きたれ、学園バトルファンタジー世界へ

めんたいこ太郎

第一章 入学〜大世門突入編

第0話 始まりの日

「爺ちゃん?この子達は?」


「ヒサシよ、この世界には世間の奴らが知らん不思議な生き物が沢山おるんじゃ。」

(きゃーー、なになに?源の子供?可愛い♡♡)

(いや、爺ちゃんという事はゲン様の子供の子供さんではないですか?)

(小さい人間初めて見た。)


 まだ5歳の俺の周りには、手のひらサイズの妖精や喋る狼、周りを浮いて佇むクラゲなど、どの図鑑にも載っていない生物達が集まっていた。


「お前はコイツらと仲良くしてあげてくれ」


 そう言って爺ちゃんは俺の頭を撫で回し笑顔で微笑んだ。

 それが不思議なコイツらとの初めての出会いだった。



《3年後:東京郊外》


「爺ちゃーーん、ただいまーー!」


「おーう、おかえりー。」


 8歳になった少年【天城ヒサシ】は地元の小学校から帰ると一目散にある場所へ向かう。


 ここは猟師である祖父が長年住んでいる山である。ヒサシが向かう場所はその麓に建てられた神社、、、ではなく、その中の地下にある大きな扉である。


 ヒサシがその扉に手をかざすと、扉は開くことなく彼の体だけがすり抜けていく。


「みんなー、きたよーー!」


 そこは外の世界とは変わらない深い森の中。ただ少し違うのは、そこにいる生物達が見たことのない姿をしているという点であった。


(私の可愛いヒサシーー♡♡)


 少年の呼び掛けに対してすぐに駆けつけたのは彼の顔くらいの大きさの少女であった。


「フィア、顔に抱きついたら痛いよぉ。」

(へへへ、ごめんごめん。)


 【フィア】と呼ばれた少女は舌を出しながら謝った。背中にある小さな羽根を羽ばたかせながら、ヒサシの頭の上へと座る。


(今日は何するの?)

「今日はフーバと空の散歩だよ。」

(そうですよフィア、今日は私と約束があるのです。)


 そう言って後ろから炎を纏った大きな鳥が空から現れる。

(私も一緒に行くー。いいでしょフーバ。)

(全くしょうがないですなぁ。)


「フーバ、早く行こうよ!」


 ヒサシに急かされ【フーバ】と呼ばれた大きな火の鳥は少年を背中に乗せ、空へ飛び上がる。


「うわぁ、やっぱりすごいなあ」


 ヒサシの目の前には自分が住んでいる世界とは大きく違う大自然が目の前に広がっている。


 海はエメラルドに輝き、その横には数分おきに噴火している火山、黄金に輝くピラミッドの周りには虹色のオーロラが見える。


「すごいな魔界は、やっぱりここに住みたい!」

(そうだよヒサシ、ずっとここにいなよ。)

(ダメですよヒサシ様。ヒサシ様の世界とこの魔界は決して交わってはいけないのです。あなたのお爺さまが守ってきた、均衡を崩してはなりませんよ。)


 ヒサシとフィアはフーバに対してケチなどとブーイングをしてながら、空中散歩を続けている。


「でもな、向こうの学校じゃみんなのこと話せないし、隠し事してるってマオはすぐ怒るし、楽しくないもんなー。」

(ねぇマオって誰?)

「うわ!!びっくりした!」


 ヒサシの後ろに突然、青みがかった半透明のクラゲが現れる。


「クモリ!どうしたの?驚かせないでよ」

(ヒサシちゃん、ゲンちゃんが呼んでるわ、、)


【クモリ】と呼ばれたクラゲは祖父である【天城ゲン】が呼んでいることを知らせに来てくれたようだ。


「ありがとクモリ、フーバ戻ろうか」

(はい)


 小一時間ほどの空中散歩を楽しみ、魔界へ入ってきた場所に戻ろうとフーバは滑空を始める。


「うん?あっちで何か光って、、、」

(あぶない!!)

キュイーーーーン!ズガガン!!


 その瞬間、ヒサシ達を目掛けて赤色の光線が飛んでくる。その光線から彼らを守る為クモリが体をめいいっぱい広げて盾になった。


「クモリ!!」

(何!?今の!!)(まさかあれは!?)


