第40話 不可侵領域の奥へ
気付いたらロビーのセーフティエリアにいた。どうやら死に戻りしたらしい。
HPが最大値、MPが死亡時の半分になっている。
「ん、ライブラさん?」
「あー……こんにちは」
さっき秋川さんと話してた人……エゼルさんだっけ? と一緒にいた人だ。
「やられたんですか?」
「そうらしいです」
この人1人で何してたんだろうか。
とにかく、何があったか思い出そう。記憶では、私がマネキンの首を切ろうとしたら、私が首を切られていた。恐らく攻撃を完全に反射されたのだろう。
あ、秋川さん1人残して死んだんだった。チャットしておこう。
『すいません、死に戻りしたようです。無事ですか?』
『うん、大丈夫。他に何か来たりはしてないし、マネキンが動き出したりもしてないよ。ちなみにマネキンは無傷のまま』
『そうでしたか……一度合流したいのですが』
『分かった、ここは2階の近代の展示の所だから、待ってるね』
さて、非常に難しいミッションだ。さっきの記憶を辿れば合流できるかな? さっき通ったばっかりなんだし、きっと大丈夫だよね――
――駄目だった。
ある程度予想通りだったけど、一度通った程度では私の方向音痴は誤魔化せなかった。どこだろうここ。
さて、秋川さんにチャットして助けを求めるしかないか。
『大丈夫ー?あとどれくらいで着きそう?』
『ごめんなさい、迷いました』
『そう?なら一旦セーフティエリアに戻って合流する?』
『お願いします。わざわざ待ってもらったのにすいません』
『いいよ、気にしないで』
これで今度こそ合流出来るね。さて、来た道を戻るように帰ろう。
そうして、セーフティエリアを目指して暫く歩くと……
私は鏡のマネキンの所に辿り着いた。
「なんで?」
どうしてこうなった。ここを目指そうとしても辿り着けないのに、別の所を目指した途端辿り着くなんて。
秋川さんはもう離れてしまったし。ここに来れなかったのにここからセーフティエリアに行けるとも思わない。これ以上は流石にまずい。
3度目のチャットだ。ここまで待たせてしまって本当に申し訳なくなってくる。
『あの、大変申し上げにくいのですが』
『どうしたの?』
『セーフティエリアを目指したところ、鏡のマネキンの所に辿り着きました』
『なんで?』
『分かりません…………ごめんなさい』
『うん、私がそっち向かうね。ライブラは動かないでおいて』
『はい……』
完全に扱いが迷子である。実際その通りなのだから何も言えないけど。
「あ、見つけた! ライブラ!」
「コスモス……あの、ご迷惑をおかけしました……」
「あのさ、ライブラってもしかしてだけど………………方向音痴?」
「はい……」
「じゃあ離れなければ大丈夫だね! よし、これで問題ない! OK!」
「ありがとうございます。ダンジョン内ではお願いします」
「勿論。なんなら手繋ぐ?」
「なっ?! こ、子供じゃないんですから……」
「ふふっ、冗談! 気にしないで。今はそれより……」
「そうですね、これですよね」
本題はこれだ。このマネキン。傷1つついてない。どうやったらダメージを与えられるのか……
「私が死に戻る間に何か試しました?」
「ううん、一緒にいる時にやった方がいいと思って」
「そうでしたか。まずはもう一度軽く攻撃してみます」
今度は首ではなく腕の辺りを軽く切ってみる。すると……
――シュッ!
「…………っつぅ!」
「だ、大丈夫?!何か分かった?」
ダメージは《治癒・弱》で治しておく。だが、1つだけ気づいた。
「はい、1つだけですが。恐らく、この反射は攻撃ではなくて攻撃の結果を反射してるのではないかと」
「えっとつまり?」
「腕を切ったら腕を切るために刃が出たのではなく、突然腕が切れました。恐らく反射の回避は不可能なんでしょう」
「なるほど……だとしたらどうやって倒そうか」
さて、今私に何が出来るだろうか。どこにどうやって攻撃すれば分からない相手に何をすればいいか……
これはどうだろうか。今使えるスキルで意味を成しそうなのがこれしかないという、苦肉の策でしかないけど。《心の目》!
「ん? どうしたのライブラ……?」
このスキルは生命の位置を探知できるスキル。正確には生命の大まかな形を認識出来るスキルだ。装備や持ち物などは含まない、人の体型が大まかに見えるということ。あくまでぼんやりとした影のように見えるだけだが。
そして、このマネキンを見て気付いてしまった、これは本体では無かったことに。
「ははっ……これは…………」
「ライブラ、本当にどうしたの?」
「コスモス、これは予想以上に大変な相手かもしれないです」
「えっ……?」
確かにマネキンから生命反応があった。だが、それは一部でしかなかった。
本体は博物館の建物の一部となり、ずっと下の方へと続いているようだった。
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