第31話 遊びの誘い
本当にこれはどこに行けばいいわけ……?
標識に従って目的のホームに進んでいる筈なのに、いつの間にか標識の示す方が向かっている方向と全く違う方になっている。
さっきからすれ違う人に遠巻きに見られてるけど、話しかけて聞くしかないか……
どうにか自力で辿り着けないかと思ったが多分駄目だ。20歳くらいのあの茶髪の女性でいいか。
「あの、すいません」
「えっと何か?」
「東京駅に行く電車のホームってどちらでしょうか?」
「東京駅? 私も行くから良かったらそこまで一緒に行く?」
「ありがとうございます、お願いします」
助かった……これで無事に東京駅までは行けそうだ。
「ねぇ、あなたのその格好って似合ってるけど……趣味?」
「似合ってますか? ありがとうございます。趣味……というのは、どういう意味でしょうか?」
「全身黒で眼帯してるから……中二病なのかなって」
「それは違います! 断じて中二病ではありませんから!」
やっぱりそう見えるかぁ……
「じゃあ何でその格好してるの?」
「服に関しては私の服でこれが1番いい物だからですね。眼帯は必要なのでやむにやまれず……」
「やむにやまれず? 『私のこの漆黒の邪眼を解き放つ……』とか言うためじゃないのね」
「何ですかそれは!」
「それにしてもあなたの目ってどうなってるの? 赤と紫の2色って。キャラメイクでは1色しか選べないよね? 目の色そのものが変わってるからカラコンでも無さそうだし」
「コンタクトレンズってこのゲームにあるんですか?」
「いや、聞いた事ないけど。あと服もどこで手に入れたか気になるんだけど……」
「目も服も秘密です。今話すつもりはありませんから」
「まぁそうよね。情報は秘匿出来たら有利だし、イベントもあるでしょうからね」
「イベント……ですか?」
「あれ見てない? 公式開催のイベント。お知らせに出てたし見てみたらどう? …………あぁ、もうすぐ着くし後にでもみるといいわよ」
「そうします」
「ところで、あなた私と会ったとき、あそこで何してたの? あの先は出入口しか無かったけど」
「えっ…………」
そんな方に向かってたの……方向音痴も程があるでしょう私…………
「…………ってました」
「え?」
「迷ってました! 2回も言わせないで下さい!」
あぁもう何で、私は方向音痴ですなんて声を大にして言ってるんだ!
「ふ……ふふっ、まよっ…………迷ってたのね……ふふふっ……」
「な、何笑ってるんですか!」
ああもう。何で馬鹿正直に話したんだ。
「ふふっ…………はぁ。あなた私より年下だけど立ち振る舞いは大人っぽく見えるし、格好はちょっと変わってるけど。あんな所まで行くくらい迷ってたって思うとね……」
「何が言いたいんです?」
――プシューー…………
「いや…………子供っぽくてかわいいなぁと思って……」
「え、今なんて……?」
「ほら、着いたわよ。降りましょう」
「え、いやあの。今なんて……」
「降りないの? 降り損なってまた迷うことになっても知らないよ?」
「あぁもう行きます、行きますよ!」
はぐらかされた。何なんだもう……
「じゃあ、私はまた乗り換えるけどあなたはどこ行くの?」
「しばらくしたら新幹線に乗ろうかと」
「そう? なら場所はここから見えてるし、問題ないわね? あ、あとここからちょっと行ったところに宝玉あるから、1回登録した方がいいわよ」
「そうなんですか、そうしておきます」
「ええ。それじゃあ、私は行くわ。またね!」
「はい、ありがとうございました」
宝玉か……一応行っておこうか。
これでよし。って、こっちでも見られてるよね……
「ドレスなんてあるんだ……」
「うわ、かわいい……」
「何だ、中二病か?」
よく聞こえないけど、悪くは言われてなさそう……? あと中二病って言ったの誰?それは聞こえてるよ?
それにしてもどうしようか。新幹線に乗るのは明日で良いとして、こっちの方の魔物でも狩りに行こうかな……?
「ねぇ君、君。今暇? ちょっといい?」
「君かわいいね? ちょっと俺達と遊ばない?」
大学生くらいの男2人が話しかけてきた。
うわ何、ナンパか何か? このゲームそういうことは出来ない筈だけど、それにこれルール的に大丈夫? いや、触れてないなら何も起きないってあったね。通報は出来るらしいけど。
「おーい? 無視しないでよー?」
「どう? 俺らと楽しいことして遊んでみない?」
ウザイな。殺してやろうか? うん、そうしよう。ここじゃ出来ないから移動しようか。
「そうですね、遊びましょうか?」
「お? マジ? 行こう行こう」
「いい所知ってるから、一緒についてきて?」
「はい、分かりました」
えぇ、遊びましょうか。まあ、あなた達とじゃなくてあなた達で、だけど。
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