思いつき。ドラグノンと、幼馴染は転生者、お兄様も転生者
@mAcchang
第1話 ドラグノン1
死んだ理由は事故。友人宅のアパートで宅飲みを楽しみ、そのまま泊まった翌朝の事。家主や他の友人達は迎え酒だと近くのコンビニへ向かい、自分は一人で二度寝をしていた。そんな最中、階下では火災が発生。気が付いた頃には玄関側は炎に包まれていた。間取りから玄関横の洗濯機かガスコンロからの出火だろう。真上の同じ間取りの部屋な為に逃げ道は塞がれベランダに逃げるしか無かった。
だがベランダは直ぐに階下から吹き上がる黒煙に包まれ、僕もその煙に包まれだ。そして二日酔いの頭痛を抱えて他の痛みや不快感を感じぬまま意識を手放した。
炎に焼かれたの出なく一酸化炭素中毒だったのだろう。
「それで、この状態は何なんだ?俺は死んだのか?それとも生き居るが植物状態とかそんな感じなのか。」
“いいや死んでるよ、火災の不燃ガスを大量に吸い込み急性一酸化炭素中毒でね。”
「そうか、だれだが知らないがありがとう。」
“どういたしまして。それでこれからどうなりたい?”
「そうだなぁ。よくわからないが火事でも生き残れる様にはなりたいな。火や毒ガスに強くて、高所から飛び降りても無事な体なら、生き残れると思う。
“ほかには?”
「酒を旨いと感じられるなら俺はやっていけるさ。」
“火に強くて毒にも強い。免疫力や耐性があるって事でよいかな。空が飛べて酒が好きと。人に拘らないっと。”
「酒好きな生き物というと、昔話の大蛇とかだよな。でも頭が8つもあるのはどうなんだろう。自己同一性とか。」
“君の記憶にあるのだと、その類は雑魚として出てくる下級な奴にしかなれないよ。己の器を知りなさいな。”
「千年立たないと強くならない様な?」
“そもそも翼竜みたいに手が翼になってる奴。それの小型種で。そんな将来性は無いなあ。でも味覚はしっかりしてるし、酒も飲めるよ。”
「酔える?」
“バッチリ!しかも分解能力高いから酔い潰れて眠っても気持ち悪くならずに二日酔いもならないよ。”
「何その究極生命体。石仮面と赤石あればなれる?」
“お願い聞いてくれるならしてあげるよ。多少の特典付きでね。”
「あ、そういうのならいいてす他あたって。所でやっぱり俺死んだの?夢じゃなくて。」
“ここまで来て急に冷静になるのやめない?死んでるよこれから消えるか転生するかの場面だよ。凄い超能力は無いけど。”
「無いのか。なら少し話を聞こう。」
“その歳でどんな世知辛い世界なんだよ。君のところの管理者仕事してるの?健全な若者が健全な上昇志向を持ってないのだけど。この前の人は上昇志向はあっても他人を害してまで上に行こうとする、価値のない魂だったし。”
「いや、俺なんか恵まれてる方だぜ。友達と休みに死ぬまで楽しく酒盛りしてたわけだし。前がいたのは驚きだ。」
“そんなの、こっちの世界では日常的茶飯事だよ。前のやつはまだ存命で悪さしてるから懲らしめて欲しいかな。特典は取り上げたけど育っちゃって現地の人には難しくて。”
「それが目的か?」
“半分正解かな。現地でちょっと良くない思想が拡がってね。このままだと人類滅亡どころが全生命が滅んでしまうかもしれなかったから、止む無く異なる思想で影響力のある存在が欲しくて。でも1から育てると時間がかかるから記憶残して転生させて手間を省こうかと。”
「楽をしようとするからだ」
“でも最悪の事態は回避してくれたし、放っておいても自滅するか寿命で死ぬから。精々その思想が残った史跡を破壊するか、調子に乗ってる前のやつに嫌がらせしてくれたら、見ているこちらも楽しいかな。”
やることの小せえやつだな。多分神とかのたぐいなんだろうけど小物だろうな
“失礼なこと考えて無いでさ
「まぁいいや、強大な敵を倒せとかないみたいだし」
“その分ハーレムや酒池肉林も遠いけどね。”
「そこは頑張るさ。酒はある世界なんだろ?」
“勿論さ現地生まれの酒好き達が魔法も使って君の世界より旨い酒だってつくってるよ。”
その言葉にのせられて、俺は転生した。記憶もそのままに。声の主が何者で目的が何なのかを気にする事もなく。
気が付くと白い場所に居た。暖かい液体に包まれて。入浴しながら眠ったり時の事を思い出す。湯船のお湯は冷めているが体の周りだけ体温で暖かい層が出来ていて、動かなければ暖かい。動いたところは冷めた水と混ざって冷たくなるあの感じだ。白い光は障子から光が射し込むのに似た光。少し赤が混じる。何となくだが、自分が卵の中に居るのだと理解する。
本当に生まれ変わったのだ。まだ夢かもしれない。曖昧な感覚のまま障子を破るように卵の殻を破る。生まれた計りなのにもう目が開けられて周囲を見れるのか。世界の見え方が記憶にあるものと違う。匂いも複雑だし空気に味がある気がする。人間では無いのだと生まれて早々に実感する。この先、やっていけるのか不安になった。
