第17話 タクティクスオウガやるぞ!
心なしか体がふっくらしてきたような気がする。
そういうフィジカルもメンタルも絶好調の時に陰キャは何をするか。そうテレビゲームである。
「メル子。ゲームで遊ぼうぜ」
「ご主人様ゲームやるのですね」
「そりゃそうよ。ゲームの達人よ」
「本当ですか?」
「信じてないな? 私が負けたら土下座して謝ってやんよ」
「別にいらないですが」
「その代わりメル子が負けたらメイドポイント千ちょうだい」
「まあいいです、受けてたちましょう」
「よし! じゃあ遊ぶゲームはこれだ!」
『タクティクスオウガ』!!
1995年にクエストからスーパーファミコン向けに発売されたシミュレーションロールプレイングゲームである。
その物語の重厚さと戦略的なバトルが話題となり、二十二世紀現在でも最高峰のゲームと呼び声が高い。
「またえらいレトロなゲーム持っていますね」
「この
この時代、過去のゲームは文化の保護という名目のもと、ほとんどがアーカイブされており格安で購入する事ができる。
二人はモニターの前に座り、それぞれコントローラーを握った。
「そもそもTOで対戦しますか普通」
「なんでよ。ちゃんと二人でチーム分けて遊べるモードがあるんだからいいでしょ」
このモードではそれぞれ十体のキャラクター(ユニット)を選択し戦わせる事ができる。どちらかのチームのユニットが全滅したら負けだ。
「じゃあまず私からユニット選ぶね」
黒乃は慣れた手つきでユニットを選択していく。
「ハボリムは無しね。ペトロクラウドは有り!」
「ハボリムなんて雑魚はいりませんよ。ペトロクラウドもいいです」
「なんだと! 剣聖を雑魚扱いだと!?」
黒乃が選択したユニット一覧。
・テラーナイト×2
・アーチャー×5
・ウォーロック×1
・クレリック×2
「アーチャーが多いですね」
「ふふふ、TOはアーチャーが一番大事なのだよ。ハンデとして名前ありキャラは使わないでおいた」
「それはどうも。じゃあ私のユニット選択の番ですね」
メル子が選択したユニット一覧。
・ヴァルキリー×2
・アーチャー×2
・ウィッチ×4
・プリースト×2
「何これ!? ウィッチ多いな。女の子の下級クラスばっかりだし」
「クラスの性能差が全てではない事を見せて差し上げますよ」
「準備完了! ではスタートだ!」
いよいよ戦いが始まる。そのマップは?
「なにっ!? コリタニ城だと!?」
コリタニ城の門の前での戦いとなる。城壁が高くそびえ立っており、高低差が激しいマップだ。
「うわああ! メル子に城壁側を取られた!」
「ふふふ。魔法多めなのはこのためです」
魔法は高さを無視して攻撃できるのだ。
「馬鹿め、だったらアーチャーを増やせばいいものを。ウィッチなんぞ所詮サポート役よ」
「ご主人様はウィッチの恐ろしさを知ることになるでしょう」
TOは四角で区切られたマス目上に配置されたユニットを一手ずつ動かしながら戦うゲームである。行動順はユニットの素早さに依存し自軍敵軍入り乱れて行われる。
「こっちは上を取られてるからな。進むしかあるまい」
黒乃はテラーナイトを先頭に陣形を組んで城壁に迫っていく。
その時メル子のヴァルキリーが一体だけ城壁を離れて飛び出してきた。
「一騎駆けだと? はやったな! 丁度ウォーロックのターンだ」
黒乃はヴァルキリーにペトロクラウドを叩き込んだ。
ペトロクラウドとは相手を石化させる範囲魔法でTO最強魔法と言われる事もある。
「甘いですね」
メル子はニヤリと笑った。ペトロクラウドがヴァルキリーに対して不発に終わったのだ。
「何故だ!?」
「ウォーロックは
「それでも成功率50%はあったのに〜」
さらに黒乃軍は城壁に詰め寄っていく。
「そろそろアーチャーの出番ですね」
メル子は城壁の上から矢を射る。しかしテラーナイトの防御力は非常に高く、クレリックの回復魔法で簡単に回復されてしまった。
「おらおら! ヴァルキリーども、アーチャーの一斉掃射を喰らえ!」
五体のアーチャーが次々に矢の雨を降らす。回避の高いヴァルキリーだったがそれでも矢を喰らい瀕死になってしまった。そこにテラーナイトが迫りヴァルキリー二体を打ち倒した。
「ガハハ、恐怖の騎士の力を見たか」
「やりますねえ。こちらも攻めに行きますよ」
そういうとメル子はウィッチ部隊を前進させた。
ワープリングを装備したウィッチ達は城壁を降り、黒乃軍を挟み込むように展開する。
「今更ウィッチに何ができるというのかね。反撃のペトロクラウドを喰らえ! あれ? MPが足りない!?」
「ペトロクラウドは燃費が悪いのですよ。その反面ウィッチのスタンスローターは連発できます!」
四人の魔女が次々に魔法を放つ。スタンスローターによってテラーナイトとアーチャー全員が麻痺状態になってしまった。
「うおおお! やばい! ウォーロック、はよペトロクラウド撃て!ってまだ待機中かい。遅っ!」
こうなってしまっては詰みである。ウィッチは毎ターンスタンスローターを撃ち続け麻痺状態を維持させる。その間城壁の上のアーチャーが弓でチマチマと削っていく。
「あの……メル子さん? 私何もできないんですが……」
「もう少しで終わるので見ていてください」
スタンしたままのクレリックが弓で仕留められ戦いは幕を閉じた。8対0でメル子の圧勝である。
「いやー楽しかったですね、ご主人様」
「クソゲー……」
「え?」
「こんなんクソゲーだわ!」
「いや神ゲーですよ。ほら約束通り謝ってください」
黒乃はぷるぷる震えながら両手両膝を床につけた。
「メル子さん」
「この度は調子こいてしまって」
「本当に申し訳ございませんでした!(ございませんでした)」
ぺこぉ〜
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