第35話 ヴァンパイア

「ヴァンパイア対策って何をやればいいんだ?」

これが最大の問題だ。ヴァンパイアとは不死の怪物だ。倒せるなら封印なんて中途半端な手段は取らない。

「いろいろ伝承はある。太陽の光に弱いから昼は外に出ないとかニンニクが嫌いとか。あとヴァンパイアもアンデッドだから浄化とかの聖魔法には弱い。昔はそれで追い詰めたらしい。」

こっちの世界にもその設定があるのか。しかし、聖魔法なんて誰も使えない。聖水とか十字架とか有名だけど俺には信仰心無いしな。

「俺の世界の伝承だと心臓に杭を打ち込めば死ぬってあったな。向こうは存在そのものが伝承だから本当か知らんけど。」

「あんたよく知ってるわね。」

「いや、結構有名だろ。」

ヴァンパイアが出てくる作品では定番の対処法の1つだと思うけど。

「ヴァンパイアが出てくるような作品見ないのよね。」

そういえばこいつホラー苦手だったか。

「まあ、こっちでそれを試すのも怖いし別の作戦を考えよう。」

不確定の話を掘り進めても仕方ない。結局、わからないんだから。

「ここはわたしが催眠術で眠らせるコン。それで解決コン。」

自分ならやれるとテンカが立候補する。

「でも、向こうも催眠術使ってきますよ。先に当てる自信がありますか?」

エルフに問い詰められる。ヴァンパイアも催眠術は持ってるらしい。となるとどっちが速く打てるかか。

「も、もちろんコン。」

そこで言いよどんだら信用できないって。信じたいけど。

「というかヴァンパイアって催眠術使えるのか。それなら、ヴァンパイア召喚できるんじゃないか?」

俺の発言に一同がビックリする。

「催眠術を使う魔物って意外とたくさんいるから催眠術の魔導書だけだと難しいと思う。」

催眠術から選択肢を狭めるんならそうだ。

「メイ。これならどうだ?」

俺が模倣で注射器を生成する。

「確かにこれと催眠術の魔導書なら高確率でヴァンパイアが召喚できそう。」

メイからお墨付きをもらった。

「問題は魔力だな。ヴァンパイアって魔力が多いイメージがあるけど。」

「多いですよ。今のメイさんよりひょっとしたら多いかもしれません。」

エルフに肯定される。魔力量アップのスキルも中2つに小1つになったし昔より魔力量増えてるからなんとかならないかな。

「まあ、やるだけタダか。名付けと違って無理だったら別のが出てくるだろうし。」

失敗したら失敗してから考えよう。

「あんたってたまにそう割り切ってとんでもないことするわよね。」

レイナに呆れたように言われた。


 やると決めた俺はマジックポーションを飲んで召喚の準備に入る。

「まあ、なんかあってもあんたが目覚めるまでくらいわたしが耐えてやるわよ。」

なんだかんだでレイナも協力的である。

「助かるよ。」

そう言いながら準備が完了する。

「召喚」

いつものように魔方陣が展開し、触媒が魔方陣に取り込まれる。そして、次に魔力が持ってかれる。あっ、これやれやばい。

「ソータ。」

俺がクラッとしたのを見てメイが支えてくれる。

「ありがとう。」

どうやら魔力ギリギリで召喚できる魔物が選ばれたようだ。これは足りなくて別の魔物が出てくるパターンかな。

「これが召喚なのね。」

初めて見たレイナが感動したように魔方陣を見つめる。確かに召喚の時の魔方陣は神秘的だとは思うが俺はもう見慣れてしまった。やがて、魔方陣から光があぶれ形を整え始める。

「初めまして。あたしは高貴なるヴァンパイア。あんたがあたしを召喚したマスターね。うまくあたしを使いこなすことを期待しているわ。」

めちゃくちゃプライドの高そうなヴァンパイアが一礼する。その仕草は目を引きつけるような綺麗さを持つ。ただ、身長と体格はメイと同じくらい。つまり、子供だ。

「よろしく、ヴァンパイア。俺が君を召喚したマスターだ。よろしく頼む。」


 それからヴァンパイアに今の状況を説明する。

「なるほど、アンデッドの襲撃を受けてて、それがあたしの同族かもしれないのね。とりあえず、一晩、様子を見させてくれないかしら。あたしも自分の実力を見せておきたいし。」

その後、ヴァンパイアはメイと一緒に剣を選んでいる。素手で戦闘するのはヴァンパイアにとってはしたないことだそうだ。その間に俺はヴァンパイアの能力を確認する。

『ヴァンパイア:夜の王の異名を持つ最強の魔族の一種。圧倒的な身体能力、再生能力を持つ一方、太陽の日差しに弱く、夜にしか行動しない。非常にプライドが強い。

<吸血鬼>

Lv1:〔吸血〕〔超回復〕〔夜目〕

〔吸血〕:血を吸うことで魔力、体力を回復し力を得る。』

 吸血鬼らしいスキルが並んでいる。ヴァンパイアに確認したら〔吸血〕は血を吸うことでも経験を得られるらしい。夕方になって、テンカたちがイノシシを持ち帰ってきたらそこから血を吸って抜いていた。死体でもいいのか。これで血抜きも楽になるな。

 そして辺りが暗くなり、ヴァンパイアの時間がやってくる。最初は任せてみていて欲しいと言われたのでテンカと影狼を待機させてヴァンパイアを待つことにする。さて、どんな活躍を見せてくれるのだろうか。

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