第20話 マキアス、占いで煙が出る
「わ~マキアス~海がみえるわ~」
リーナのご要望どおり、海が近い宿屋に宿泊することにした僕ら。王女様はご満悦の様子である。
ちなみに宿泊部屋はいつものごとく1部屋である。
まえにも言ったが、これはリーナを暗殺者から守るための緊急処置であることを忘れてはならない。
決して邪なたくらみから1部屋にしているわけではない。
「では、こちらがお部屋の鍵です。食堂はロビー奥にあります。お部屋の壁はうすいので夜はほどほどにお願いしますね♡」
受付の女性がいきなり凄いのぶっこんできた…
なにがほどほどなのだろか? なんども言うけど、決して僕らはそういう関係ではない。宿を1部屋にするとけっこうこれ言われるな。世の中とはそういうものなのだろうか?
「ふふ、マキアス~わたしたちって、恋人同士にみえるのかな? それとも夫婦かしら」
違いますよ、王女様までなに言い出しているんですか。このリーナのセリフも何回聞いたことか。最近は違う回答する作戦でかわしているのだが、もう少し王女の自覚を持ってほしい。でないと僕が誤解されて「王女1部屋監禁破廉恥罪」とかで国外追放確実になってしまう。
「さあ、リーナ部屋にいこう」
「もう! ちょっとは恋人同士でもいいじゃない」
などと、よくわからない会話をしていると、ロビー奥の方から声がした。
「ほうほう、仲が良いのぅ。どうじゃそこのカップル、わしの占い試していかんか?」
1人の老人が奥のテーブルから手まねきをしている。
「あら、おじいさん、占い師なのかしら? ねえマキアス、占ってもらいましょうよ」
リーナはカップルという言葉に気を良くしたのか、すでにおじいさんのいるテーブルに向かっている。
しょうがないか。怪しい気配はないし。いい気分転換になるかもしれないな。
「あ~おじいちゃん、また勝手なことして。お客さんに変な占いするのやめてって言ってるのに~」
「何を言う、わしの占いは100発100中じゃ。そこらの占いと一緒にするでないぞ」
「はいはい、わかったよ。申し訳ないですが、お二人もほどほどに相手してやってくださいね」
どうやらこのおじいさんは、受付女性の祖父のようだ。いかにも町のじいさまと孫娘という感じがする。
とりあえず、ぼくとリーナはテーブルをはさんで老人と向かい合わせに座った。
「さてと、ではさっそく占ってやるぞい! ほれっと!」
老人が懐から虫メガネを取り出してリーナをのぞき始めた。
顔からはじまり徐々に虫メガネを下げていく。
「いや~すさまじい美人さんじゃなぁ~。ほうほうほう、これは、うひょ~」
こら、じいさん。あきらかに虫メガネがリーナの膨らみの前で止まっているぞ…
「ちょっと! おじいちゃん! 何やってんの!」
孫娘が老人の暴走を止めてくれたようだ、よかった。
「おっと、これは失礼。あまりの美しさとプロポーションについつい見惚れてしまったわい。さてとお嬢ちゃん、すこし手をみさせてくれるかね」
若干頬を赤くさせたリーナが、すっと老人の前に手を差し出した。さっきまでリーナをジロジロ見てたのはなんだったのだろうか。
「ふむふむふむ、でたぞい」
おじいさんが虫メガネをこちらに見せてくれた。
「レンズに文字が浮き上がってる?」
そこにはスキル成長力、魔力、体力といった数値がにじみ出ていた、なにこれ?
