第22話 マキアス、大賢者の伝説魔法より凄いの出しちゃう

「リーナ!」


 僕は瞬時にリーナの元に駆けつける。衝撃音にビックリはしていたが、無事なようでホッとする。


「リーナは子供たちとシスターを連れて教会の中に! おじいさんも!」


「ぼうず。わしのことは気にするでない。なにせ元大賢者じゃからなぁ」


 おじいさんはどこから出したのか、杖を抜いてよくわからない構えを取っている。


「おじいさん…」


 立ち込めた砂煙のなかから大柄な男が現れた。


「うひひひ、おれは鉄の暗殺剣士テッケンさまだぁ。おれさまが直々に女を始末しにきてやったぞう」


『マキアス様! しなくていいのにまた名乗ってますよ!』


 エレニア(スキルプレート)さんのツッコミが入る。


「ばぁか、どのみちおめぇらは皆殺しなんだよ。なら俺様のカッコいい名前を聞かせてやった方がいいだろぅが」


 うん、このセリフも前に聞いた気がする。

 そして、そんなことよりもリーナ達を守りきることに専念だ。―――先手必勝!


「エレニア! 【風力創成】! 速力アップ!」



 □-------------------------------


【万物創成コード】


 ・「風力創成」


 ☆風をおこす

 ・風力は調整可能

 ・風力を指定対象に付与できる(マキアス固有)


 □-------------------------------


 速度を一気に上げつつ、テッケンに高速の斬撃をみまう。


 ―――ガキッツ!


「なんだ? 硬い…」


「ひゅう~速いねぇ。だが俺のスキル【鉄化】には関係ねぇな、げひひひひ」


 よく見るとテッケンの体が鉄のように黒く光っている。


「俺はスキルで自身を鋼鉄化できるのさ。おまえの剣がどんなに速くても無意味だぜぇええええ! そらよ! お返しだっ!」


 テッケンがゆっくりとしたモーションから剣を振りぬいてくる。


 僕は速力アップにより高速移動でテッケンの斬撃をかわすも…


 ―――ズドン!!

 ―――ズドン!!


「ぐ…、一撃が重い…」


「そろそらそらそら~」


 テッケンの重い斬撃が複数飛んでくる。高速でかわす。剣で受けると折れてしまうかもしれない。


 チラリとおじいさんの方を向くと、腰に手を当てて辛そうな顔をしている…変な構えするから…


「ちい~ちょこまかとめんどくせ~なぁ~はやく女どもと遊びたいのによぉ。お~、そうだぁ~いいこと思い出したぞ~フードの野郎からもらったおもちゃがあったなぁ」


 テッケンはニヤァと口角を吊り上げて、懐から何か筒のようなものを取り出した。


「げへぇ~召喚! アイアンゴーレムぅううう!」


 テッケンが叫ぶとともに地面に魔法陣が展開されて、どす黒い塊がむくむくと立ち上がる。召喚されたのは全長10メートルほどのゴーレムだった。


「うひひひ~スゲーだろぅ。アイアンゴーレム! そこのガキを始末しろやぁ!」


 アイアンゴーレムの目に赤い光がともる。僕の方に前進しながら、黒い両腕を振り回してきた。


 僕は剣をふるって、両腕から繰り出される攻撃を防ぎつつ後退する。

 剣が鈍い音を出しながら悲鳴をあげた。


「ぐっ、硬い…」


「ぐひひひ~、そりゃそうだぁ~こいつは俺と同じ鋼鉄なんだぜぇ、なまくら剣なんかじゃ傷ひとつつかねぇよぅ。おめぇはおとなしくこの鉄の塊の相手をしてなぁ」


 そう言うとテッケンはくるりと教会に向けて歩き始める。


「うひひひひひ、べっぴんさんと可愛いシスターにガキかぁ。待ってろよぉ~痛めつけて、たっぷり可愛がってから始末してやるよう。これだから女の暗殺依頼はたまんねぇぜ、今回は大当たりだぁ~」


