第47話 カレンの話

 資料の山はコンテナに積まれてガーゴイルたちが運ぶことになった。残り部隊もメイたちとクレイゴーレム以外はガーゴイルで輸送されていき残りはメイの輸送車両で帰還する。

「おかえり、みんな。それと初めまして、ようこそ俺のダンジョンへ。」

 もう大丈夫だと自分の足で降りてきたカレンに挨拶する。

「本当に人間がダンジョンマスターをやっているんですね。それと助けてくださってありがとうございます。」

 カレンは話には聞いていてもやはり人間がダンジョンマスターだというのは不思議なようで少し戸惑った様子だった。

「いろいろ聞きたいことはあるけどまずはゆっくり体力を回復させてからかな。じゃあ、レイナ。その子任せた。」

 俺らがどうこうするよりも知り合いのレイナが近くにいた方が彼女も安心するだろうと思い、レイナに任せることにする。

「お風呂、先もらうわよ。」

レイナはカレンを風呂に連れてった。まあ監禁されてたんだから最初に風呂は当然だよね。


 残された俺たちは旧都から持ち帰った資料たちの整理に入った。メイの希望により隠し部屋を新たに制作しそこを資料室とすることになった。そのメイは本棚を制作中だ。

「しかし、本当にたくさん持って帰ってきたな。」

持ち帰られた本をジャンルごとに分けながらつぶやく。

「苦労して持ち帰ったんだからなんか役に立ってくれないと困るわよ。」

ヴァンパイアの言うことはもちろんだがいつ王国が攻めてくるかわからない以上、全てに目を通す時間は無いかもしれない。

「あっ、これ。水魔法の農作への活用の有効性に関する論文です。確か、前国王の政策で水魔法は農地で使われるよおうになったはずなので、その時の資料ですかね。」

 神様は大司教という立場で長年にわたり社会を裏から支えてきたようなので、これを元に前国王に助言を行ったのだろう。

「こっちは戦果を挙げた平民に対する爵位の授与についてです。これも前国王の行った改革の資料ですね。こちらは現国王の代になって廃止されてしまいましたが。」

 ニーナが見てる資料はどれも平民たちを豊かにする手助けするための資料だ。これらの資料だけで平民たちの生活を改善するために尽力したのが伝わってくる。

「こっちは魂関与に関する魔法の研究に霊体化状態の敵への対処法って、神様は幽霊とでも戦うつもりだったのかしら。」

ヴァンパイアが見ているのは魔法研究に関する資料らしい。

「俺の方は市場経済の資料だな。農作物ごとに価格の変動がどう起こっているかをまとめてある。」

 俺とニーナの資料のところにある資料は国を発展させるための資料だったがヴァンパイアのところの資料はどう国のために役に立つかわからない。その後、もうちょい資料を漁ったら魔物絶滅に対する対策資料なども出てきたので人間以外の種族のバランスもコントロールしていたようだ。

 そうこうしているとレイナたちがお風呂から出てきた。



 レイナたちが風呂から出てきた後、他のメンバーも順番に風呂に入り夕食になった。夕食後、カレンが話があるというのでみんなで集まる。

「レイナさんがラッセルさんやジェームズさんに追われていた時、わたしは何が何だかわかりませんでした。」

 旧都のダンジョンを攻略後、ヒーラーであるカレンは負傷した人たちを癒やすため絵矢の奥までは行かず、入り口まで戻ったらしい。旧都の攻略には勇者パーティだけでなく王国騎士団も導入されたらしく、そちらで回復が足りなくなったようだ。そのことはレイナも認めている。

「二人はなんて説明したの?」

「レイナさんが裏切ったと。魔王の秘宝を盗んだと言っていました。」

 カレンは二人のその説明に疑問を持ったため、個人でいろいろ調べてみることにしたようだ。

「調べてみるとジェームズさんが王城のどこかによく消えてるのがわかりましたがどこに行っているのかはしばらくわかりませんでした。10日ほど前でしょうか。監禁されていたのでそれくらいとしかわからないのですが、あまりにも挙動不審で落ち着かない様子のジェームズさんを見つけて後をつけたんです。そうすると王城の地下に通じる隠し通路に入っていくのが見えました。」

カレンはそこで一旦、言葉を切る。

「地下に入って見るとジェームズさんが誰かとしゃべってる声が聞こえて覗いてみると王女様がいました。しばらく見ていると二人にサキュバスが近づいてきて危ないと思ってわたしがサキュバスに攻撃したら二人がわたしを取り押さえに来て何が何だかわからなくて、気がついたらあの場所にいました。」

あの場所っていうのがあの牢屋か。きっと気絶させられてその間に運ばれたのだろう。

「王女が関与しているのか。何か話の内容は聞き取れたか?」

俺は手がかりを探すつもりで質問し覚えてる範囲で構わないと付け足す。

「わかりませんがジェームズさんが王女様のことを魔王様と呼んでいたような気がします。」

黒幕は王女だったってことになるのか?そうすると国王は操られてるだけなのだろうか。少なくともその地下空間に何かあるということになる。その地下空間には行ってみないといけないな。

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