第18話 ゲイナス視点(マキアス父) ソクアのウソに激怒する

 マキアス達がコルナ村を出発した数日後。


 ルイガイア領主の館にて、マキアスの父ゲイナスと兄ソクア、そして内政官のピケットが先日の害虫駆除(イーゴナ討伐)の報告会を行っていた。


「おい、ピケット! なぜこんな安物のワインを俺に飲ませるのだ!」


 俺は、執務室のテーブルにおかれた報告書に目を通しているピケットを怒鳴りつけた。


「ゲイナス様。今回の害虫被害が大きくなりすぎました。領内でかなりの畑が被害にあっております。ブドウ畑も例外ではありません。商人どもが先走ってワインの流通を絞っております。」


「なんだと! たかが虫ごときにこの俺の領地が揺らぐはずがなかろう! 少なくとも領主の俺は最高級のワインを飲む権利があるんだ!」


「しかし、現実的にはワインの値は高騰しております。領民の主であるゲイナス様のみが特別待遇を受けては領民に不平が募るでしょう。ましてや今回は領主の対応が遅れたことが原因ともっぱらの噂になっております」


「なにぃ~、害虫駆除は息子のソクアが存分に使命を果たしてきたではないか! 揃いもそろってアホ領民なのか!」


「そ、そうですとも~父上、俺はこのスーパースキル【剣聖】で見事に害虫どもをかっこよく討伐しましたからねぇ!」


 ソクアが胸を張って会話に入ってきた。

 うむさすがは我が息子【剣聖】のスキル持ちだ。


 だが、そのソクアの横にいる内政官のピケットは、報告書をジロジロ見ながら首をかしげている。


「なんだ、ピケット?」


「いえ、報告書に目を通しましたが、事実は違うようですね。まず、害虫を特定するのにかなりの日数を消費してしまったとあります」


「何言ってやがる! あれは3等騎士どもがクソの役にも立たなかっただろうが! 俺さまのスーパースキル【剣聖サーチ】に従っていればすぐに探し当てれたんだよ!」


「ふむ、その【剣聖サーチ】なるクソスキ…ごほん、スーパースキルにて周辺の村々を転々として貴重な時間と体力を浪費した。と騎士隊の報告書にはありますが」


「ちげぇよ! あいつらがトロトロして俺様の足を引っ張りやがったんだ! そのウソ報告書かせよ! 破いていやる!」


「ソクア! 黙らんか! 虫ごとき探せんとは、それでも【剣聖】のスキルを持つものか!」


「ひっ、父上…」


 まったく、どういうことだ? ソクアから満足いく報告を受けたばかりだぞ。


「父上~【剣聖】のスキルにて領内の害虫どもを完膚なきまでに退治しました!」

「父上~【剣聖】のスキルにて超絶カッコよく3等騎士たちをサポートしまくったら、超尊敬されまくりました!」

「父上~【剣聖】のスキルにて害虫を退治したので村人たちから感謝されまくりました!」


 ソクアの報告は【剣聖】のスキルを持つものなら当然の結果だ。


「まあ、とにかく報告書の続きを読みましょう」


 そういって、ピケットは手元にある報告書をたんたんと読み始めた。




 ◇◇◇




「以上が害虫駆除報告でございます」


「………」


「おいピケット、ということは害虫を退治したのは?」


「マキアス様です」


「3等騎士たちを救ったのは?」


「マキアス様ですね」


「村人たちを救ったのは?」


「それもマキアス様ですね」



「――――――ソクアぁああああ!!」



「ひぃいいいいっ、ち、父上…これは違うのです…そのなんというか…」


「おまえ、またあの部屋に戻りたいのかぁ」


「ひぃいいいいっ、嫌だ、父上ぇええ。あの部屋はいやだぁ」


 ソクアの怯えるあの部屋とは、かつてソクアを幼少時代に閉じ込められていた部屋だ。

 おれはマキアスが有望だと勘違いしていたころ、こいつを母親と共に世間の目からはなしていた。まあ優秀な跡継ぎが第一優先事項なのは当然のことだがな。


「しかし、【剣聖】のスキルを持つおまえではなく、あのハズレスキルのマキアスが活躍したのだろう」