「ふざけないで! あんたの思い通りになんかならないわよ!」


 リーナが教会から出てきて、ライトシールドを展開し始めた。

 リーナを中心に眩い光が教会全体を包んでいく。


「マキアス! こっちは大丈夫よ! ゴーレムに集中して!」


「ぐひひひ、べっぴんボインちゃん、なにが大丈夫だって~暗殺対象が自ら出てくるとはアホな女だぜぇ。そのでかい乳に脳みその栄養すべて取られてんじゃねぇか~」


「くっ、けがらわしい! あんたなんかマキアスがやっつけてくれるわよ!」


 テッケンは剣を振りかぶり、重い斬撃をリーナのライトシールドに連発で叩き込み始めた。


「おらおらおら~さあ、いつまで俺様の斬撃に耐えれるかなぁ~げひひひひ」


 まずいぞ、リーナはさっき子供たちの治療で魔力をかなり消費しているはずだ。ライトシールドのような強力な魔法を長時間維持できるとは思えない、このままだと…


「さてと、ぼうず! ようやく腰がなおったわい! ちょいとうしろにさがっておれ!」


 アイアンゴーレムを攻めあぐねる僕のまえにおじいさんがズイっと出てきた。


「おじいさん!?」


 おじいさんの杖が光輝くと同時に、ゴーレムの周りに複数の結界が構築されていく。


「あああん? じじいぃいいい! 結界張るだけじゃあそいつはたおせねぇよ」


「バカ者! だまっとれ、結界は周囲への被害を抑えために展開しただけじゃ! 今思い出しているとこなんじゃから静かにせんか! お、そうじゃ、これじゃあ!」


 おじいさんが杖を空に掲げて、詠唱を開始する。

 空に何重もの魔法陣が展開しはじめた。


「大賢者の名において、天の精霊に我が意を届けん。

 我の力と引き換えに、天の精霊に助力をこう……ペラペラペラペラペラ」


 なんか詠唱がすっごく長いぞ…


『マキアス様、おじいさんが詠唱しているのは、伝説魔法のようです』


「伝説魔法?」


『現世ではほとんど使い手がいない魔法ですね』


「―――よっしゃ! 準備ととのったぞい!」


 おじいさんの掲げた杖がひときわ輝きを増す。



「天の精霊よ! われの名において命ずる! 星を降らせよ! 究極魔法【メテオ】!!!」



 上空から赤い塊がすごい速度で落ちてくる。

 これなんか見たことある…


 一筋の赤い閃光が、アイアンゴーレムに直撃して結界内に凄まじい衝撃音と熱風が吹き荒れた。


「ふぅ~い。久しぶりじゃがなんとかなったのう~」


 結界の中には大きな穴が開いており、ゴーレムの姿はどこにもなかった。


「な、なんだ~アイアンゴーレムを消し飛ばしやがった~じじぃ~何者だ?」


 テッケンが驚愕の声をあげる。


「どうじゃ、ぼうず。元大賢者らしい魔法じゃろ」


「す、凄いや。おじいさん」


「ぐ、ぬぅうう。大賢者ぁあ? 予定が狂うじゃねぇか」


 一瞬ひるんだテッケンだが、懐ころから再び筒を出して放り投げる。


「こうなったら出し惜しみなしだ~アイアンゴーレム10体召喚!!」


 まずい! 10体だって…!?


「おじいさん!」


 あ、ダメだ腰にきたらしい。杖によりかかってプルプルしてる。


「あててて。ぼうず、あとはおまえさんでなんとかせい。わしゃもう腰が限界じゃ」


 おじいさんは腰に手を当てつつその場に座りこんでしまった。


「ふふぅ~げひひひひひ、あのじじいがいなけりゃこっちのもんだぁ。まずはこのガキを始末してからゆっくりと女どもを嬲ってやるぜぇ」


「おじいさん! 結界はまだはれる?」


『マキアス様…もしかして…』


「まかせぃ! ぼうず! なんかやるんじゃろ! 思いっきりやってみい! 結界ぐらいは、いくらでも展開してやるわい!」


 よし! 思いっきりいく!!


「エレニア! 【隕石創成】! 全力だ!!」


 □-------------------------------


【万物創成コード】


「隕石創成」


 ☆空から石が飛んでくる

 ・ 宇宙空間に小天体を創成。

 ・「石の調整」により大気圏突入後の隕石の目標設定が可能。


 □-------------------------------



『了解、宇宙空間に隕石を創成開始』


 はるか上空で、大賢者の伝説魔法メテオをよりはるかに大きな塊が形成されていく。


『隕石創成完了。隕石の大気圏突入を確認。60秒後に着弾します』



「ぼ、ぼうず…なんじゃありゃ~~!!!!!」

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