第39話 不可侵領域の片鱗

「そういえば、まだこの目のこと話してませんでしたね」


「さっきあの男達に使ったやつだよね?目の色赤と紫になってるのもそれが理由?」


「はい、《恐怖の瞳》と言いまして、両目で見ると恐怖を与える物なんです。強さは変えられてもオフにすることが出来なかったので……」


「そうだったんだ……どれくらいの強さに出来るの?」


「えっとですね。人相手に使うと、弱いと震えるくらいで、中くらいだと立てなくなって、強だとショック死するくらい、らしいです……」


「凄いね…………見ただけで死ぬんだ。つまりさっきの時は強にしたんだね」


「そうですね。大変なことも多いんですが、便利な時もあるので結構重宝するんですよ、眼帯を付けないといけないのは不満なんですけどね」


「えー? 眼帯も似合ってるよ?」


「そうですか? ふふっ、コスモスにそう言って貰えるなら良いかもしれませんね」



 それから、私達は定期的にセーフティエリアに戻りながら、魔物を倒しに博物館内を巡り、数時間が経過した。


 その間に、秋川さんはLv18に上がったようだった。


「なかなかLv20は遠いね……」


「もしかしたら、上がりにくいLvのラインとかがあるのかもしれないです。私も19から20の時は中々上がるのに時間がかかったので」


「そうなんだ……。これに関しては色々な魔物を倒すしかないのかな」


「塵も積もれば山となると言いますし、少しずつ繰り返せば強くなりますよ」


「うん……そうだね。あ、そうだよ! 強くなるといえば! ライブラが武術をやってたって聞いたときはびっくりしたんだよ。その双剣捌き、スキルじゃなくて実力だったなんて……」


「高校に入るまでは色々習ってましたからね。この双剣も…………こう双刃剣に出来まして、こう! そしてこう! という感じにも使えるんです」


 双刃剣を1本にして、縦や横に何度か振ってみせる。


「凄いかっこいい……ライブラ、こういうのをギャップ萌えって言うんだっけ」


「ギャップ萌え……ですか? ギャップはあるかもしれませんが、萌える要素は無いのでは」


「萌えるの! 綺麗で優しくて、強くてかっこよくて、たまに怖かったりかわいかったり! ライブラはギャップ萌えの塊だもん!」


 どうしよう。何も理解できない。どうして私が萌えるの? なんで?


「あー何も分かってない顔してる。でもいいの、そういう所は私だけが知ってればいいもん」


「そう……ですか? ってあれは……マネキン?」


「へ、何あれ?」


 通路の真ん中に、顔が鏡になっている白いマネキンが置いてあった。


「何あれ、動く気配は無いけど。少し不気味」


「なんでしょう……ちょっと見てみましょう」


 こういうのは《鑑定》するに限る。どれどれ……


□□□□□

不可侵の鏡面人形 Lv.1

HP:1/1 MP:0/0

耐性

火:0 水:0 氷:0 雷:0 風:0 地:0 光:0 闇:0 物理:0

□□□□□


「「えっ?」」


 結果があまりにも奇妙なせいで、2人揃って声が出た。


「どういうこと? おかしくないこれ?」


「そうですよね、どうみてもおかしいです。絶対何かありますよ」


「何もしてこないからスルーしてもいいけど、どうする?」


「HP1なんて初めて見ましたし気になります。出来れば倒してみたいですね」


「そっか、分かった。でもどうするの? 不可侵というからには、攻撃したらどうなるか分かんないけど」


「首の所を狙ってみます。明らかに非生物なので、効くか分かりませんが」


「分かった。サポートはするけど、気を付けてね」


 不可侵……侵害、つまり攻撃を許さないということ。そんなこと言われてしまうと倒してやりたくなってしまう。

 何をするか分からない以上考えようが無いし、一度攻めてみよう。《閃撃》《命刈り》!


 私はマネキンの首に向かって、高速で剣を振り、一太刀を入れた。そして……


 ――ザシュンッッ!!


「ぐぁっ!? ……かはっ……………………」


「ライブラ!?」



 マネキンではなく私の首が切り裂かれ、その後間もなく死亡していた。

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