第24話 月影の闇梟

 今日はボス討伐に入ることにする。Lv19から中々上がらなかったし、そろそろボスのやり時なのかもね。

 さて、大講堂、運動用ホール、第一棟屋上だったか。全員倒したいけど……どうだろう。私で倒せるかな?とりあえず大講堂から行ってみよう。



 着いた、って何あれ。


 講堂の舞台上に石の台座があり、そこに赤色の剣が刺さっていた。


「やっぱりここで戦うのかぁ……」

 講堂の筈だが椅子らしき物が無く、段差が幾らかあるだけの扇形の広い空間になっていた。つまりこの地形で戦えということになる。


 ひとまず階段を上り、舞台上の剣に近付く。


 これはどうすればいい訳?《鑑定》……


□□□□□

試練の封印 Lv.1

耐久力:∞/∞

剣を引き抜くことで魔物が現れて試練が開始する。剣と台座は開始と共に消滅し、終了と共に復活する。

※移動不可能

□□□□□


 なるほどね、それなら周回も容易という訳だ。それじゃあ、始めようか。……それっ!



 消えた。そして、舞台下の中央辺りに黒い靄が漂い始め……


「ルォォォォォオオオオル!!!!」


 2,3mくらいの……フクロウね!さて、《鑑定》だ!


□□□□□

月影の闇梟 Lv.26

※詳細鑑定不能※

□□□□□


 なるほど、闇ね。私としては闇には因縁があるし、絶対に勝たせてもらおう。《恐怖の瞳》強!


「ルォォォオオ!!」


 こちらを向いた闇の槍が10本、梟の周りに現れた。


「さぁどれから来る?!」


 ――バシュン!!


 ――バシュン!!



 っ……と。よっ。

 速いね。でも見切れるし避けれる。それじゃあ、こっちも全力で行かせてもらいましょう。《狂風》《跳躍・強》《命刈り》!


 フクロウは飛んでいたがバフとジャンプ力でどうにか届いた。

「せいっ――!」


 首を狙って思い切り切ったが、死なない。もう1回……


「ルォォォオオオオオル!」


「…………え?」


 突然体が重くなり、地面に叩きつけられた。


「……ぐあっっ…………何?」


 異常なスピードで落ちたため、上手く受け身を取れずに体を打ち付けてしまった。


 質量を増やされた?いや、落下速度に質量は関係ない。ということはつまり…………



「重力操作ってことね」


 何をしているのかは分かった。さてどうする。こっちは充分に動けない中、相手は悠々と飛んでいる。

 今も辛うじて回避出来ているが、動きがかなり鈍くなっている。ここまで苦戦させられるとはね……

 《恐怖の瞳》も効いてる様子がなさそうだし、《狂化》使うしか無いかな?

 このままだと攻撃すら当たらないのだから、無理矢理当てに行くしかない。



 ……しょうがない、《狂化》!



 また意識が薄く…………

 あぁ…………でも前よりは鮮明だ。さぁ、反撃と行きましょうかフクロウ?


「ふふふふっ!あはははっ!」



「ルォォォオオ!?」


 

 闇の槍なんて、今の私に当たる訳ないでしょう。

「はぁぁあっ!!」

 フクロウに向かって跳び、羽を切り裂く。


 ――ザシュッ!!


「あはっ、羽が無ければ飛べないでしょう?!」


「ルォォオオ!!」


「へぇ……そんなことも出来るの」



 片方の羽を落としたが、自分の重力を軽くしたのか宙に漂って沈まない。


 普通ならそれで良かったんでしょう?でもね、軽くなったら吹き飛ばしやすくなるのよ!


「死ねっっ!」


 ――ザシュン!!


 私は再びフクロウに向かって跳び、《閃撃》で壁に叩き付けながら、切り裂いた。


「あはっ、残念でした!」


 そして、地に落ちたフクロウの姿が消えていった。


 はぁぁ! 中々楽しめた! 良いようにやってるつもりの相手を叩きのめすのも気持ちいい……



――月影の闇梟を倒しました――

――1760ネイを獲得しました――


「……ふぅ」


 そして《狂化》を解除した。


 うん、MPは結構減ったけど前みたいな頭痛も起きない。それに自意識が前よりはっきりしたまま動けた。

 剣と台座が戻って……アイテムの箱がある。アイテムボックスが正式名称だっけ。


「さて、中身は…………ってこれは?」


□□□□□

淵下の腕輪 Lv.18

耐久力:900/900

HPを消費して物理攻撃を闇属性攻撃に変化させる。継続時間と属性濃度に応じて消費HPは変化する。

□□□□□


 おぉっ……? スキルでは無いけど魔法攻撃手段が手に入ったってことかな? だとしたら僥倖ね。


 どちらにせよ、念願の魔法攻撃手段を手に入れた訳だし、早速次…………はやめとこう。

 《狂化》使ったせいでMPが大変なことになってるのに、今ボスと戦うのは御免こうむる。またセーフティエリアに帰るかな……



 さて、残りは2ヶ所。運動用ホール、第一棟屋上だ。屋上の方は高さに制限がないせいで空に逃げられたら面倒だし、先にホールの方にしよう。


 MP回復薬も残り少ないから自然回復させたいせど、また時間かかるなぁ…………


「あ、ライブラさん!」


「リルさん、こんにちは。お1人ですか?」


「はい、ザラはまだLv上げしたいとのことなので。今は休憩中ですか?」


「そうですね、MPを消費しすぎたので少しでも自然回復させようと」


「ならセーフティエリアにいて正解ですよ! セーフティエリアはHPとMPの自動回復速度が上がってるんですよ」


 そうなのね、知らなかった。


「ログアウトしてもその効果はあるんですかね? それなら出て休憩したいと思ってるんです、そろそろ昼食を食べようかと」


「あ、そうなんですか。効果はあるのでいいと思いますよ?」


「それとリルさん、MP回復薬ってどこで手に入るか分かりますか?」


「MP回復薬ですか……コンビニとかスーパーで売ってますよ?」


「え? コンビニあるんですか?」


「まぁ現実より数少なくなってますけどね。近くの場所もお教えしますよ。あ、何なら私から買いますか? 余ってますし」


「そうですか、お幾らでしょうか?」


「どの店でも1個500ネイ固定ですよ、5個までなら大丈夫なので」


「そうですか、では5個2500ネイでお願いします」


「えっと…………はい! これで大丈夫ですね」


「ありがとうございます。あ、そうでした、このスカーフのことなんですがもう暫く貸して頂けませんか?」


「はい、構いませんよ。あ、私はそろそろ行きますので! ライブラさんもまた!」


「はい、さようなら………………私もログアウトしよう……」

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