第3話
午後五時を七分過ぎた頃、アパルトマンのドアがノックされた。キャットは拳銃を片手に警戒しながらドアを開き、そこに立っている男の顔を見て脱力する。
「なんだ、客ってディミトリだったのか」
薄い色のサングラスをかけた長身の男は、キャットにひらひらと手を振ってみせた。
「ようケイトリン。俺は仲介だけどな」
ディミトリ・グレンカは三年前にコロンビアで仕事をしていた時に知り合った同業者で、それ以来お互い手が回らない案件を紹介しあう仲になっていた。逃がし屋として密入国の手助けもするディミトリは、国を問わず幅広く後ろ暗い人脈を持っている。
「これ、お客に繋がるから」
ディミトリは鱗模様のクラッチバッグから型の古いスマートフォンを取り出してアマンダに手渡す。アマンダが仕事場である奥の部屋に、スマートフォンを持ってさっさと引っ込んでしまった。
アマンダの仕事場には、キャットもめったに入らない。地下には拷問部屋があるんだなんて冗談を言っていたけれど多分嘘だ。せいぜい仕事上の機密情報が仕舞ってあるくらいだろう。
キャットとディミトリはすることもなくリビングに取り残されてしまう。
「そのバッグ何の革なんだ」
「クロコダイル」
勧めもしないうちからディミトリはどっかりソファに陣取る。佇まいは小奇麗だがどうも胡散臭い雰囲気が拭えない奴なのはなぜだろう。
「何か飲むか? 水かビールしかないが」
「結構。フランカは元気か?」
「今はアマンダ・メイ・ロジャースだ。エム、エイ、イー、のメイ」
フランカなんていつの名前だと思いながら隣に腰掛けてキャットが訂正すると、ディミトリは苦笑した。
「失礼した、アマンダは元気か?」
「全然。相変わらずタバコは止めないし、最近はキャベツとヨーグルトばっかり食べてる」
「すっかり痩せちまったもんなあ。抱き心地悪いだろう」
「そういうことは気にしないし、抱えて走るのは楽になったけど、健康に良くないと思う」
「愛だねえ」
キャットはここ最近思っていることを素直に言っただけだったが、ディミトリはなぜか深く得心したようにうなずき、閉じた奥の部屋のドアを見やる。
「あいつも難儀なもんだよな、次から次へと人相を変えないと不安で不安で仕方ないんだろう。どれだけ捕まるのが怖いんだか」
「警察やらに捕まるのを怖がってるわけじゃない」
「そうか? 殺し屋の斡旋仲介なんて警察に捕まっても終身刑、カルテル側なら死ぬよりひどい目に遭わされるんだ。ビビって当然だとは思うがね」
「そういう感性があればいいんだが」
アマンダが死んだり捕まったりするのを怖がっていた記憶は無い。キャットより先にそういう目に遭うのなら万々歳だと思っている節すらある。
「そういうケイトリンはどうなんだ」
「私は死ぬのは嫌だな。人間死んだらお終いだろう」
「真っ当だ」
大抵の人間はそうだろう。死んだり殺されたりしても別に構わないという人間だらけなら殺し屋も殺し屋斡旋業も多分成り立たない。
深く頷いてからディミトリはサングラス越しにキャットをじっと見る。
「そんなに真っ当なのに、どうしてこんな仕事してるんだ?」
「うん」
そういえば最近は見ないけど似たサングラスをアマンダも持っていたな、と考えていたので、何を言われたのかキャットはちゃんと聞いていなかった。
「『うん』じゃなくてだな」
「何だって?ちゃんと聞いてなかった」
「なんでこんな仕事してるんだって話」
「ああ、それならアマンダに誘われたから」
誘われたといっても、今日から一緒に働きましょうそうしましょうというきちんとした取り決めがあったわけではなかった。同じ家に住んでべったりと四六時中一緒にいたら当然のように仕事の話を聞いていて、ある日客に「その子は助手。あとカノジョ」と紹介されてそうか助手なのかと気づいたのだ。
