【万物創成コード】空から石が降ってくる外れスキルで隕石が降ってきたんだが? 実は何でも作れる万能スキルでした。〜剣聖じゃないと実家を追い出されましたが、王女と女神に溺愛されて今は幸せです〜

のすけ

第1話 はずれスキルで追放

 僕-マキアス・ルイガイアは女神の礼拝堂にいた。


 今日はこのルイガイア領にある礼拝堂でスキルの付与が行われる。

 スキルとは18歳になると、だれもが授かる特殊能力のことだ。


「いよいよこの日がきたな、マキアスよ」


 父のゲイナス・ルイガイアが満面の笑みで話しかけてきた。

 父が笑みを作ることは珍しい。ましてや満面の笑みということが、今日の僕に対する期待を表していた。


 ゲイナス・ルイガイア―このエセシオン王国ルイガイア領の領主にして、剣を重んじる父である。


「はい、父上。女神さまより授かりしスキルをもって、必ずや父上をお助けしてこの国を守り抜きます」


「うむ、よく言った。それでこそ我が息子よ!」


 実際にどのようなスキルが付与されるかは誰もわからない。


 まあ、あまり考えすぎても良くないので、できる限り無心で臨もうと思っていたのだが、やはり考えてしまう。だって、一生を決めかねないイベントなのだから。


「落ち着かないようですね」


 やさしい声のした方を向くと、そこには1人の美しい女性がいる。

 彼女はリリローナ――エセシオン王国の第三王女だ。僕が子供の頃、父上の王城訪問に同行した際に、庭園で彼女とよく遊んだ。それがきっかけで、今でも友達として接してくれる。もちろんこのような公の場では、王族といち領主の息子という主従関係だけど。


「いや、思ったより緊張してしまいますね。リリローナ様はさきほど付与の儀式を終えられたのですね」


「ええ、私のスキルは【光の加護】でした。女神さまより授かりし力に恥じぬよう一層努力しませんとね」


 彼女も18歳、僕と同い年だ。

 どうやら、彼女に付与されたスキルはかなりのレアスキルらしい。


「さあ、マキアスあなたの番ですよ、いってらっしゃい」


 リリローナがその青い目を輝かせて僕に笑顔をくれた。


 礼拝堂中央にある、女神像に向かい一歩一歩足を進める。

 僕は女神像の前に来て跪いた、そして目をつぶり祈りを捧げる。


 ―――声が聞こえた。


『あなたには最高のスキルを与えます。世界を救ってください』


 え? だれ?

 目を開けて周りを見回したが、近くには誰もいなかった。


 まあいいか、おそらく過度の緊張のせいで感覚が敏感になっているのかもしれないな。

 僕は、立ち上がり女神像から離れて、スキル鑑定の神官のもとへ歩く。


 僕の横には、父親のゲイナスが期待にみちた目をして神官の鑑定結果を待っていた。


 しばらくして、神官が口を開いた。

「マ、マキアス・ルイガイア! 女神より与えられしスキル、【万物創成コード】!」



 ――――――ん? え? ば、ばんぶつそうせい…? コードてなんだ?? そんな魔法あったか?



「ぐっ…な、なんだそれは……」


 あきらかに横にいる父の顔色がこわばり、その大きな肩が小刻みに震えている。


「い、いや…ゲイナス様、私も聞いたことのないスキルです。発動してみないことにはなんとも…」


 神官の言葉のとおり、僕もこんなスキル聞いたことがない。


「剣聖のスキルではないではないか……」


 父の顔色は険しくなる一方だ、とにかく【万物創成コード】なるスキルがどういうものかわからない。もしかしたら、剣技の強化だとか、兵士の士気を上げるといったスキルかもしれない。


「や、やってみます、父上見ていてください」


 礼拝堂の中庭に出て、俺はスキルを使用する。仮に強力な魔法だと室内での使用は危険かもしれないし……


「万物創成コード!」


 スキルプレートが僕の前に出現する。


 □-------------------------------


【万物創成コード】


 使用可能コード


「隕石創成」

 ☆空から石が飛んでくる


 □-------------------------------


 どうやら「隕石創成」というスキルが使用可能らしい? いんせきてなんだ? いや、とにかく早く何か発動させないと。

 僕は「隕石創成」なるスキルを選んで発動させる。


 あれ? 何も起こらないぞ? ウソでしょ? 