実際に生きてみると、この世界楽勝である。というか、野生動物フィジカル強すぎ。本能で体の動かし方はわかるし、鍛えなくてもどんどん成長に伴い筋肉が発達していく。感覚も鋭い。そこに前世の知能が加わるわけだ。しかも前世の物理法則やら色々だ。狩りで単純な物でも作戦を立てられるというのはやはり効率が違う。
それだけではない。通常の個体なら自然に体が鍛えられていく。それでも強いのだが加えてさらなる鍛錬を自主的に行う。人間と同じ筋トレというわけには行かないが、それでも意識的に力んでみたり、思いつく限り試していた。気が付けば、同じ時期に生まれた兄弟達より体が一回り大きく成長した。
どうやらこの生まれ変わった生き物は群れで生活する様だ。姿についてはカミツキガメ等を彷彿とさせる頭。大きく発達した前足。前腕だろうか。ゴリラの様にナックルウォークをする。そして短い後ろ足。しかし太い指と強力な鉤爪が付いている。手は人のものに近く、同じ感覚で器用に動かせる。そして何よりの特徴は手首から胴体にかけて付いている皮膜だ。これによりムササビの様に滑空する事が出来る。
素の身体的特徴と能力は概ねそんな所だ。
まぁ、当然これだけでは無い。ご期待通り、この世界には魔法がある。魔法の源、燃料の様なものが辺に漂っているのを感じるし、自分の中でも生み出されるのを感じる。そして体内のそれを操作し皮膜に集めると体が浮かび上がる。
いやはや、それからは夢中になって飛び回った。親や群れの大人達の見様見真似から初めて瞬く間に空を自由に駆け回れる様になった。そして意識して使う事で生み出されるの魔力も増えていった。
そんな中で狩りの仕方も学び、季節が一巡した。大まかに数えたが地球と同じくらいの期間で季節は巡る様だ。ただ自分のいる地域は冬は短く、雪が降るほど寒くはならない様だ。遠くに見える大きな山脈に雪が積もるのを見ながら季節を冬を感じていた。
そして一年が過ぎたころ、身体は殆ど大人と同じように出来上がった。そして他の大人達が繁殖期に入ったのかソワソワし始めた頃、昨年生まれた子供たちは脱皮を始めた。これも本能的な感覚だがこの脱皮をきっかけに生殖機能も働きだして、大人の体になるのだ。
この時を体に違和感を感じた。兄弟達の脱皮は古い皮を脱ぐだけなのに対して、自分はもっとぶ厚い、内蔵から何から一新されて脱ぎ捨てる感覚だ。この時、自分は生まれた種族の上位種へと進化したのだった。
それにより能力は他の個体より高かった物が更に飛躍的に向上した。
群れで一番の強さと狩りの上手さを持つわけだ。
そうなると当然ながら雌からの人気も上がる。同年に生まれた雌に求愛すると誰も断らない。基本的に一夫一妻の習性の様で、既に相手がいる雌は見向きもしないがフリー相手は応えてくれる。
他の雄のアプローチを拒否した直後の雌に自分がアプローチすると直ぐに応じてくれたり。
人間の時の感覚は薄れて来たのか、普通に繁殖は出来た。ハーレムも作れそうだったが、本来の習性に従い一体の雌に決めた。
相手はこちらのアプローチに応じた中で一番愛嬌がよく、積極的に擦り寄ってきて、甘え上手だった個体だ。まだ性的に未発達の頃からじゃれ合って遊んでいた、人間なら幼馴染と言えそうな個体だ。脱皮して性的に発達してからはじゃれ合いはしなかったものの、後をついてくるなど好意的な個体であった。アプローチしてからは、狩りで群れのコロニーから離れた時以外は常に寄り添う様になった。
そして無事に卵も生まれた。孵った子どもは進化前の種族の様だ。ただ自分の様に進化する子どもは居なかった。
それから何年経ったろうか。人てあった事を忘れたかのように幸せに時間を過ごした。
その頃には何となくわかっていた。この下級飛竜ともいえる種族の寿命は前世の大型犬程度だ。
飼育環境にあるゴールデンレトリバーが十年から数年。野生化では更に短い。特に雌は産卵の負担で更に短い。雄は雌より狩りに出る頻度が多くそれによる死亡率が高い。
何度目かの産卵の後、体調が回復しないまま僕に寄り添いながら冷たくなった伴侶を見送り彼女の最後の卵をしっかり守り子ども達が大きくなった頃、孤独感を感じた。
寂しさと幸せを噛み締める。
もう新たな雌と番になる気もない。この生を謳歌して幸せな時間を過ごした。後はこの進化した上位種の能力で子どもたちもいるこの群れを守っていこう。
“いやいや、なんでそうなるのよ。こちらが驚くほど環境に順応しやがって、野生種として違和感なく生きやがって見つけるのに苦労したぞ。”
聞き覚えのある声だ。こちとら進化してるし目立つと思うが?
