第47話 マキアス、開発者から託される

 扉を開けることに成功した僕らは、さらに奥へと進んでいく。通路の突き当りに大きな部屋が現れた。


「この部屋で行き止まりみたいだね」


 部屋の中央には大きな石板が置かれている。

 高めの天井からは魔法かなにかの光が射しており、部屋全体を照らしていた。


「これは? 石碑かしら?」

「文字が刻まれているようだけど、読めないや」

『マキアスさま、これは古代文字ですね』


 エレニアが石碑の文字を読み進めていく。


『試練を乗り越えし者に、無限の力を与えん』


 試練か…もしかしてゴーレムやドラゴンが出てくるのかな? 僕はそっと宝剣の柄に手をかけて、緊急事態に対応できるよう身構える。


[2人のおなごに問う。気になる男の名を10回唱えよ。大声で]


「「はい?」」


『マキアスさま、どうやら遺跡の主の問いかけが試練のようですね。とりあえず言われたとおりにしましょう。なにかしら手掛かりがつかめるかも』


 そ、そうなのか…とても試練のような気がしないが…。にしても膨らみがどうの、気になる男がどうのと何を聞きたいんだよ、この遺跡。


「しょうがないわね、マキアスは耳ふさいで!」


 リーナが僕に叫ぶ。


「え?」

「はやく!」

「は、はいっ」


 僕はしっかりと耳をふさいだ。

 このシチュエーション、さっきの扉の前でもあったような。


 リーナが叫びだしたようだ。なんか顔が真っ赤だ。

 リーナにも慕う人はいるんだな。どんな人なんだろう? 王女なんだし、隣国の王子とか有力貴族とかか。そりゃ聞かれたくないよね。


 リーナが指でOKサインをくれた。僕はふさいだ手を耳から離す。


[ふむ、心音に偽りなしの反応、合格。意中の者は無自覚か…健闘を祈る]


「よ、余計なお世話よっ! つ、次はエレニアよ…」


 そう言ったリーナは、チラッと僕の方を向いてすぐに俯いてしまった。顔は真っ赤だった。う、盗み聞きしたと誤解されているのだろうか。ちゃんと耳塞いでましたよ、僕。


「エレニア、心音ってなに?」


「ああ、マキアス様。石碑の言う心音は身体センサーという機械で体の反応をみているんです。ある程度、ウソかどうか見抜けますね」


 そうなんか、凄いな古代技術…


『さあ~次は私の番ですね~』


 エレニアが両腕をブンブン回して張り切っている。


『マキアス様~わたしは耳塞がなくていいですからね〜』

「あ、はい」


 女神サマは僕の名前を10回連呼した、それは大声で。


[む…心音に偽りなしの反応…]


 石碑が少し沈黙してから問いかけてくる。


[エレニア、本当にその人が好きなのか?]


 な、なんだ!? どういう問いかけ? 偽りないんでしょ? 口調変わってない!? 


『なによ、失礼な石碑ね! マキアスさましかいないわよ!』


[そ、そうか…]


 な、なに!? 石碑がしゅんとなった…


[よくぞ試練を乗り越えた。お前たちは信のおけるものと認定する。我の名は開発者、最後まであらがう者]


「え? 開発者って…エレニアといっしょにいた人じゃ…」


『そのようですね、でも開発者はすでにこの世にはいません。これはメモリーといって、あらかじめ言葉を記憶しておく機械のようです』


 てことは開発者があらかじめ残しておいた言葉みいなものか。


[汝らの欲することを教えん、我に問うがいい]


『ちょっと!』


[む、それが問か?]


『あんた、めんどくさいことやってないで、操作ボード出しなさいよ! 直接情報引き出すから!』


 ん? エレニアが石碑をゴリゴリいじっている。何やってんだ?