尋ねておいて失礼なことにディミトリは明らかに呆れた顔をしていた。
「アマンダの誘いなら何でもやるのか? 八百屋でも?」
「いいじゃないか、八百屋」
アマンダもキャットも野菜は嫌いじゃない。ディミトリはなんだか疲れた顔で笑った。
「愛だねえ、キャット。やっぱりビール貰ってもいいかい?」
けれどキャットが冷蔵庫を見てこようと立ちあがったとたん、狙いすましたように奥の部屋のドアが開く。
ぶすっとした顔のアマンダが顔を出して、ディミトリへとスマートフォンを放った。危うげなくそれを受け取ってディミトリが尋ねる。
「いい話は出来たか?」
「まあね」
その割にはちっとも機嫌がよくなさそうだ。キャットが立ち上がりかけた体をソファに戻すと、アマンダはソファの端の残りのスペースに無理矢理体をねじ込んできた。
いくらアマンダが痩せていても、二人掛けソファだから大の大人が三人も座るには狭すぎる。
しかしアマンダは断固たる態度でソファに収まり、無言で体をキャットにもたせ掛けてくる。ディミトリはとうとうこらえきれないとでも言うように噴き出した。
「妬くなよアマンダ、俺はケイトリンのノロケを聞いててやったんだぞ」
「なんだ、やきもちか」
軽く膝を叩いて「おいで」と手を広げると、アマンダはぶすくれた顔のまま体を捻ってキャットの膝に乗りあがってくる。首筋に当たる、傷んだ細い髪の感触がくすぐったい。
猫にするように顎の下をくすぐってから、もつれた髪を梳くように撫でてあげると、表情はまだふてくされているくせに、とうとうすっかりキャットの胸に体重を預けてしまう。
「ディミトリのサングラスを見て、あなたが似たのを持ってたんじゃないかと思ったんだけど、どうだっけ?」
そんな話だったか、とディミトリがつっこんできたが聞かないことにした。キャットの胸に顔をうずめたまま、視線だけをディミトリの方に向けてからアマンダがぼそぼそ喋りだす。
「あたしのやつは、もっとツルが太いやつだよ」
「ああそういえば……そうだな、そっちの方が似合う」
「あのなあアマンダ、君のけなげなキャットはなかなか熱烈な話をしてたんだよ」
アマンダはうるさそうに首を傾けてディミトリを睨んだ。
「ディミトリ」
わざとらしい降参のポーズでディミトリは応え、軽やかに立ちあがる。
「悪かったよ。もうお暇する」
「なんだ、もう帰るのか。久しぶりだし夕食でも一緒にどうかと思ったのに」
アマンダはするっとキャットの膝から降りて、さっきまでのふてくされ方が嘘みたいに悪い笑顔で言い放つ。
「キャット、ディミトリは忙しいんだ。あたしたちの新居探しに密航ルートの渡りもつけてもらうんだから」
報酬の代わりに逃がし屋の仕事をさせるつもりらしい。賢いと言えば賢いが、ディミトリは露骨に面倒そうな顔をした。
「ついでに車もね。これは至急」
「わかったよ、明日にでも連絡する。残り少ないメキシコの夜を楽しめよ」
ひらひら手を振ってディミトリが去っていくと、アマンダがいきなり振り向いて無言で詰め寄ってくる。
ひょろひょろのアマンダに圧されるような鍛え方はしていないが、その表情の険しさと先ほどまでの態度でなんとなく後ずさると簡単に壁際まで追い詰められてしまう。
「この浮気者」
「浮気なんかしない」
壁の冷たさを感じながら、キャットは首をひねる。同じソファに座っていたのがそんなに気に入らなかったのだろうか。
アマンダのかさついた指先がキャットの喉元をなぞる。
「キャットって呼ぶのはあたしだけだろ?」
なるほど、そこが引っ掛かっていたらしい。ケイトリン・ギアードをキャットと呼ぶのは確かに基本的にはアマンダだけだ。でも別に他の人にそう呼ばせるなと言われた覚えはない。
