第57話 第1回公式イベント-8

 転移した先は少し高さがあったようで、真横から床に落ちる。


「……ったぁ」


 辺りを見回すと、オフィスにあるような机と椅子が並べられている部屋だった。


「どこ……ここ」


 オフィスっぽいけど、説明も何も無いからどうすればいいか分かんないんだけど。外に出ればいいの?


 私は扉を開けて部屋の外に出ると女性に話しかけられた。


「こんにちは、ライブラ様。この後について説明致しますので、着いてきてください」


「あ、はい」


 素直に着いていく。一体どこに行くんだろうか。

 というかそれなら最初からそこに転移させればいいのに。


「こちらの部屋になります。続きは中の人達にお聞きください。それでは失礼致します」


 そう言われ、扉を開けて入ると見覚えのある人がいた。


「……ミトさんとヤエさん?」


「こんにちはライブラさん。私達のことは知っているようですが改めて自己紹介しましょうか。私はヤエと申します」


「私はミトです。では早速説明に入りますがよろしいですか?」


「は、はい」


「まず、鎧武者の討伐おめでとうございます! パチパチパチ!」


 拍手しながら声にも出してるよこの人……


「戦闘の様子は私も見てたんですけどね、あなた凄いですね。技量もスキル内容も他の人とは一線を画してますよ」


「ありがとうございます……?」


「いえいえ。それで私達の方から1つあなたに頼みがありまして、勿論断って頂いても構いませんよ」


「その内容なのですが、次の第3Rのエリアの1つであなたに1Rだけ鬼をやって頂きたいのです」


「…………はい?」


 それって私があの鎧武者達と同じポジションってこと? いや、ステータス的に成り立たないでしょう。


「ステータスに関しては一時的に専用のステータスに置き換えられますよ。それに第3Rは無条件で勝利となりますし、ゲーム内通貨とアイテムでお礼もさせていただきます」


「私がやっている、ということは知られるのでしょうか」


「分かりやすいように見た目に鬼のエフェクトをかけさせては頂きますが、それ以外は変わりませんので……そうなりますね」


「そもそも観戦者の方で見られてますし、あなたのことを注目してる人たちもいるんですよ?」


「え? そうなんですか?」


「掲示板にあなたについて話してる人がいますね……。まぁ悪いことは言われてませんので安心してください」


「そうでしたか、鬼をするということでステータスが変わるというのはどういうものに?」


「まずHP30万、MP無限、全耐性99%、ですね。他にはバフとして疲労軽減、与ダメージ上昇などですかね」


「なるほど……正直やってみたいです」


 殺戮を公認で出来るなんて、そんな都合のいいこと断る訳がない。


「本当ですか! ありがとうございます! では次の第3Rの3時間、よろしくお願い致します」


「え? 2時間じゃありませんでしたか?」


「あれ、ご確認されてませんでしたか。6,4,2,1から6,4,3,2に残り時間が変更されてまして。問題ありましたでしょうか……」


「いえ大丈夫です」


「はい! それではしばらく歓待エリアでお待ち下さい! 鬼の時のステータス詳細は今からタブレットで確認出来るようになってますので、詳しくはそちらでご確認ください」


 そして私は歓待エリアと言われていた所に転移していた。



「…………え?」


 1人用のソファが円形のテーブルに向けて12脚並べてあり、テーブルにはお菓子や飲み物が置いてあったのだけど…………


「って……もしかしてライブラか?」


「ヘリアル、知り合いか……?」


「ヘリアルさん?!」


 そこには2人が既に座っていた。そして、そのうち1人は大学ダンジョンで知り合ったヘリアルさんだった。


「久しぶりだな、まさかライブラとここで会うとは」


「お久しぶりです、あの時はありがとうございました。ところでここにいるのは私と御二方同じ理由なのでしょうか?」


「俺達は鎧武者を倒してここに来た」


「そういうことだ」


「でしたら同じですね。ところで…………そちらの忍者のような方は?」


「シグレという。ライブラだったか」


「は、はいライブラです」


 なんか、声に抑揚が無いというか静かというか……


「次のラウンドではどうするんだ」


「次ですか、鬼として参加するかということでしょうか? それでしたらすることにしましたが」


「そうか、私も参加するのだがこの男はしないようでな」


「え、そうなんですか? ヘリアルさん」


「ああ、対集団戦自体向いてない方なんだ。並以上には戦えてもあの鬼とは並び得ないと思ってな」


「そうだったんですか」


「というかライブラ。お前あれを倒せるくらい強かったのか、初めて会った時まだ初期装備だったろ」


「まあ、相性有利とかでどうにかなった所はありますね。御二方はどうやって倒したのでしょうか、無理に聞くつもりもないですけど」


「私は毒と自力の攻撃で倒した」


「俺は割合ダメージを定期的に使った持久戦だな」


「そうだったんですか、私の方法って邪道なんでしょうか。因みに即死スキルで一撃入れて倒しました」


「「!?」」


「そ、即死スキルなんてあるのか。ライブラ、何があってそんなスキルを……」


「プレイスタイルの影響でしょうか。あ、そういえばさっきLv上がったのに見てませんでした。ちょっとすみません、確認しますね」


「おう、あれだけのLv差相手に戦えばLvも上がるよな。まぁそんな大幅に上がる訳じゃないが」


 どれどれ、ステータスを確認……って、へ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る