第2話 ニートがバレた

私がニートになったのはなぜだろうか。


私は平凡な子を装ってきたはずだったのに、いつから、崩れてしまったのだろう。




この日は涙が止まらなかった。


自分がわからなかった。




親の期待に応えたい。


そう思って生きてきた。








高3の夏


私は周りが勉強してたから、合わせて勉強してた。そこに特に意志は無かった。


ある日、母親から、


「優姫は頭がいいんだから、もちろん大学行くわよね?お母さん、優姫が国立大学行ってくれたら嬉しいな…」


そう言われて、目が覚めた。


母親が望むように生きてきた私は、もちろん国立大学を目指すようになった。


そして、地元の国立大学に合格した。






4年後、就職した。


就職先は実家からは遠く、一人暮らしを始めた。


会社は5年勤めた。


順調だった…はずだった。






翌日


珍しく、朝に目が覚めた。とは言っても10時半だったが…


そして、珍しく外に出て、散歩をした。








「優姫?」


顔を上げて、見てみると、そこには母がいた。


「な、なんで…?」


「優姫…あなた、やっぱり会社辞めたのね?」


「え…あ、違うの!今日はちょっと体調が悪くて…」


「優姫!」


母は急に私を抱きしめた。


「ごめんね。お母さんのせいよね?」


「違う!違うってば!お母さん誤解してる!私、本当に今日は体調悪くて、休んだだけだって!」


「もう、いいのよ。本当のことを言いなさい。」


優しい声だった。


涙が止まらなかった。




そして、二人で近くのカフェに入った。


「私、お金持ってないや…」


母は申し訳なさそうに笑い、私が払うわ、と言ってくれた。


私はアイスコーヒーを頼み、母はホットコーヒーを頼んだ。


母はいつもホットコーヒーだった。どんなに暑い夏でもだ。


「優姫…お母さんね、お兄ちゃんから聞いたの。」


「そうだったんだ…(あいつめ!)」


「会社…いつ辞めたの?」


「1年前かな。」


「なんで辞めたのか聞いていい?」


「ごめん…まだ整理がついてないの。自分でも分からないの。ただ、何かが苦しかった…辛かったのはわかる…


あ、お母さんは変わってないみたいだね?元気してた?」


「優姫…」


涙が出てた。母も涙が出てた。


「ごめんね…ごめんね…」


私はしゃがれた声で何度も謝った。


「謝るのは私よ。優姫…もう謝らないでちょうだい。」


その日は2人でずっと一緒にいた。


だけど、もう核心に触れるような話はしなかった。


そして、翌日の朝、母はメモを置いて、帰っていった。

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