 光線を一身に浴びたクモリは黒焦げになりながら森の方へと落下していき粒子となり消えていった。


「フーバ!クモリが!」

(大丈夫です。彼女の防御力ならゲン様の元に戻っただけです。それより、、、!?)

(また、くるよフーバ!)


 火山の奥から無数の光が輝き、今度は大量の光線がヒサシ達を狙い打ち放たれる。


(しっかり掴まってください。)


 その光線をギリギリで避けながら、フーバは扉のある場所へと向かう。フィアも風の砲弾を放ちながら光線を防いでいるが当たるのも時間の問題である。


「現れよ、岩ノ精アムド。ヒサシを守れ!」

(オオオオオオオオオオオ)


 ヒサシ達と光線との間に20メートル級の巨大な岩の巨人が現れる。その上には天城ゲンが立っている姿を見て、ヒサシは笑顔を見せる。


「爺ちゃん!」

「フーバ早く、ヒサシを扉まで連れて行け!」

(はい、わかりました!)


 ゲンからの命令にフーバは最大速度で扉へと向かう。ゲンは遠ざかるヒサシ達を見て優しく微笑み、未だ光線を打ち続ける存在に鋭い眼光を浴びせる。




「フーバ、フィア!爺ちゃんが!」

(ヒサシは扉から出て行く、ゲンが帰ってくるのを待ってて、一緒にいたいけど私達はここから出れないから。)

(私達も直ぐにゲン様の元へ行きます。心配せずに戻られて下さい。)


 そう言われて彼らに扉の向こうへ押しやられる。戻ってきたのは何もなかったような平穏な現世。


「どうしよ、どうしよ」


ヒサシは一度地上に出て、神社の周りを走り回る。


「魚屋のおいちゃん?ケーサツ?先生?誰に助けを?」


その時ヒサシは祖父に言われた事を思い出す。


「ヒサシ、この世界やコイツらの事を他の人に言ったらいかんぞ。向こうの世界で何かあった時は必ず帰ってくるから大人しく待っとるんじゃ。」


「わかった、爺ちゃん俺待ってる。」


 祖父からの言葉を思い出し、そのまま2人で住む家へと帰る。家へ入るといい匂いがする。その方向へ進むとそこにはヒサシの大好きなゲン特製の猟師鍋が作られていた。


「爺ちゃん、早く、、」


 ヒサシは泣きそうにながら居間で座って祖父の帰りを待つ。


 しかしいつまで経っても帰ってくる気配がない。ヒサシはソワソワしながらも鍋は食べずに待っている。少しでも普段の生活をしようと宿題をしてみたりお風呂に入ってみたりするが祖父が戻る気配がない。


「爺ちゃん、、」

ぐぅーーーー。


 お腹が鳴っているが鍋は火の消えたコンロの上に置いたままである。畳の上で待つも自然と瞼が落ちてくる。普段なら寝ている時間であるが祖父を待とうと懸命に起きようとしている、、、が。


「...zzz。はっ!」


 気づいたら寝てしまっていたヒサシは時計を確認する。2022年2月2日AM2:01。正直よくわからなかったがすごく寝てしまったのは、わかった。


「爺ちゃん、帰ってきた?」


シーンとした家。人の気配はない。


「爺ちゃん、爺ちゃん、、涙」


涙を流しながら祖父を探す、、


真っ暗闇の中神社の扉へと走っていく、、


祖父に会いたいその一心で、、


気づいたらあの扉の前へ立っていた。


「みんなぁ」


扉へ触れようとした瞬間、ヒサシは異変に気づく。


「扉が、、、」


少しだけではあるが扉が開いているのだ。


 今まで開いていた事の無い扉が開いている。

そこ知れぬ恐怖を感じながらヒサシは手をかざそうとする。震える手と目を腫らした顔で考えるのは、いつものように楽しみでこの扉の先へ行く感覚とはまるで違う。


何か最悪な結果が待っているような、、


「やっと来てくれた」



 いつもは開くはずの無い扉が完全に開いた時、この世界と魔界は混じり合い、今までの常識が全て覆されてしまった。


 世界は知ってしまったのだ。

 魔界という概念、魔物という存在、魔力という新たな力。そこから怒涛のように世界は変化していく。


この日の出来事を世界は

2022年2月22日AM2:22に起こった世界改変の日【JAPANインパクト】と呼んだ。


 しかし世界を変えるきっかけとなった少年にとって、その日はかけがえのない人を失った日でもあった。

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