「ち、ちがう! 父上! おれは【剣聖】のスキルで虫たちを弱らせたんだ。だけどあのクソ騎士だちが弱すぎて…最後のとどめだけはマキアスがやったんだよ~」


「ふむ、たしかに【剣聖】のスキルを多用したと、報告書にはありますね」


「だろう! ピケットの言う通りほとんど俺の手柄なんですぅ」


「ただし、無差別に発動しすぎて、騎士たちや村への損害を増やした、との報告もありますね」


「てめぇ、ピケット! ち、父上違うんです! 俺のスキルが虫たちに大ダメージを…」


 私はソクアの顔面をつかんで、無理やり起き上がらせた。ソクアの顔面がミシミシと音をたてはじめる。


「ぐきゃ~、父上、やめてくれ~。いたい、いたい、いたい、いたい~」


「ああ、もちろんだ知ってるよ、おまえのスキルは王国一だ。おまえは剣聖にならねばならん、絶対に。俺の息子なんだ当然だろ? なあ、わかるよな」


 ミシ ミシ


「ひ、ひぇ、そうでしゅ、おれは剣聖になりまふゅ。だかりゃ~いたいのやめへぇ~」


 ソクアの顔面が悲鳴をあげて、ブルブルと震えている。


「そうかそうか、さすがは俺の息子だ。そうでなくてはな。 おい、ピケットたしか魔物が出たとの報告があったな!」


 俺はソクアの顔面をさらに締め上げて、ピケットに確認する。


「はい、ゲイナス様。海岸線沿いの村落に被害報告が上がっております。」


「よ~し、ソクア、その魔物を討伐してこい。できるよな? 【剣聖】のスキルならできるよな?」


 ミシ ミシ ミシ


「きゅ~ちゅちゅうえ~きゃをがつぶでちゃうぅうう~ひゃなして~」


「げ、ゲイナス様。今回の報告からもソクア様はまだ部隊を指揮するレベルではないかと。1等騎士たちを向かわせた方が良いのではないでしょうか」


「ピケット~、おまえは何を言っているんだ。【剣聖】のスキルをもつソクアだぞ、二度と失敗などない。そうだよな? ソクア」


 ミシ ミシ ミシ ミシ ミシ


「はゃい! かならじゅや、みゃものをとうばちゅしてみせまちゅ! だゃからはなしゅて…」


「良く言った!! さすが我が息子よ! 期待しているぞ」 


 ミシ ミシ ミシ ミシ ミシ ミシ ミシ


「はゃいぃいい…………………」


 顔面血まみれのソクアと報告を終えたピケットを執務室から退出させたあと、俺はクソ不味いワインをあおりながら、領主の椅子にドカッと座った。


 ふう、まったく最近は問題ばかりだ。

 リリローナ姫暗殺に向かわせた風の暗殺剣士は失敗して消息不明。新たな暗殺者を送りこまなければならん。前金の回収もできん! 高かったんだぞ!


 それに、ソクアはあのハズレスキルのマキアスごときに遅れを取る始末だ。裏も表もなぜこうもうまくいかん!


 まあいい、ソクアも今回で学んだだろう。本来は【剣聖】のスキルに敵うものなどいないのだからな。あのクズスキルのマキアスよりも優れているに決まっている。


 そうだ、この最高の領主であるゲイナスさまの判断が間違っているわけがないのだ。





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【読者のみなさまへ】


読んで頂きありがとうございます!


みなさまのおかげで、第18話まで更新することができ11000PVを超えました!

タイトルの「隕石」がなかなか出てこないですが、もう少しお待ちください。

※あれを出すともろもろ消滅してしまうので…。


面白い! 

続きを読んでみたい! 

更新がんばれ!


と思っていただけましたら、フォローや☆評価を頂けると、作者は泣くほどうれしいです。


これからも1日1話更新できるよう頑張りますので、引き続き応援よろしくお願いします!

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