(本編完結済み)孤独な前世と異世界転生による第2の人生〜賑やかと騒がしいの違いがわからん〜

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第1章 始まり

プロローグ 終焉と始まり


「・・・ここまで、か。」


 布団の上で、一人の男が天井を見上げている。

 老齢の男は、もはや手も足も動かない。

 動くのは口だけだ。


「思えば、寂しい人生じゃった。」


 ポツリとそう男は零す。

 そしてそれまでの人生を男は思い返した。

 

 ここは、山の奥深く。

 周囲には民家どころか、人っ子一人いない。


「親父とお袋が死んで、たった一人で生き抜いた。もう、良いじゃろ。」


 男に子孫は居ない。

 彼は、両親が亡くなってから、たった一人で暮らしていたのだ。


「百合さんは幸せに生きたじゃろうか・・・」


 そんな彼にも想い人が居た。

 

 山を降った村に住む美しい女性だった。

 以前は月に一度、その村に行き、自分が採った山菜や仕留めた獲物と日用品や山で手に入りにくい物を交換をして、雑貨や衣服も手に入れていた。

 彼女の両親はそんな村で商売をしており、村住まいにそぐわないほど美しかった。

 彼はそんな彼女と話す事を唯一の楽しみとしていたのだ。

 

 彼女と会う度に、様々な事を話し、いつしか好意を持つようになった。


 しかし、ある時、事情があり村に行けなくなった為、その親交は断たれてしまった。

 それ以降、彼は彼女に会っていない。

 いや、会えなくなってしまったのだ。


「百合さん、儂は今でもあんたを愛しとる・・・この想いを抱えたまま逝くのを許して欲しい・・・まぁ、結婚して幸せに暮らしているだろうあんたには迷惑かもしれんがの・・・」


 まぶたを閉じれば、いつでも彼の想い人の笑顔が浮かんでくる。

 彼は寂しさをそうやって和らげ今まで生きてきたのだった。


 しかし、そんな男の思考が段々と薄くなっていく。


 そして目を開けた。

 時が近いのだ。

 彼は自分の死期を悟っていた。


 もう、限界なのだ。


「神様、願わくば、百合さんが幸せのまま過ごせるようにしてやってくれい。後・・・儂が死んだら、この家にあるもんは山に返してやってくれ・・・」


 目が霞んでくる。

 口ももう開かなくなってきた。


 意識が段々と消えていく。


 嗚呼・・・これが死か・・・

 儂は十分生きた・・・


 悔いは・・・無くもない。


 百合さん・・・あんたは幸せに、な・・・

 それが見届けられない事だけが、悔い、だなぁ・・・


 まぶたが落ちる。

 光が溢れる。


 どうやらお迎えのようだ。


 男の思考は無くなり、心臓はその鼓動を止めた。

 

 男は真っ暗な世界に歩き出す。


 だが、そんな時、突然後ろから光が差した。


 光は段々と強くなっていく。

 

 男は、眩しすぎて思わず目を閉じる。


 そして・・・









『目覚めなさい。』








 女性の声が聞こえた。


 男はゆっくりと目を開けた。














「お〜い!肉狩って来たぜ〜!」

「こっちも山菜を採って来ました。」

「それでは呼んで来ますね?」

「こっちは準備しとく〜。」

「お腹ペコペコだよぉ」


 姦しい声が聞こえてくる。

 ここは世界の果てと呼ばれる場所だ。


 一人の女性が俺を呼びに来た。


「ご飯の準備にしましょう?」


 にっこり微笑んで俺にそう問いかける女性。

 最愛の女性。

 

「ああ、そうしよう。」


 俺もにっこりと微笑み返す。


 俺は手を止め、呼びに来た女性の後について行く。


 どうしてこうなったのか、俺はそれを思い出す。

 そう、あれは・・・俺が死んでからの事だった。


*****************

という事で新作です。

お楽しみ頂けたら幸いです。

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