 しばらく静寂が続いたあと、僕と父上の間に小さな音がした。


 ―――――こつん


 そこには小石が転がっていた……


「これが、空から石が飛んでくるというおまえのスキルか? こんなゴミのような小石しか出せない奴が、栄光ある我がルイガイア家の次期領主だというのか?」


「い、いえ、父上! こ、これ以外にも何かできるのかも―――」


 僕が言い終わる前に、父は言葉をかぶせてきた。


「もういい、お前には失望した。これ以上はいい恥さらしだ」


 そこにあるのはいつもの父親の顔では無かった。

 そう、不要になった物をみるような冷たい顔だ。


「なんだ~マキアスが付与されたのはクズスキルか、くひひ」


 話しかけてきたのは、僕の次に鑑定を終えた兄のソクア・ルイガイアだ。腹違いの子供で、俺より2か月早く産まれた兄上だ。

 ソクアは僕に対抗意識をもっているようで、このように絡んでくることが良くある。


「父上、私の与えれたスキルは【剣聖】でした!」


 そんな兄上が、どうよと言わんばかりの目を僕に向けながらニヤニヤしている。


「なに!【剣聖】だと!」


【剣聖】は滅多に付与されないレアスキルだ。武家のしかも剣の力を重要視するルイガイア家には最も相応しいスキルといえる。父は息子が剣聖のスキルを獲得することを望んでいた。


「そっか、兄上おめでとう! 凄い―――」


 僕が言い終わる前に父上が興奮したように大声をあげた。


「よくやった、わが息子ソクアよ! やはりルイガイア家の栄光を引き継ぐのは長兄であるお前しかおらんな!」


「そうでしょう、父上~やっと私の価値を認めてくださった。さあ不出来な弟よ、俺様の超絶スーパースキルを試させてもらうぜ!」


 ソクアはいきなり腰の剣を抜きながら、スキル【剣聖】を発動する。

 その瞬間、眩い光がみえたかと思うと、僕は後方に吹っ飛ばされていた。床に叩きつけられた体が悲鳴をあげる。とっさに剣を抜かなければ、首が飛んでいたかもしれない。


「うっひょ~、こいつはすげぇ! あの生意気な弟を一撃だぜ!」


 ソクアが今までのうっぷんを晴らすかのような声をあげて、はしゃいでいる。


 僕がなんとか立ち上がろうとしていると、父のゲイナスが死ぬほど冷たい目を僕に向けて、とんでもないことを言い放った。


「おまえは追放だ! そんな使えないスキル持ちは我が家に不要、存在自体が邪魔だ! 」


「ち、父上。兄上ソクアも私もまだまだ未熟です。今後も修練を私とともにしないと―――」


「だまれ! このクズスキル持ちが! ソクアの練習台にもならぬのならこの家に置いてやる義理もない! さっさと荷物をまとめて出ていけ!」


「ひゃっは~弟マキアスよ、修練なんて外れスキルしか与えられないおまえのためにあるんだよ! 俺様が修練なんてダサいことやるわけねぇだろうが!」


 あまりに態度の急変する父に対して、今までの信頼がすべて崩れ去った僕。

 僕の言葉にはまったく耳を貸さずに罵声を浴びせてくる兄ソクア。

 もはやだれを信じたらいいのかもわからない。


 この場に僕の居場所はない、とにかく出ていくしかない。

 重い足取りで1歩1歩、礼拝堂の出口に歩いていく。


 リリローナが父親に抗議しているようだが、それもこの衝撃的な出来事の影響であまり頭に入ってこない。


「そんな、ひどすぎます。ゲイナス殿、今までのマキアスの頑張りをあなたは知っているはずです! 追放だなんて」

「姫、今までではダメなのですよ、我が息子は未来永劫このエセシオン王国ルイガイア領の希望とならねばならんのです。あいつはその器ではなかった、ただそれだけのことなのです」


「そ、そんなこと……」


 姫が僕に駆け寄ろうとするが、周りの従者に止められているようだった。


 そんな情景を横目に、僕はまだ痛む体を引きづるようにして礼拝堂を出た、荷物をまとめるために家に戻る? そんな気にはなれない。


 追放、その二文字が何度も僕の頭に響き続けていた。



―――――――――――――――――――


【読者のみなさまへ 新作投稿開始のお知らせ】


新作を投稿開始しました。

魔界ゴミ焼却場で魔物を【焼却】し続けた地味おっさん、人間界に追放されて出来損ない聖女の従者となり魔物討伐の旅に出る。なぜか王国指定のS級魔物が毎日燃やしていたやつらなんだが? これ本当に激ヤバ魔物か?


https://kakuyomu.jp/works/16818093076712271163


魔界で燃やし続けた最強火力のおっさんが、人間界で無自覚に色々燃やしちゃいます。

是非お読みください!











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