キャットの生活はアマンダ中心に回っていて、アマンダ以外に名前を呼ばれなくても困らない暮らしをしている。名前は一緒に暮らす人と、一緒に働く人と、愛を交わす人が呼べばいいし、キャットにとってそれは全部アマンダだ。だから普段は呼ばれないだけ。
たかが名前だ、アマンダだってしょっちゅう取り換えている。名前を呼んでそれから何を言うかの方がずっと大事だとキャットは思う。
「あなたが良い名前を付けてくれたから、皆に見せびらかしてるんだよ」
「調子いいんだから」
「どうしても気になるなら、あなたしか呼ばない名前をまた付ければいい。さ、少し早いけど夕食にしよう。買い出しに失敗したから、冷蔵庫に何も無いかもしれないけど」
優しくアマンダを押し返すと、ぐうと喉の奥から変な音を出して引き下がる。
「ソーセージとマカロニぐらいならあるよ」
「それは良かった」
キャットが支度をしてもよかったけれど、無言でアマンダがキッチンに向かったから甘えることにした。
いつどんな材料でも百点満点で六十点ぐらいの料理が作れるのは、アマンダの素晴らしい特技だ。
マカロニとソーセージと、冷蔵庫の底に取り残されていたのか色の悪いアスパラガスをまとめて茹でたものを完食して、キャットは皿を洗う。料理をしなかった方が皿を洗うのはなんとなくルールのようになっていた。
自分で作ったくせにソーセージを全部キャットの皿に投げ込んだアマンダは、「今のうちに全部飲みきっちまおう」と言って、六本あったテカテビールを五本まで開けてしまった。
空になった瓶を蹴り転がし、アマンダがベッドに飛び込む。メキシコ人は瓶のままビールを飲まない。わざわざグラスに注いでも洗い物が増えるだけじゃないかという点で二人の意見は一致していたから、結局この街にとってはよそ者ということになるのだろう。
キャットの故郷はアメリカのニューメキシコにあるけれど、アマンダの故郷がどこなのかは知らない。何度聞いても教えてくれないのだ。どこの言葉も大体流ちょうに話すし、地理にも詳しいから、推測も出来ずにいる。メキシコでないことだけが確かだ。
『どこ生まれだっていいじゃない』とアマンダは言う。それは間違っていないと思う。キャットが勝手に寂しいだけの話だ。
「キャット、皿なんて洗ってないでおいで。どうせこの家と一緒に全部置いていくんだ」
酒が入って機嫌のいいアマンダが、ベッドに寝転んだままマールボロに火をつける。
「アマンダ、タバコ」
「室内まで禁煙じゃないだろう」
「ベッドの上で吸ったら灰が落ちる。私は灰だらけのベッドでは寝ないぞ」
泡だらけの両手を拭って腰に当て、仁王立ちで宣言する。アマンダは笑って体を起こすと、見せつけるみたいに深く煙を吸い込んで吐き出す。憮然としたキャットの顔を、細めたヘーゼルとピンクの目でとっくり眺めてから、やっと灰皿にタバコを押し付けた。
「そう怒らないでって。おいで、おいでってば、生まれたまんまのかわいこちゃんめ」
「はいはい」
ベッドの上で手を伸ばすアマンダの体を抱きしめて、そのままごろりと転がる。キャットの上に乗せられたアマンダは、鎖骨に、首に、それから今日ついた頬の傷にキスを浴びせてくる。
「ああキャット可哀想に、かわいいあんたに傷が残ったらどうしよう」
そういうアマンダの肩口の、タトゥーの痕をなぞってやるとくすぐったそうに身をよじる。アマンダの体には、アマンダになる前の様々な痕跡がある。いつの時のものか思いだせるものもあるし、古すぎてキャットが良く知らないものもきっとある。
恋人の体だ、と思うから、嫌いではない。
「私もタトゥーを入れようかな」
「例えば?」
「あなたの名前とか」
