第34話 生徒会長の暗躍
「ああ、そうだ。君たちはこの時間になったらここへ集合して、それから鍵閉めとかをやってくれればいい」
この声は……生徒会長?
放送室の前に到着し、扉に耳をくっつけながら、中から聞こえる声へ耳を澄ませる俺。
いるとするならば、件の男子三人くらいのものか、と思ってたけど(箱奈さんは別件があってまだここへ来れない)、その男子たち+生徒会長の声が聞こえてきて、俺は一人で困惑していた。
なんでだ……? 生徒会長がこのタイミングで放送委員に干渉する必要がどこにある……? あの人は、これから色々司会として総会を進めないといけないはずなのに……。
「わかってるね? 撮影の方も、必ずしておいてくれ。それが君たちに任された仕事でもあるんだから」
一際大きく聞こえる生徒会長の声と、笑う男子三人の声。
何を言ってる? 撮影とか今言ってなかったか? え……? 撮影?
嫌な予感がする。
額に脂汗がにじみ、鼓動が早くなった。
まさか、放送委員の残り一人って――
「よし。では、俺は会に戻るからね。言ったこと、しっかりやっておくように」
「うーい。了解でーす」「きっちりやっときますーす」「報酬楽しみにしときますよー」
「バカ。何が報酬だ。君らはこの放送委員会へ抜擢された時点で、既に報酬を受け取ってるも同然だろうに」
ま、マズい!
声が段々と扉の方へ近付いてきて、開けられる気配がした。
どこか……! どこかへ隠れないと!
とっさに隣の教室へ逃げ込むことを思いつき、俺は猛ダッシュで移動した。
隣はちょうど物置とも呼べる空き教室だ。文化祭で使うものや、その他イベント時に使うであろうアイテムが多数置かれていた。
そんな空き教室に入り込んだタイミングで、思った通り放送室の扉がガラッと開けられた音がした。
あ、危ない……! あと少しだけタイミングが遅れてたら、俺は連中にバレてた。
バクバクと早くなった鼓動を落ち着かせるため、胸に手を当てながら、深呼吸を繰り返した。
どことなくカビ臭かったが、そんなこと今はどうでもいい。
とにかく、いったんはここで待機だ。
そうやって少しの間休憩してると、校内にチャイムの音が鳴り響いた。
これで総会が再開されたことになる。
今頃、もしかするとクラス委員の誰かが、俺がいないことに気が付いて、軽く騒いでるかもしれない。
まあ、いつも影薄いし、その心配もされてない可能性だって全然あるわけだけどな。
今回ばかりは後者だとかえって好都合だ。
とにかく、奴ら三人と生徒会長。この二者の関係性について知ることが急務だ。
ほんと、なんで生徒会長が放送委員と絡んでる? 訳が分からない。
「……にしても、どうやってこいつらの関係性について情報を得るんだ。もうそろそろ、欅宮さんもここに来る頃だぞ……」
頭を回して考えてみるも、良さげな案は何一つ浮かんでこない。
真っ先に浮かんだのが、直接放送室に殴り込んで、どういうことなのか聞くってことだが、これはさすがにパワープレイが過ぎる。
いざとなった時は三対一だし、圧倒的に俺が不利だ。
なら、情報入手とまではいかずとも、生徒会長が怪しいと踏んだうえで、行動するならばどうだろう。
やって来る箱奈さんを、放送室へ入る前にいったんここに呼び寄せて、一緒に入室するってのは、俺が事前に考えてた作戦だが、それだと生徒会長の目的が最後まで分からずずじまいのままになる可能性が高い。
もう、彼の目的がわからないのなら、わからないままでいいのかもしれない。
そう思うものの、さっき聞こえてきた会話は、明らかに怪しいものだった。
生徒会長がもしも欅宮さんに手を出そうとしてたなら、問答無用に彼も教師陣へ突き出す必要がある。
一人だけ逃がすとか、そんなことは絶対にしたくないんだ。
――と、そんなことを考えてると、静かな廊下を歩く足音が聞こえてくる。
もしかして、欅宮さん来たか……?
俺はチラッと廊下の様子を見る。
そこには――
「……あ」
欅宮さんの歩いてくる姿があった。
すぐさま、俺は廊下へ出て、大きく手招き。
こっちへ来るよう誘導して見せた。
「え……? 宇井くん……!?」
「しーっ……! とにかく、まずはこっちへ来て……!」
たぶん、声は聞こえてないだろう。
抑えめの声で言って、口だけは大きく開いて口パクを試みる。
すると、欅宮さんは不思議そうに俺の方へ歩み寄って来てくれた。
よし……! まずは第一段階成功だ……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます