第4話 実力テスト
引退に関する話は一旦置いておいて、もう少し話し合うことになった。カフェから場所を移動して、タクシーに乗り込む。そして俺たちは、とあるビルまで来た。
「こちらです」
「ここが、オフラインの練習ルームですか?」
「はい。どうぞ、中に入って」
階段を上がって、3階の扉には無機質な扉があった。先導している中西さんに扉を開けてもらって部屋の中に入った。
そこには、ずらりとパソコンのモニターが並んでいた。そしてマウスとキーボードに、ゲーミングチェア。PCゲームをプレイするための一式が揃っている。
その他に、大きなテレビにゲーム機が置いてある。古いものから新しいものまで、全て揃っているようだ。近くの棚に、ゲームソフトが大量に並べられている。まるでゲームショップのようだ。
それを見るだけで、テンションが上がる。ゲーマーにとって興奮する場所だ。
「これは凄い」
「こっちが最新鋭で高性能なパソコンで、奥にあるのが大会用にカスタマイズされたパソコンになります」
チームセブンに所属するメンバーは、ここで自由に練習が出来るらしい。羨ましい環境だ。
今も、奥に一人の少年がゲームをプレイしている最中のようだ。部屋に入ってきた俺たちを見て、すぐに視線をモニターに戻していた。
「彼は、チームセブンに所属する
「ああ、大丈夫ですよ。そのままゲームに集中させてあげて下さい」
「そうですか」
わざわざ練習を止めて挨拶させるなんて必要ないだろう。邪魔をしたくないので、中西さんを止める。
そして、この練習ルームに来た目的を果たそう。
「それじゃあ申し訳ないのですが、グラスホッパーさんの実力を確認させてもらってもよろしいですか?」
「はい、もちろん」
最新鋭のパソコンを使わせてもらって、実際にプレイしてゲーマーとしての実力を証明する。
いつも使用しているパソコンじゃない。キーボードやマウス、チェアも違っているので違和感がすごい。だけど言い訳にはしない。この環境でも普段の実力を発揮してみせる。
自分のアカウントでゲームにログインして、1試合やってみる。中西さんに見られながら。
観客が居ても緊張しない。ゲームセンターなどで遊ぶことも多い。その時に見られながらプレイすることがあるから。それに、野球の試合で見られることに慣れているからだろう。あまり後ろは気にならない。すぐゲームに集中することが出来た。
5対5で勝負するFPSゲーム。銃や必殺技など使って戦いながら爆弾を設置して、爆破に成功したら勝ち。設置した爆弾を解除されるか、全滅させられたら負けというルールだ。途中で攻守を交代して、何度か繰り返して戦っていく。
「おぉ!」
ぶっつけ本番で、ランキングの絡まないカジュアルな試合に乱入する。チャットやボイス無しでプレイの動きだけで、偶然マッチングした仲間達と意思疎通する。
どう戦うのか、他のプレイヤーの動きを予想して。そして、敵がどのような作戦で攻めて来るのか考えて対処する。
「うわ! 今の、当てるの! 凄すぎるっ!」
理想通りに敵を倒せた。敵を狙って当てる、エイムも安定している。感嘆の声を背中に感じながら、試合に集中した。
「あ、もう終わった」
「はい、終わりました。もう一戦、しましょうか?」
「いやいや、上瀬さんの実力は十分に理解できましたよ。いやぁ、本当に凄い!」
とりあえず、実力は示せたようだ。中西さんの反応も良い感じ。
「ねぇ、おっさん。次は俺と対戦してよ」
「え?」
突然、少年が勝負を仕掛けてきた。先程、奥のパソコンで練習していた少年だ。
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