ、ありがとうレイリー。」


 レイリーが来てから一ヶ月が過ぎた。

 身体の調子が戻ってからは、レイリーは家の事を色々手伝ってくれている。

 正直、かなり助かっている。

 やはり、人手というのは大事なんだなと理解した。

 なにせ、前世でも一人だったからなぁ。


 しかし、レイリーが出ていく素振りが見えない。

 まぁ、俺も無理に追い出す気はない。

 さっきも思ったが、助かっているのは間違いないのだから。


 滞在が長期になりそうなので、寝る時は、親父達が使用していた布団を洗濯、補修し使用する事にした。

 部屋は同じだ。

 特に何かあるわけでは無い。

 リーリエは最初難色を示していたが、一時的なものだからと説得して、なんとか納得してもらった。


「よし、じゃあ訓練するか。」

「りょうかーい!」


 俺は魔力の訓練を主にしている。

 気功術は朝の訓練で型をなぞる時に練習し、この訓練時間は魔力の訓練に当てていた。


「ふぅ・・・よーし!だいぶ出来てきた!!」

「おお・・・」


 そして、レイリーもまた訓練していた。

 気功術の発想から、魔力でも同じ事が出来ないかと、魔力で身体を強化する術を考え、訓練していたのだ。

 そして、その甲斐もあり・・・


「あ!?スキル覚えたわ!!」

「お?本当か?どんな?」

「え〜っとね・・・魔纏まてん術・・・だって」

「へぇ。どんなスキルなんだ?リーリエわかるか?」

『勿論です忍様。魔纏術とは、魔力を身に纏い、身体能力の強化、そして、魔法威力の増加の効果があります。』

「ふ〜ん・・・身体能力の強化はわかるけど、魔法の威力もあがるの?」

『はい、魔力を最初に身に纏っておく事によって、全身に魔力紋があるのと同じ効果となり、効率化の上昇、結果として、消費魔力の減少、そして威力の向上となります。但し、そもそも魔纏術使用中は魔力を消費していますので、常に使うのは難しいと思慮されます。気功術と同じ様に、いざという時の使用が望ましいでしょう。まぁ、鍛錬によっては常に発動しておく事も出来るかもしれませんが。』


 なるほどな。

 それにしても、それってかなり難しいのではないか?

 手に魔力を集めるだけでも一苦労だったのだが。


『驚きました。魔纏術のスキルは、一流の熟練のエルフ種の戦士が稀に持っているもので、過去の履歴を見ると、エルフの王族のみに伝わっていた、とあります。レイリーは凄いのですね。』

「ふっふーん!そうよ〜!凄いでしょ〜!!」


 リーリエからの絶賛に、レイリーは鼻高々だ。

 しかし、最初はどうなるかと思ったが、思っていた以上に二人・・・と言っていいかわからないが、この二人は仲が良くなった。

 いつの間にか呼び捨てで呼びあってるし。


『ええ、ポンコツエルフにはもったいないですね。』

「ああ〜ん!?腹黒ステータスよりもマシでしょうが!!っていうか、誰がポンコツエルフよ!!」

『鏡持って来ましょうか?というか、誰が腹黒ですって!?』

「あんたよあんた!!」

『なんですって!!』


 ・・・うん、まぁ、すぐに喧嘩を始めるんだがな。

 しかし、母さんの持っていた本にも、喧嘩するほど仲が良い、ってのもあったし、やはり仲が良いのだろう。


 ・・・リーリエに身体があれば、もっと仲良くなれるだろうがな。


 何か、いい方法が無いだろうか。


「ちょっとシノブ!!あんたはどっちだと思う!?私ポンコツじゃないよね!?」

『忍様!はっきりと言ってあげて下さい!ポンコツエルフだと!そして私は腹黒じゃないって!』


 いかん、巻き込まれた!

 こうなると、大変なんだよな・・・

 しかし、黙っているといつまでも続く。

 仕方がない、俺の思っている事を言おう。


「お、おい、二人共その辺りにしておきなさい。レイリーはポンコツじゃなくて有能で綺麗だし、からっとした性格で好ましいよ。リーリエも腹黒じゃなくて、俺をきちんと補佐してくれて、色々と厳しく叱ってくれてとても優しいと思っているよ。いつもありがとうな二人共。」


 俺がそう言った瞬間、二人はピタリと止まる。

 む?何か変な事を言っただろうか。

 そして、俺から少し離れてリーリエとレイリーはこそこそ話始めた。

 小声で何言ってるのか聞こえん。

 悪口だろうか。


「・・・ちょっとリーリエ!シノブのあれは天然なの!?」

『はい、まったく忍様ったら・・・あんな所があるだなんて知りませんでした。私だけに言ってくれたら良かったのに・・・先が思いやられますね。んもうっ!!』

「ちょっと、願望が漏れてる漏れてる!・・・それにしてもやっぱりあんた人間臭いわね。本当は中の人がいるんじゃないの?」

『っ!!い、いえ、そんな事はありません。それよりもレイリー?勘違いしてはいけませんよ?別に忍様はあなたを口説いているわけでは無いのですからね?良いですね?』

「え〜・・・でもさぁ?シノブいい男じゃない?ニンゲンだけど不思議な位優しいし、強いし、なんでも出来るじゃない。私もう結構きてるんだけど。」

『!?や、ヤバいですね・・・早く忍様に頑張っていただかないと・・・このままじゃ私だけ・・・』

「ヤバい?ヤバいって何?どういう意味?」

『不味いとか凄いとか言う意味です!それよりもレイリー?気をしっかりと持つのですよ?そんな簡単に好きになるとチョロいと思われますからね!』

「ちょろ・・・?」


 

 ・・・う〜ん何やら言い合っているけど、喧嘩をしている感じはしないし、良いか。

 

 そんなこんなで過ごしていたのだが、トラブルが起きたのはその翌日だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る