ペットショップを異世界にて~スローライフを望むペットショップ店長は、実は最強の冒険者〜

すかいふぁーむ

プロローグ1

 ペット屋の朝は早い。


 朝日とともに目覚める黒い鳥。漆黒の羽根に覆われた身体の中、青白い眼だけが輝きを放つ。

 かっこ良さげに言ってみたものの、端的に特徴を説明するなら、黒いニワトリだ。


 こいつをはじめとして、陽の光と共に活動を始めるような魔獣は多く、店内はこんな時間でもいつも通り賑やかだ。


「よお、今日も早いな」

「コケ」


 言葉が通じているかはわからないが、何となく返事が返ってきてるようで可愛い。

 水と餌を交換、ついでに卵も確認するが、今日も産んでいない。


「ニワトリみたいな格好してるくせに、一向に産む気配がないなぁ?」

「コケ?」


 首を傾げながら話しかけると、黒いニワトリも同じように首を傾げる。愛くるしいその仕草に応えるように一撫ですると、目を細め気持ちよさそうにして応えてくれた。


「悪いけど、お前ばかりに構ってるわけにいかないからな」


 広くはない店内に、所狭しと並べられた生き物たち。この全てを朝のうちにメンテする。餌は種類や日によって変わるが、掃除や水換えは朝のうちに全て済ませたほうが楽だ。


「爬虫類を増やしたのは良かったな。圧倒的に哺乳類より世話が楽だ……」


 この世界にペットの問屋はいない。ともすれば自分がそのような立場になりそうな感じすらある。

 ブリーダーは各種、趣味の延長程度で増やしてる人がいるので、そういった人たちから買い取って店頭に並べることもあるが、基本的には、ワイルド個体を"テイム"したものが商品になる。どうせ仕入れるために野生動物や魔物のすみかへ行くことになるので、冒険者としても活動しながら店を営んでいた。

 正直、収入のメインは後者に傾いているのが複雑なところだ。


「さて、外のやつらも見に行かないとな」


 動物たちがいるのは店の中だけではない。この世界のペットの需要は、愛玩よりも“パートナー”としての性質を求められるので、店の外にいるやつらの方がメインとも言える。

 “パートナー”とはつまり、共に戦える相方である。直接魔物と戦うものもいれば、罠探知や飛行能力を利用した冒険の手助けを行うサポートタイプ、手紙を届けさせる使い魔のようなものなど、様々な用途で“パートナー”は活用されている。

 うちでも需要に合わせた様々な用途の魔獣を取り揃えている。この取り揃えはうちの店の数少ない自慢の一つだ。


「ただ、さすがに人に手を出した覚えはない」


 店の前には少女が眠っていた。

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