キャットは弾みをつけてアマンダを抱えたまま起き上がる。きゃあ、とふざけたように叫ぶアマンダを優しくベッドに降ろして、勢いよくカットソーと下着を脱ぎ捨てる。何も身に着けていない背中をアマンダにさらして、左の肩を撫でた。
「背中のここから始めて、ひとつずつ順番に。はじめはロランス・ギイ=ブラシェ、真っ黒の髪に青い目をしてた」
初めてふたりが出会ったとき、ケイトリン・ギアードはサンタフェのガソリンスタンドでアルバイトをしていた。
深緑のミニクーパーから顔を出した黒髪の女は、制服姿のケイトリンを頭からつま先までとっくり眺めてから『名前は?』と尋ねた。
『ケイトリン』
『あたしロランス。ケイトリンねえ、キャットなんて呼ばれるのかな』
『いいや、初めて呼ばれたよ』
『気に入った?』
急に問われて返答できなくなっているケイトリンに、ロランスは『キャット』と甘く低めた声で囁きかける。背中をくすぐるようなその響きに、思わず頷いていた。
『じゃあキャット、あたしとデートしようか』
助手席のドアを開いてロランスが笑う。
『ほら乗って、面白いところ連れてってあげる』
『まだシフトが』
ケイトリンがそう首を横に振ると、ロランスはむう、と口をへの字にしてから『真面目な子は好きだよ』と何に負けたわけでもないのに負け惜しみするような口調で呟いた。
『じゃあ待ってていい?』
その表情がなんだかやけに可愛らしくていじらしくて、気が付いたら頷いていた。
二時間待たされたロランスの運転は荒かった。発進も停止も急で、目的地に着いた時には珍しく車酔いしてしまっていたくらいだ。
『魚が好きなの?』
連れてこられたダイナーには、大きな水槽があった。薄暗い照明の中で青や黄色の魚がひらひら泳いでいるのが良く見える席に常連みたいに陣取ったロランスは、後で知ったけれどあの時初めてあの店に入ったらしい。
馴染む気なんかさらさらないくせに、どんな場所でもまるで生まれた時からそこにいるみたいに堂々としているのも、彼女の特技のひとつだ。
『海が好き』
何を食べたのかも何を飲んだのかも思いだせない。青い瞳がちょうど水面みたいにきらきらして見えたことは覚えている。
それからあのダイナーには三回一緒に行ったけれど、唯一記憶に残っているメニューは最後になった三度目に食べたロランスお気に入りのアボカドとチキンのサラダだ。『これで食べ納めだね』とロランスが言っていたから。
ロランスはいろんな土地のいろんな話をしてくれた。コスタリカのバーで飲んでいたら二軒隣のレストランに手榴弾が投げ込まれた話、パスポートと二百ユーロだけ持ってマドリードに行く羽目になった話、どこのビーチに行っても『ここが世界一綺麗だ』と思ってしまう話。
ロランスはどこかから来て、どこかへと去っていく人なのだ。きっと次の街で会う人に、ガソリンスタンドで出会った女の子の話をするかもしれない。
どうせならその姿を隣で見ていたいと思った。海みたいな水槽があるダイナーでデートした話を誰かにするなら、隣に陣取ってそれが私なんだぞという顔をしていたいと思ってしまった。
一歩店の外に出ると生ぬるい空気がまとわりついて、緊張で喉が渇いた。
『ずっと言おうと思ってたけど、ロランスは運転が下手だ』
運転席のドアを開けたロランスにそう言うと、ロランスはそう言われるのを知ってたみたいに笑った。
『じゃあ次からは、キャットがあたしの代わりに運転してよ』
『うん、それがいい』
ハンドルを握ってから気づいたけれど、運転が荒くなるのは車のせいだった。中古のを激安で買い叩いたせいで整備が悪かったこと、それからレストランに手榴弾を投げ込まれたのは他でもないロランスを狙ってのことだったと知ったのは次の日だったが、もうサンタフェを離れていてしまったし些細なことだ。