“数十年に一度位で自然に進化する個体もいるんだよ。こっちが何億年生態見てると思ってんだ。前世の記憶ありながら野生種と全く同じ動きしやがって。酒飲みに行くんじゃなかったのかよ。何するか楽しみにしてたのに単なるドラグノンの生態観察じゃねーかよ。”
まぁ、この声の主には感謝はしている。お陰で素敵な伴侶を得て子宝にも恵まれた。前世の半分も生きてないけど、幸せな時間だったよ。ありがとう。こうして俺の短くも幸せな第2の物語は静かに幕を下ろした。
“いや降ろさせないからな。てかお前は上位種になってるからまだ寿命は先だぞ?五十年程度は野生種でも生きるからな。”
え、なにそれ知らなかった。まだ先は長いな。
“残りの時間をこの山奥に篭もって過ごすつもりかよ。”
声の主が言う通り、この場所は山脈に囲まれた高原地帯だ。並の人間には踏破困難な道の先に広がる樹海である。ここの生態系の頂点は地上では大きな熊とサルとあいだの様な魔獣がおり、空の頂点は俺が転生したドラグノンと呼ばれる飛龍の亜種である。上位種であり群れで最強でもある自分がここら一体の空の支配者だ。
時折やってくる大型の鳥の魔獣や猛禽の上半身と馬の下半身をもつヒポグリフと呼ぼれる魔獣と空中戦を行い倒したこともある。上位種で無い群れの仲間は群れでも一方的に蹴散らそれる相手だったが、上位種である自分なら単身でも太刀打ち出来た。
“なぁ、頼むよ本当に。以前転生した奴が最近また変な事のしててやな感じ何だよ。俺に隠れて何かしら企んでるんだよ、神の目を避けて行動出来てるしさ。ちょっと様子見てくるだけで良いからさあ。”
自分で転生させておいて手に負えなくなったら他の転生者を作って良いように使おうとするとは。こういう所に嫌気がさして前の転生者はこの声の主が困ることをしているのでは無かろうか。
だがまぁ、良い思いもさせてもらったので少しくらいは恩返しと思い、働いてやるのも吝かでない。
“そうしてくれると助かるよ。君が動きやすいようにマップ機能を解禁するね、行って場所が地図として記録されるよ。色々多機能だからと役立つ筈だよ。
それからインベントリ機能も解禁だね。収納空間を操れるよ。重量と容積に制限はあるけど、入れた物は時間が止まるし、使いこなせば任意の収納品を時間を進ませて発酵や熟成させられるよ。それじゃあ地図に大まかな目的地をマークしておくから、後は頼んだよ。”
いうだけ言って声は聞こえなくなった。地図機能だ収納空間だのゲームじみてきたな。寧ろ声の主からはゲームの実況者の配信を見てる感覚なのか?それで気に入らない配信者に自分の言う事を聞くプレイヤーを使って嫌がらせをすると。性格悪そうだな。機能としては非常に便利なので貰った事自体は悪くないが。
それから数日、精力的に狩りをして獲物を収納した。容積による制限で入り切らなくなる迄詰めたら、大型トラックのコンテナ分くらいは入った。あと、貴重品という制限のない空間があるが、そこには伴侶だった個体牙しか入らなかった。しかも形見の牙という名前で表示される。これ多分なにか別のとこで使われた機能の流用だと思う。
声の主は何者なのか、そもそもこの世界がどういうものか。わからないけど生きては行ける。
食料が備蓄できたので取り敢えず示される方へ飛び立ってみる。第2の故郷から旅立ちの時だ。朝の白い光の中に山並みは萌て遥かな空の果てまでは大袈裟だが一応心は震えたかな。
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