今までまったくモテなかった俺は素敵なパートナーと魔王が造った魔道具を収集する旅に出ます
ヘントウカイバ
第1話 女神からの依頼
「魔王が造った魔道具を探し出してほしいのです」
目の前の美女が言った。
美女の名はイザベル。本人は神だと言っている。
魔王とか、神とか、今日の夢はファンタジーという設定らしい。
俺は今、白っぽい光があふれた空間にいる。足の裏は地面を感じないのでフワフワと浮いているのだろう。
「人や物を見つけるのはお得意ですよね」
イザベルが続ける。
「まあ、一応、探偵業をしていますからね」
俺の名前は田川隆一。23歳独身だ。言った通り、探偵をしている。
探偵なので不倫調査や不倫相手の尾行もするが、人探しや物探しの依頼もこなす。
実はこちらの方が得意で、業界では「探し屋リュウイチ」と呼ばれていたりする。
「特殊な能力をお持ちですよね」
そう、俺には超能力とも言える人探し・物探しの力がある。
探す対象の写真や関係した物品などを手に取ると、過去から現在までの対象のイメージが頭の中に現れるのだ。
イメージには探す対象が存在する場所の情報も含まれているため、それを元に調査を進めると、たいていの場合で対象の居場所や在りかを突き止めることができた。
「その能力を使って、魔道具を見つけてもらいたいのです」
「報酬さえしっかりいただければ、お引き受けしますよ」
俺は十分な報酬さえもらえれば、依頼された仕事は断らない主義だ。
そもそも探偵業は不安定な職業で、稼げるときにしっかり稼いでおかないと、バラ色の老後生活を送ることなんてできやしない。
若いうちにしっかり稼いだら、さっさと引退して、悠々自適の生活を送ろうといつも思っている。
そうしたら、お嫁さんになってくれるかわいい女の子を探すのだ。
今まで全然モテなかった俺だが、頑張れば一人くらい結婚してくれる女性に巡り合えるはずだ。
「報酬は10億円分の金塊でいかがでしょうか?」
お~!さすがに俺の夢だ!10億円って、すごいじゃないか!
リアルなら、これですぐに引退できるぜ!
「それで十分ですよ!私の能力で、お望みの物を探し出して見せましょう!」
喜んで依頼を引き受けた。
こんなうまい話を断る理由なんて、リアルでもあり得ない!
「本当ですか!約束ですよ!後で断ることは許されませんからね!」
と言いながら、イザベルはずいっと体を俺に近づけてきた。
美人だと思っていたが、近くで見ると透き通るような白い肌に美しい金髪、そして大きな金色の目をした絶世の美女と言っても良い美しさだ。
身体はゆったりとした白い布で覆われているが、よく見ると出るところはしっかりと出て、引っ込むところはしっかりと引っ込んだ抜群のスタイルだということがわかる。さすが女神だね。
お嫁さんにするなら、こんな女性がいいなぁ。
こんな美人に出会えただけでも今回の夢は最高だなぁと嬉しくなってしまう。
「快諾をいただいところで、詳しい話をしていきますね」
イザベルによると、6年ほど前に勇者パーティが魔王を討伐したのだが、最近になって勇者の仲間が魔王の魔力が宿った強力な魔道具を見つけたというのだ。
そこで、勇者が幽閉されている魔王軍の元幹部を尋問したところ、魔王が残した魔道具の存在が明らかになったのだ。
「魔王の魔道具は人の魂を吸い取って成長する性質があるらしいのです。このまま放っておくと、どのような災厄をまき散らすか分かりません。それを防ぐために、あなたには魔王の魔道具を残らず集めてほしいのです」
イザベル自身が探せば良いんじゃないですかと言ってみたが、天上界の決まりがあって、神や天使が地上の物事に直接手を下すことができないそうだ。
また、「勇者たちは脳筋ですからね。戦うのは得意ですが、物探しの能力は皆無なのです!」とのことで、勇者たちも使い物にならないらしい。
「まあ、先ほど申し上げたように、報酬さえしっかりいただければ、喜んで引き受けさせていただきますよ」
今日の夢はかなりリアルだなと思いながら、さらに話を続ける。
「転生時に使用してもらう体として、リュウという21歳の男性を用意しています」
イザベルによると、リュウという男がもうすぐイノシシに似た魔獣に殺されることになっているらしい。彼の魂が抜けた後、体を修復して俺の魂を入れるということだ。なんでも神は、人間の生き死にと、成人や結婚といった人生の節目の時にのみ、人に対して力を発揮できるということだ。
ちなみに、魂が入れ替わっても、リュウが持っていた知識や能力はそのまま使えるらしい。
「もともとリュウが持っていた火魔法と剣術のランクを上げておきますね。それと、魔王の魔道具を取り扱えるようにAランクの闇魔法と、Aランクの収納ギフトを付与します。大盤振る舞いです!」
闇魔法というのが気になったので、質問してみる。
イザベルよると、闇魔法は精神や魂に作用する魔法で、自分や他人の精神と魂を闇魔法で防御することで、魔道具の魔力の影響を食い止めることができるらしい。
それならばと言うことで、Aランクの闇魔法をもらうはずだったところを、強引にお願いしてSランクにしてもらった。イザベルはかなり渋っていたが、しつこくお願いを続けていたら最後には承諾してくれた。
魔王の魔道具なんてどれだけ強力かわからないからな。できる限りの対策をしておくのが無難と思うのだ。俺は小心者なので、安全第一がポリシーなのだ。
「ところで、魔道具を集める時の方法などは私にまかせもらえるのでしょうか?」
これも重要なポイントだ。後からやり方が気に食わないと言われても困るからな。
「もちろんです。あなたの思った通りに行動してもらって大丈夫です。魔王の魔道具させ全部集められれば、手段は問いません」
「それはやりやすくて良かったです。それでは自由にさせていただきますね」
口約束とは言え、契約は契約だからな。これで自由に行動できると言うわけだ。
「なお、異世界で仕事していただくわけですから、できる限りのサポートはさせていただきます。転生以降は私があなたに直接関わることはできませんので、代わりにあなたの活動を補佐するパートナーを用意させていただきました」
パートナーという言葉に少し興奮するが、「楽しみにしていてくださいね」と言うだけで詳しくは教えてもらえなかった。
こうして俺はリュウとして異世界に転生することになったのだが、果たしてこれは夢なのだろうか?
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