装備の心 ~ユニークスキル【装備の心】を得た少年は夢を見て最強となる~
ショー
第1話 幼い頃の記憶
それは、主人公マルクがまだ幼かった時の話。
◆
「なぁ、マルク。お前は将来何になりたい?」
僕の頭に手を置いて、そう問いかけてくる
「お父さんみたいな強くてカッコよくて! とにかくすごい冒険者? になりたい!」
「そうかそうか。お父さんみたいになりたいのか。嬉しいぞ?」
くすくすと笑いながら僕の頭を撫でてくれる。その手はとても暖かくて、そして、力強くて。
いつまでもその感覚に浸っておきたいと思った。
「マルク、お父さんみたいになるのはなかなか簡単じゃあないんだぞ?」
「そうなの?」
「あぁ、そうだ。例えば、今のマルクより大きなこの剣を振って、魔物と戦わなきゃならない」
そう言って僕に見せてくれた素振りは洗練されていて美しかった。たった一度の素振り。それだけで一級品。芸術の様だった。
「マルクは俺の息子だ。マルク、お前には特別な力がある。だが、それを誰の為に使うかを決めるのはお前自身だ。今言ったことはまだ理解できないかもしれないが、いずれ分かる時が来る。もし、その力を人の為に使いたいと思ったのなら冒険者になれ」
「じゃあ冒険者になる! 僕人の役に立つよ!」
「はははっ。もう理解したのか! 賢いなぁ。お前は」
その時、僕はお父さんの言っていることは何一つ理解していなかった。ただ、お父さんのような冒険者に成りたいその一心だった。お父さんも僕が何も理解していないことなんて分かっていただろう。その上で、僕の頭を撫でてくれた。
「よし、そんなマルクに剣を一振りやる。お父さんの大切な剣だ。大切に扱えよ?」
見た目は素朴な一振りの剣。鞘は過度な装飾が為されていないが、大事に磨かれていることが分かる。名工によって打たれた至高の逸品。僕はその価値を一つも理解していなかった。だけど、お父さんが僕に託してくれた、それだけで僕にとっては大切な宝物だった。
「うん! ありがとう! お父さん! 大事にする」
「おうおう! じゃあ、いつもみたいに素振りするか?」
「うん!」
僕は小さな木の剣を握って、お父さんの背中を追いかけた。
◆
僕はマルク。10歳。小さな村の出身だ。
僕のお父さんは有名な冒険者で、僕が小さい頃にダンジョンに行ったきり、帰ってこなかった。
僕は夢でしかお父さんと会えない。見るのはいつも同じ夢。夢の中のお父さんは僕に笑いかけて頭を撫でてくれる。僕は夢じゃなくて僕の幼い頃の記憶だと思っている。だって、夢の中でお父さんに渡された剣はずっと僕の部屋にあるのだから。
今日は神官様が村へと訪れて僕達を鑑定しに来る日。
この世界では誰しもが神から与えられたスキルを持っていると言われていて、神官様だけが人のスキルを発現させて、その者にスキルを授けることが出来る。
優秀なスキルを授かった人達は、王都の学校に行くことになっていて、将来有望。
そんな年に一度のイベントで、村も賑わっていた。
「おーい! マルク! お前も早くこいよ! 神官様が来たってよ!」
僕を呼ぶのはクリス。僕の幼馴染だ。小さい頃から家族ぐるみで仲が良く、僕とクリスも一緒になることが多かった。いつも二人で模擬戦をやったものだ。
家の外に出ると、いつもの顔があった。
僕とクリス、ミシェルは幼馴染だった。
ミシェルは僕達が5歳の時にこの村に越してきた家族の子だった。村で孤立してたミシェルを僕とクリス、主にクリスが中心になって仲良くなった。
「遅いですよ、マルク。私達はマルクがどんなスキルを授かるのかってワクワクしているというのに」
「僕はどんなスキルでもいいよ。僕は冒険者になる」
「マルクが冒険者になるなら俺もなるぜ! 冒険者にな!」
「二人がやるというなら私もやります! 三人でパーティーです!」
こんな風に僕に過度な期待をしてくるのがいつもだ。流石に慣れた。
確かに模擬戦では勝ってるけど、それ以外のリーダーシップなんかはクリスの方があると思う。ミシェルは僕より頭が良いし......
「お前らー! 鑑定が始まるぞ! 早く集まれー!」
クリスのお父さんから声がかかる。
僕はどんなスキルを授かってもいい。そのスキルが僕にとって力になってくれる。
夢の中のお父さんは、僕には特別な力があると言っていた。
どんなスキルでも、僕はお父さんの様な冒険者になる。
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