第13話 ダンジョン潜入

「はぁ…………やっと着いた」


 距離は1km程度のはずだったんだけど、1時間かかった。決して迷った訳では無い。ただ少々遠回りして、同じ所を何回か行き来しただけだ。迷ってなんかないったらない。


 肝心のダンジョンの外見は見たところただの病院だった。窓から中の様子は伺えないが、5階建ての総合病院らしい。


 どうやらこのゲーム、所有者のいない建物の中身は存在せず、窓から室内を確認することも出来ない。マップの構成方法は衛星写真らしいし、中の再現までは出来るはずもないよね。


 ひとまず駐車場を横切って中に入ると、そこにあったのは広めのロビーだった。


 椅子が並んでて、受付らしい所があって、エレベーターが…………6つ? 多くない?

 というかどうしよう、そもそもダンジョン自体初めてだから、システムが全く分からない。


「こんにちは、もしかしてダンジョンは初めてですか?」


「えっと、はい……」


 スーツを着た女性に話しかけられた。背が高く175cm程あり、見上げる形になって向き合う。


「それでは私から簡単に説明をしましょう。まずダンジョンとは魔物が半無限に出現する空間で、同時に様々なアイテムを入手出来ます。また、ダンジョンには入口から一定範囲セーフティエリアが存在します、ここならロビーですね。ここは外と中から共に魔物が入り込みません。そしてここでは受付カウンターの上にある宝玉、あれに登録すると一時的にリスポーン地点をここに設定出来ます、ダンジョンから出ると解除されますが。それと入手したアイテムは、1度セーフティエリアに戻る前に死亡すると失いますので注意して下さい。まぁ基本はこのくらいですね」


「なるほど、ありがとうございます」


「他のことはボードがありますので、そちらから確認してみて下さい。申し遅れました、私はキャザーと申します。またどこかで会ったらよろしくお願いしますね、それでは」


 ……行っちゃった。とりあえず気になるのはこの宝玉かな、拠点にあるやつと似てるね。《鑑定》。


□□□□□

復活の仮宝玉 Lv.1

耐久力:∞/∞

ダンジョン内で死亡した場合、セーフティエリアに復活場所を設定することが出来る。ダンジョンのエリア外に出ると効果は解除される。

□□□□□


 さっきのキャザーさんの言ってた通りだね。設定しておこう。

 さて、多分このエレベーターからがダンジョン本番なんだろうね。これがボードか、どれどれ……


 施設によくあるような案内板に、以下のようなことが記されていた。


『2~5階層の範囲で自由に階層を選ぶことが出来ます。セーフティエリアはエレベーター内までとなっており、戻る際エレベーターの到着まで時間がかかることがありますのでご注意下さい。

出現敵Lv……2F:10~15,3F:15~20,4F:20~25,5F:25~』


 なるほどね。余裕を持っておかないと待つ間にも殺されかねないぞ、ってことか。

 多少Lvに差があっても勝てるのは今までの経験から分かるし、ここは3階にしようかな。



 定員8人くらいの広さのエレベーターに乗り、「3」のボタンを押す。そのまま少し待っていると、上方にあるモニターにも「3」と表示されて扉が開いた。


 さてここからは気を引き締めて……


「ん? あんた1人か?」


 扉のすぐ前には、正にテンプレなヤンキーという、金髪でピアスを空けた男が立っていた。


「おーい? 聞いてんのか?」


「あぁはい。1人ですけど」


「あー、ここはあんたみたいなのが来るような所じゃねぇぞ。今から引き返して下に戻った方がいいんじゃねぇのか?」


 口悪いなこのヤンキー。そんなこと言われてもね、というかうっとうしいし1発攻撃していいかな。


「おい、先に戻るって言っておいて何絡んでんだお前」


 エレベーターの前でいがみ合っていると、奥の通路からまた別の男がやってくる。こちらは打って変わって黒髪で所謂好青年のような容姿だった。


「あ? こいつが1人で、んなとこに来てっからとっとと引き返せって言ってるだけだわ」


「あー、君。ごめんね、うちの奴が迷惑かけて。こいつ口も頭も悪くてさ」


「おい口はまだしも頭はひでぇだろ」


「まぁこんなやつだからさ。悪気は無いし、気にしないでくれるかな」


 はぁ…………一体なんなんだ。


「まぁ、様子からして《チュートリアル》で警告されてないんだろうし、問題ないんだろうけど。それでもここは君みたいな子には向かなさそうだから、無理なら戻ってもいいと思うよ。そういう訳だから、僕達はお先にね」


 そう言い残すと、男2人はエレベーターに乗って降りていった。


 それにしても、私みたいなのには向かないって、一体何なんだろう。大抵の生き物には耐性あるし、寧ろ何だって来いって感じだけど。


「はてさて、一体何が出るのやら」


 先程の男が歩いて来た通路からダンジョンの奥へと進んで行くことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る