『あったわ。これね』

[あ、おい。こら。勝手にさわるな、きゃっ]


 石碑の悲鳴をよそに、黙々と操作ボードとやらをいじりまくるエレニアさん。


『あ、マキアスさま。使えそうな情報ありましたよ~』


 エレニアが地図を石碑に浮き上がらせる。すごいなこれ。


『この地図にある赤い印が、かつての機械兵の大型工場があった場所ですね』


 僕とリーナが赤い印を目で追う。

 赤い印は3つあり、2つは現在の地図上では海にあたる場所だった。だが1つは…


「マキアス。この場所って…」


 リーナが僕の顔を見た。


「リーナ、これはルイガイア領内の神殿だ」


 父上の領内に…嫌な予感がよぎる。


「マキアス…」


「うん、大丈夫。まだ父上が事件に関係しているかはわからないからね。とにかく早く王都に戻って国王陛下に報告しないと」


「そうね、わかったわ」


[汝らの答えは導かれたようだな]


 急に石碑が会話を再開しはじめる。

 エレニアが勝手にいじって情報を引き出したために、出番がほとんどなかったからか、声のテンションが低い。


『ええ、ありがとう。有益な情報だったわ。メモリーとはいえ久しぶりにあんたと話せたしね』


[むふふ、もっと感謝してもいいのだぞ。我も色々いじくられて、ちょっと気持ち良かった]


 あ、テンションあがった。若干変態ぽい発言だが。


『安心しなさい、マキアス様がいる限り前回みたいなことにはならないわ』


 エレニアの言う前回とは、過去の人と機械兵の戦争のことだろう。結果、大地が汚染まみれになったという。


[その言葉忘れるでないぞ。では汝に、われの培いし知恵を授ける]


 開発者の言葉とともに、僕とエレニアの体が光に包まれた。


『マキアスさま、新しいコードを獲得したみたいですよ』



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【万物創成コード】


「??????開放」


 ☆??????

 ・発動した場合、全ての???を使用可能


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 なんだ? これ? これが無限の力?

 使用してみたが、何も起こらない。


『なによ、こんなコード私も知らないわよ? 発動しないじゃない』


[我にもそれが何かはわからん。複雑なロックがかけれている。われのメモリーには「使うべき時に発動する最後の研究成果」とだけ記憶されている]


 使うべき時に発動するか。

 これ以上は進展しなさそうだし、まあその時が来るまで待つしかないか。


[最後に問う、エレニアよ]


『なにかしら?』


[汝の気になる男は、そこにいるマキアスなのか?]


『そうよ、今はね』


[いま? ではかつては?]


『そんなことあんたに関係ないでしょ! なんでメモリーのくせに意思があるような作りになってるのよ! あんたいっつも研究と実験にしか興味なかったじゃない! そんなんだから女性の気持ちもわからないのよ…』


[………]


 石碑はそれ以上は話さなかった。


「エレニア…君はその開発者って人のこと」


『マキアスさま~何言ってるんですか。わたしはマキアスさま一筋ですよ~さあ、情報も得ましたし行きましょう』


 僕はそれ以上は何も言えなかった。

 石碑を後にして、遺跡の出口に向かう。


「とにかく、早く王都に戻ろう」

「そうね、お父様に報告しないと」


 ん? なんだろう、複数の気配を感じる。

 僕らが遺跡の出口に近づくにつれ、その気配は大きくなっていく。なんというか人の気配ではない。


「ちょ、これなに!?」


 遺跡の出口からリーナが周囲の風景を見渡して叫び声をあげた。


 僕らの周りには大量の黒い影が取り囲むようにうごめいている。


「これ、全部アンデッドか…物凄い数だぞ」









【補足情報 マキアスの獲得したコード一覧】


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【万物創成コード】


 使用可能コード


 ・「隕石創成」

 ☆空から石が飛んでくる


 ・「風力創成」

 ☆風をおこす


 ・「水分創成」

 ☆水を作る


 ・「太陽光創成」

 ☆空から光が降ってくる


 ・「火力創成」

 ☆火を生み出す


 NEW「??????開放」

 ☆??????

 ・発動した場合、全ての???を使用可能


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