第10話 この世界で生き抜く為に
「・・・ぐっ・・・つぅ・・・ここは・・・」
目を開けると、そこは見慣れた天井。
体中に痛みがあり、記憶もはっきりしていない。
なんで俺はこんな状態に?
『忍様、お目覚めになられましたか?お加減はいかがでしょうか?』
そんな声で意識がしっかりと定まっていく。
「リーリエ、か。俺は・・・そうだ、魔熊と戦って・・・最後倒した・・・よな?」
『はい、忍様は魔熊を討伐されました。現在の状態は、称号【切り開く者】の効果で、限界以上に筋肉などを酷使した事による反動です。』
「なるほど。」
そんなにうまい話は無いわな。
あの時、凄まじい力が湧き上がって来た。
それでもギリギリではあったが・・・倒せて良かった。
「何日眠っていた?」
『まる一昼夜です。すぐに水分や栄養を摂取するのを推奨します。』
「そうだな・・・ぐぅっ・・・痛ってぇ・・・」
痛む身体を動かし、アイテムボックスから水筒と干し肉を取り出し、口に入れる。
・・・旨い。
よほど喉が乾いて、腹が減っていたらしい。
ある程度飲み食いして、痛む身体を押して用を足しに行き、
『さて・・・よろしいですか?』
「ん?何がだ・・・って、リーリエ?」
ん?
何かリーリエの様子が・・・
『忍様、あれほど、あれほど!私は撤退を進言致しましたよね?それに、忍様も作戦行動前に、突発的なトラブルがあった際は撤退すると仰っていました。違いますか?』
「あ、はい。言いました。」
淡々と、それでいて怒りの感情が伝わってくる。
正直怖い。
俺のすてーたすさんなんだよな?
疑似人格なんだよな?
なんでこんなに怖い?
まるで生きている女性のようだ。
『忍様はおそらく、あの魔熊を討伐しなければ、今後の生活に支障が出るとお考えになったのでしょう。ですが!で〜す〜が!そんな事がありえない事も知っておられましたよね!』
「いや、それは・・・その・・・」
『ね!?』
「・・・はい、知ってました。」
そう、実は無理して戦う必要は無かった。
この家には結界というのが張ってあるとの事。
ここにいる限りは安全な筈だ。
もし奴が来ても、いなくなるまで待てば良い。
正直、どうとでもなる。
『なのに、命をかけてどうするのですか!ええ、ええ、知っていますとも!忍様も男!引くに退けない所もあるのでしょう!しかしそれで泣くのは女です!わかっていますか!?』
「・・・すみません。」
なんでだ?
完全に頭があがらん。
思わず正座してしまった。
というか、やはりリーリエは女で良いのかこの言い方だと。
『聞いていますか!?』
「聞いてます!」
あ〜・・・無理!
お袋に怒られてる時の親父はこんな感じだったのだろうか・・・
抵抗できん・・・どおりであのクソ強い親父があんな風に縮こまってたわけだ。
身を持って知ったわ。
『そもそもですね?忍様は・・・』
その後も延々とリーリエの説教を聞く羽目になったのは言うまでも無い。
・・・正座辛い。
これ、いつ終わるんだ・・・?
俺、まだ体痛いんだが・・・
『忍様!』
「あ、はい!すみません!」
我慢しよう・・・
結局、リーリエのお説教は一時間程続くのだった。
「スキルの獲得?」
説教が終わり、また床に入ると、怒りが治まったリーリエがいつもの声色でそう切り出した。
『はい。討伐直後、スキルの獲得音が何度か鳴っていましたよね?』
ああ、あの音か。
確かに鳴っていたな。
気が高ぶっていたので気にならなかったが。
『魔熊はかなりの強敵でした。正直、今の忍様では、正面からでは100回戦って1回勝てるかどうかだったでしょう。』
まぁ、確かに強かったな。
『ですので、限界まで身体を酷使し、その上で勝利を治めましたから、獲得経験値がとてつもない事になっていたのです。称号の効果もありますしね。』
なるほどなぁ。
『今回、忍様は基礎能力の向上の他に、スキルを入手しております。その内容は【体術】弱【剣術】弱【気功術】それと【気闘術】です。』
「ほう?」
『詳細をご説明致しますと、【体術】弱は文字通り武器を持たずに戦闘した場合の攻撃、防御等に補正効果があり、能力が向上します。現在は弱ですので、さらなる向上が可能です。【剣術】はそれの剣バージョンだと思って下さい。』
ふむふむ。
『【気功術】は、気と呼ばれる体内の生命エネルギーのコントロールが可能になり、傷の修復、身体能力の向上など、使用方法は多岐に渡ります。』
なるほどな。
確かに、なんとなく集中すると、身体に流れる力がわかる気がする。
『そして、【気闘術】はその気を攻撃に上乗せして出すものです。魔熊に止めをさした攻撃、覚えていらっしゃいますか?』
「ああ、覚えている。」
右手刀だな。
確かに、あの時威力が上がっていた気がする。
『あの攻撃時、忍様の手刀は光り輝いていました。極度の集中で、極限まで力を溜めた結果、【気闘術】が期せずして発動したのでしょう。その結果、スキルの習得に繋がりました。』
・・・あれ、幻覚じゃなかったのか。
『これは、大きな武器を手に入れたと言っても過言ではありません。使いこなせたら、魔熊など敵では無くなるでしょう。』
ほう、そこまで言い切るか。
これは鍛錬せねばな。
『最後に、称号も獲得しておられます。今回、忍様が獲得された称号は【
「そりゃ凄い!良い称号を貰ったな!狩って正解だった!」
良いじゃないか!
こりゃ今後もこの世界を生き抜くために、ある程度無理はしなければならんな。
今回、無理した甲斐があったと・・・ん?
『・・・』
「リーリ・・・エ・・・さん?」
なんで押し黙って・・・
『・・・忍様?聞いていましたか?自分の力をかなり越える敵ですよ?まだわかっておられないのですか?・・・これはもう一度一から説明した方がよろしいですね。』
あ、まずい!
「リーリエ、・・・それはちゃんと分かってるから・・・その、すきるっての試して来ても・・・良いか?」
なんとか逃げようと発した言葉
『忍様!今は絶対安静です!何を考えているのですか!!』
それがリーリエの逆鱗に触れてしまったようだ。
『良いですか忍様!そもそもですね!・・・』
・・・あああ、やっちまった。
だが、もう逃げられない。
そもそも、すてーたすは俺にくっついているようなものなので、逃げようが無いのだ。
まずった・・・
『聞いていますか忍様!!』
俺はリーリエの説教をまた聞く羽目になったのだった。
現在のステータス
氏名 九十九 忍(ツクモ シノブ)
種族 人間
性別 男
年齢 18歳
状態 怪我 衰弱
スキル 言語理解 状態異常耐性 頑強 アイテムボックス 加工 気配察知【弱】気配遮断【弱】体術【弱】NEW 剣術【弱】NEW 気功術NEW 気闘術NEW
称号 転生者 祝福を受けし者 切り開く者 ****
******************
これで第一章の本編は終わりです。
いかがでしたでしょうか?
この後は、閑話を数話挟んで第二章です。
いよいよ、ヒロイン達が現れはじめます。
ご期待下さい。
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