「ロランスの次はKから始まる方のコニー、コニー・ガードナー。あなたが名前を変えるなんて知らなかったからびっくりしたよ」
初めて「改名するよ」と言われたとき、キャットは「私もした方が良いのか」と聞き返してしまった。ロランスじゃなくなったコニーは「あんたはキャットじゃなきゃダメ」と真剣な顔で言ったけれど。
「アッシュピンクの髪はかわいいから好きだけど、髪が傷むからあんまりやらない方がいいな。サラミばっかり食べてて、あの時くらいには肉がついてた方が健康でいいと思うんだけど、ベス・ブラウンになった途端に痩せてしまって。今より軽かっただろう、目尻の切開をしたのもこのときだっけ?」
初めて助手と言われたのはこの頃だった。仕事を覚え始めた時期だったのだろう。
銃の撃ち方ももっとひどいことも、全部教わったのだ。
体を鍛え始めたのは、助手と言われたからだった。助手なら、彼女にできないことが出来た方が良いに決まっている。重いものを持ち上げるとか、彼女を抱えて走るとか。
「ナナ・ブッシュはピアスをいっぱい開けるし、ヘソのが膿んでいたから少し心配だったけど。綺麗にふさがって良かったよ」
「……よく覚えてるね」
「アマンダ・メイ・ロジャースはこのあたりに来るんじゃないか」
右の脇腹をなぞって振り向く。
「そのうち背中だけじゃ収まらなくなるな。腹の側より、脚の方に輪っかになるように彫った方がおしゃれじゃないか?」
我ながら悪くないアイデアだと思ったのに、目が合ったアマンダの表情があまりにも悲痛だったから、二の句が継げなくなる。
「ダメだよ、そんなの。絶対ダメ」
シーツをぐしゃりと握りしめて、ピンクとヘーゼルの目からアマンダはぼろぼろ涙をこぼしている。
その頬に触れようとしたキャットの腕を、アマンダの掌が押しとどめる。筋肉のついた、まだ傷の無い腕を指先が縋るように撫でていく。
「キャット、あんたみたいな子に肉の体があるなんて嘘みたいだ。あんたみたいな子を、触って抱き締められるなんて」
そう言うなら抱きしめればいいのにと思ったから、アマンダがそうする前にキャットがアマンダを抱きしめた。するのもされるのもたいして違う話ではない。
「キャット、あたしは耐えられないんだよ、いつだってあたしはあたしの形に耐えられないんだ。あたしはいつか自分の皮を自分で引っぺがして死ぬしかない。でもあんたはダメだ。あんたがそんな真似しちゃ」
アマンダの体の輪郭を撫でる。少し乾いた肌の感触は離れがたく感じた。胸元を涙が濡らして、少し冷たい。
「キャット、あんたが他の肉の体みたいに老いたり傷ついたりするのは嘘だよ。形なんかあったら壊れちゃうじゃないか、そんなそこら辺のモノみたいな、あたしみたいな」
アマンダの腕がキャットの背中に回る。ひやりとした肌と触れあって、キャットの体温がぬるく分かたれていく。
「わかった、わかったよアマンダ。タトゥーは入れない。怪我にも気を付ける。大丈夫だよ。だから泣かないで」
アマンダにとって輪郭を呪うことこそがガイドラインで、祈りなのだ。
彼女は彼女の形がきちんと明日も明後日も残ることなんて嘘だと思っているし、本当に嘘だと分かる前に自分で嘘にしてしまう。形と呼べるものなんか、何も信用ならないのだろう。
そのくせキャットの形には、何がなんでも永遠でいてほしいのだ。そんなの無理だと分かっているくせに。
アマンダを抱きしめたまま体を横たえて、小さな頭を撫でながら目を閉じる。
祈るのならば今だと思った。曖昧でどうしようもない、今この時こそ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます