転職魔王

@dolto

第1話 感謝と迫害

「ありがとう勇者様」

「貴方は命の恩人です。なんとお礼したら良いか…」

「有難う…本当に有難う…」

「この村を救ってくれて有難う」

巻き起こる歓声、感謝の嵐。

勇者の周りを囲う民衆の中から1人の男が出てきた

「有難う勇者サマ。あんたは俺の、いや、この村全体の恩人だ。」

そう言い、更にこう続けた。

「けどさ、俺思っちまうんだよ。あんた等がもっと早く来てくれれば俺の目の前で妹が死ぬことは無かったんじゃないかってさ。」

「けど、あんた等だけで魔物の襲撃を全て抑えられる訳じゃないのも分かってるし、何より守る力が無かった俺の責任が1番大きいのも分かってる」

最後に悔しさと悲しさ、そして怒りを孕んだ顔で勇者に向かい言った。

「でも、そう簡単に割り切れないんだわ。俺、自分とあんた等の事許せない。」

民衆が男を囲う、そして殴る、蹴る、罵倒する。

勇者は何も言わずに去って行く。

何故なら彼には時間が無い。出来るだけ全ての人を魔物の脅威から守る。その使命を守るために。




約1000年前、魔物は人間に迫害された。

ゴブリン、オーク、スパイダー、オーガ。見た目が醜悪、人間を襲う危険性が有りどの森からも追いやられ東の最果ての砂漠まで追いやられた。

魔物は何も食べず生きている訳では無い。

体に見合う食事と水分が必要である。

しかし東の砂漠は砂嵐が吹き荒れ、木は枯れ、水も地下にある微量の地下水しかない。

そんな過酷な環境に魔物たちは長年置かれ続けた。

しかしそんな過酷な環境が進化を促した。

ゴブリンは凶暴、そして屈強に。

オークはさらに頑丈に。

スパイダーには爪と大きな牙が生え。

オーガは集団行動を取り始め、知性が芽生えた。

そんな者の中で群を抜いて屈強な者、それが魔王である。

魔物を統率し、少ない物資で魔物の国を興し、物資潤沢な王国を軍で襲うようになった。

今まで受けた迫害と差別と暴力への憎悪を募らせた魔物達は人間の王の住む王都ルゥトへ本格的な進軍を開始した。


これが人魔大戦である。



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