「ほうこりゃたいした魔力じゃ。上位の魔法使いにも匹敵するぞい。お嬢さんは将来優秀な魔法使いになるかもしれんの」
なるほど、占いというよりはステータス確認のようなものらしい。まあステータスは教会の高位の神官にしかできないので、凄いと言えば凄いな。
「わぁ~おじいさんありがとう。でもわたしまだ自分のスキルもうまく使えなくて」
「ふはは、それは安心するがいい。スキル成長力も常人よりはるかに高いわい。使えば使うほど上達するじゃろう。しかしその若さですでにこの魔力量じゃ、将来が楽しみじゃな。ぼうずこんな将来有望の超美人さんをよくつかまえたのう~」
リーナはおじいさんの言葉に頬を赤めつつ、チラチラと僕の方をみてきた。
「えと、おじいさん僕らはそういう関係じゃな…痛っ…」
ふとももをつねられた。かなり強めに。
顔怖いです王女様。
『マキアス様、あれ虫メガネではないですね、おそらく古代アイテムの1つでしょう』
エレニア(スキルプレート)がそっと耳打ちするように教えてくれた。
「古代アイテム…」
思わず声がもれてしまった。
古代アイテムとは、かつて栄えていたと言われる古代文明が残した道具類のことだったかな。なんでも失われた技術でできており、名のある冒険者がダンジョンの奥地とかで発見したりするらしい。
「ほう~おまえさん。よくこれが古代アイテムだとわかったな? どこぞの冒険者かの?」
「いえいえ違いますよ、僕らはただの旅人ですよ」
僕らは旅行帰りで王都に戻る最中と答えるようにしている。余計な詮索を防ぐためだ。
「そうか、こんな美人さんとイチャイチャ2人旅とはうらやましい限りじゃのう。まあええわい、話を戻すとこの古代アイテムはわしが昔ダンジョンで見つけたんじゃよ。のぞいた相手の力量がわかるんじゃ。しかし随分と古くてのう、一部の機能しか使えんようじゃ。」
「すごいな! おじいさん昔はすご腕冒険者だったんだね! 一部の機能でもたいしたものだよ、それ」
「すごいじゃろ! あとわかる数値はスリーサイズぐらいかのう。お嬢ちゃんのは、うえからバスト9…」
「おじいちゃん!!!」
またしても受付孫娘さんからお叱りの声が飛んできた。にしてもバスト9…て続きが気になるじゃないか!
ダメだ、気にしちゃダメだ! などと変な汗をかく僕におじいさんが虫メガネをむけてきた。
「あ、僕の番ですね」
もちろん全身ではなく初めから僕の手をとって虫メガネでみている。僕のスリーサイズなどだれも興味がないからね。
「ん?」
虫メガネが赤い光を発して煙を出し始めた。
「え? おじいさん? なんか煙出てるけど」
「そのようじゃな…」
なんかシューシュー音も出始めた。
え? なに? なにこれ?
僕が手を離そうとした瞬間、虫メガネはバリンという音とともに砕け散った。
「………」
「………」
「す、すみません! なんかすみません!」
原因はわからないが、とにかくあやまる。なにせ希少な古代アイテムだし、これは普通にまずいぞ。
「いやいや、かまわんよ…所詮は拾い物じゃ、いつかは壊れるものじゃ…」
おじいさんが粉々になった虫眼鏡をみて固まっている。目が死んでるじゃないか。ぜったい良いと思ってない!
う〜ん。悪いことしたなぁ。
「ぼうず、虫メガネが煙をふいたのはこれで2度目じゃ」
「え? そうなの?」
「1度目はわしの弟を測定した時じゃよ。その時は煙を吹いたが壊れはしなかったし数値もでたわい。じゃがぼうずのは数値もでんかった」
「それって…」
「うむ、ぼうずの力は測定不能の人知を超えたものだったということじゃな」
「あ、あの弟さんて…」
「うむ、わしの弟は大賢者じゃよ」
「―――だ、だ、だ、大賢者ぁああ!」
大賢者って。全ての魔法を極めし者とかじゃなかったか!?
「す、すごいマキアスは大賢者さまより凄いってこと? いや~ん惚れ直しそう」
リーナさん! 驚くポイントが違うよ! ちょっと落ち着こう。そもそもおじいさんの弟さんが大賢者とか話がぶっ飛んだ方向にいってるし。
「えと、冗談ですよね? おじいさん?」
おじいさん、今日一番の真顔を横に振って僕の言葉を否定した。
いや、今までのキャラをここで使ってほしかった。
「ちなみにわしも大賢者じゃぞ。元じゃがな」
「はぃ――――――っ!?」
「でじゃ。ぼうず明日はヒマか?」
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