第26話 1日中寝ていた人がいるらしい
《研究棟アルファ専用検査室》
「知らない天井だ。」
俺は今研究棟の検査室にいる。あの戦いの後気絶し1日中寝ていたらしい。目が覚めると検査の為この研究棟にある検査室に運ばれた。
「ヒサシ先輩、検査は終わりです。やっぱり魔力枯渇による意識障害で脳や体には異常ありませんでしたよ。」
「ありがとうアルファ。」
この検査室の主であるアルファが検査結果を見ながら話しかけてくる。
「なあ、あの後みんなどうなったんだ?」
「うーん、そうですね。
まず【クレア・グリーンフィールド】。あの鎌の女の子ですが違法入国で戸籍もなく、しかもアメリカの実験施設でモルモットにされていたらしく情状酌量の余地があるとして、とりあえず天王山学園に入学させて様子観察みたいです。」
「そうなのか、無事でよかったな。」
「本人はいたって元気でしたよ。世間知らずで勉強もしてきていなかったらしくて馴染めればいいですけどね。
そして今回のバットマン側の主犯格の1人、ヒサシ先輩と戦った男は名前は土浦コウと言います。彼は逃げた先の海運ターミナル付近で死んでいるのが発見されました。」
「なに!まさか、、、」
「いえ、先輩のせいではなく。刃物らしきもので一刀両断されていました。どうやら誰かにやられたらしいのですが犯人はわかっていません。」
「そうか、口封じか。」
ベヒーモスを上手くコントロールできてはいなかったが同じ使役士として互角に戦った相手、出会い方が違っていたら、いい関係を築けたかもしれない。
「他のバットマン幹部達は地方の更生施設行きみたいです。少年院は異能力者が入れない為、余罪のレベルでそれぞれ分けられるでしょう。」
「ひまわりの姉さんは?」
「はい、轟イバラも主犯格の1人として東京の第一更生施設行きが決定しました。彼女も洗脳の跡があり負の感情に付け込まれた様子があります。バットマンの情報は記憶の混濁により上手く話せないようで、多分あの黒幕が何か細工していたのでしょう。」
「なるほどな、ひまわりはちゃんと話せただろうか?」
「それは本人に聞いてみたらどうですか?」
「えっ?」
アルファが顔で指す方向に轟が立っている。彼女は深いお辞儀をこちらに向かって来た。
アルファは俺達2人を談話室に案内していなくなる。2人きりの空間でお互い黙ったままだったので、こちらから話しかけた。
「体は大丈夫なのか?」
「あっ、うん。私達はみんな比較的軽傷だったよ。1番酷いのはヒサシ君。ごめんね本当は私がやらなきゃダメだったのに。」
「そんな事ないさ。俺の力不足だ。心配かけたな。」
「私達の問題にみんなを巻き込んじゃって、死んだ人も出たみたいだし、ほんと何やってんだろって感じ。」
轟は辛そうな顔をしながら話を続ける。
「お姉ちゃんと話す事ができたの。そこでお互い思ってた事を話し合った。」
《ひまわり回想》
イバラはベット上で横になっており、傍らにはひまわりがいる。
「結局私は嫉妬していたのよ。勉強も異能力も人柄も私より優秀で、ケンに愛されていたあなたに。」
「でもケンは私を庇って死んだから、、」
「あの人はそういう人だった。だからひまわり、あなたも生徒会に入ったんでしょ。ケンの意志を継ぐ為に。私は前を見ずに全てをあなたのせいにして、、、」
イバラの目から涙が溢れてくる。それを見たひまわりも涙が止まらない。
「お姉ちゃん、、、」
「ダメな姉だわ。でもケンの事を考えると、あなたへの負の感情が抑えられなくなって、本当にごめんなさい。」
「私!ケンみたいに生徒会で人を助けていくから!異能力で苦しんだり悩んだりしている人達を1人でも助ける為に。あの人が生きていたらそうしたと思うから。」
「ひまわり、、」
「だからお姉ちゃんも諦めないて、今度は一緒に異能力で人を助けよう。」
「ありがとう、、、ひまわり、、。」
2人は手を取り合いながら涙する。その間にはもう溝なんて感じられなかった。
しばらくして泣き止んだイバラがひまわりに尋ねる。
「ひまわりの友達にもお礼を言わなきゃね。最後の方は操られていて動かなかったけど、頑張ってくれていたのはわかったから。」
「うん、お姉ちゃんに紹介するよ。」
「そういえば、あのリンドと戦っていた男の子。どこかケンに似ている感じだったけど、、もしかして?」
「そ、そんなんじゃないよ!!」
ひまわりは顔を真っ赤にして否定する。イバラはその様子を微笑ましく見る。
「彼は優しくて面倒見はいいけど、どこか人に心を開いていない所があるの。私が信頼されてないだけかもしれないけど。いつか必要とされた時には絶対力になってあげたいとは思ってるよ。」
「私の自慢の妹なら大丈夫よ。」
「ありがとうお姉ちゃん。」
《ひまわり回想終了》
ひまわりからお姉さんとのやりとりを大まかに聞かせてもらった。2人の中にあった大きなわだかまりが消えているようだ。お互い手を取り合い助け合う日も遠くはないだろう。
その後は戦いの後にあったダイハチのやらかしや、ムネノリとチヨを冷やかした事など他愛のない話を続けて帰路に着いた。アルファに礼を言いたかったが呼んでも出てこなかったので端末で連絡を送っておこう。
今回の戦いでも自分の力不足を感じた。爺ちゃんを殺した相手に出会っても負けないように、もっともっと強くなっていかなくてはならない。
そう誰にも負けない最強の存在を目指して、、。
《研究棟棟アルファ専用検査室》
アルファはヒサシとイバラの検査結果と他の生徒達との検査結果を見比べてみる。苦々しい顔をしながらボソリと呟いた。
「異能力を使い続ける事のデメリットか。もっと詳しく研究する必要がありそうね、、、」
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