第13話 急展開!柴田の真実
仕事を終えて、柴田翔と待ち合わせる。
「待たせてすみません。」
急いできたのか、少し息が上がっていた。
「全然待ってないから大丈夫。で、どこ行こうか?」
「実は、その、行きたいお店があったので、もう予約してきました。」
「え?やるじゃん!」
まるでデートみたいで小恥ずかしかった。
着いてみると、そこは高級フレンチ料理の店だった。
「ここです。」
「え?待って、待って。恥ずかしながら、私今日そんなにお金持ってないよ?」
「あはは。安心してくださいよ。僕のおごりです。今日は花宮さんのための打ち上げなんですから!」
「さっきは私がおごるって言ったじゃない。」
「じゃあ、また今度の時は花宮さんのおごりでお願いします。」
なんて紳士的な対応だろう。
私はびっくりしてしまった。
柴田家はそんなに金持ちだったのか?
ていうか、"また今度"って、また2人でご飯行くことになっちゃうじゃない!
「花宮さん?緊張してるんですか?早く入りましょうよ。」
「ごめんなさいね、庶民で!」
嫌味ったらしく言ったのに柴田翔は微笑ましそうに笑ってた。
席に着くと、私なんか場違いなんじゃないか、と不安になってくるほど、豪華で高級そうな雰囲気にそわそわしていた。
「花宮さんキョロキョロしすぎですよ。子供みたい。」
柴田翔は私のことをずっとからかうように笑っていた。
やっぱり金持ちなのだろうか、、、、。
「ねぇ、そういえば、柴田はさ、ここにきたことあんの?」
「ありますよ。何度か。」
「何度か?そんなにあるの?」
「まあ、数回。5回くらいかな。」
「え?5回も?」
「何なんですか、さっきから。」
「あ、ごめん、いや、その、柴田んちって金持ちなの?」
「ぷっ。そんなわけ、、、あるかも。」
「へっ?どういうこと?」
「実は親父が某IT会社の社長なんです。」
「え?ええええええー!」
「そんなに驚かないでくださいよ。」
「え?ってことは、、お兄さんが後を継ぐんですか?」
「ちょ、花宮さん。敬語になってるし。声でかいです。」
「ご、ごめんごめん!」
「んー、じゃあ、もう話したかったこと全部言っちゃいます!
兄の柴田尚は花宮さんのことが好きでした。
でも、後に社長になり、社長の奥さんになってもらうのは申し訳ないと思っていたそうです。
花宮さんをとても傷つけたことがある、とも言ってました。その日は、兄も辛くて、自分の好きな人に好きと言えない気持ちが空回って、花宮さんにひどいことを言ったと言っていました。
僕からも謝らせてください。本当にごめんなさい。それと、お願いです。兄の柴田尚と結婚して、社長の奥さんになってください!」
唖然とした。
知らない話ばかりで、意味がわからない。
頭がクラクラする。
しばらく何も言えなかった。
自分がニートになる前のことから、ニート生活の辛かったこととか、今に至るまでの全てが、脳裏に浮かんで、私はなぜあの会社を辞めてまでニートになったのか、とかいろんな疑問が浮かんだ。…こんなこと、柴田尚がちゃんと私に言ってくれてれば、私はこんなに辛い思いはしなくて済んだじゃない!
だんだん怒りに変わってきた。
「…なみやさん!花宮さん!」
「あ、ごめん。ちょっと急すぎて訳わかんなくなっちゃった。とりあえず、食べよっか。」
そのあと二人は一言も話さなかった。
しかし、帰り際になって柴田翔が、もう一度せがんできた。
「柴田尚にあっていただけませんか?」
「…うん。分かった。」
私は今週末に、私がニートになったきっかけをつくった男に再会する。
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