第34話 疑惑
「なあレイナ。おまえはいきなりこっちの世界に召喚されたんだよな?」
レイナが落ち着いて体を起こしてから俺は話を振った。
「うん。急に光って視界が真っ白になって気がついたら王宮にいて。ビックリしたよ。」
レイナを呼び出したのは王国だ。じゃあ、俺をこの世界に送り込んだのは誰なんだ?
「俺がこっちの世界に来るときは、先に呼びかけられたんだ。急に脳に声が響いて僕たちの世界をよろしくって。」
レイナに俺が呼び出されたときの話をする。
「そっか、向こうはもう4月か。」
「俺の話聞いて反応するのそこかよ。」
謎の声より季節の流れを気にする辺りがレイナらしいといえばらしいけど。
「いや、俺が気になってるのは世界の抑止力になってくれって部分。」
「抑止力って止める力ってことだよね。上宮にはそれができるって選ばれたわけでしょ。なんか不満があるの?」
「いや、不満があるとかじゃなくて。今考えてもやっぱ変だよなあ。普通、世界が滅びそうだから頼んだっていうなら助けてくれとか救ってくれとかそういう言葉が出てくるはずなんだ。」
俺はアゴに手を置いて考える。
「確かに。」
「抑止力になれってことは抑止しないといけない何かがあるはずなんだけど。」
俺はそう言いながらレイナの顔を見る。
「何?わたしの顔になんかついてる?」
「いや、レイナの抑止力になれってことなら話がわかりやすいんだけどな。おまえ今世界を破滅させるどころか国から追われてるしな。」
レイナが世界を滅ぼそうとすることはないだろうなと思う。天然で滅ぼしかねないけど抑止力という言葉が出てる限り、何者かが世界を破滅に追いやろうとしてる可能性が高い。
「難しいことはよくわかんないけど上宮ならなんとかするでしょ。」
「思考を丸投げするなよ。昔から言ってるじゃん。」
こいつは思考を放棄して人に任せることが多いのが困る。
俺はレイナとの会話を切り上げて会議室に向かう。
「魔物の数はどうだ?」
「相変わらずですね。イノシシたちが多いです。レッドタイガーの数がちょっと増えたような気がしますけど。」
レッドタイガーが増えるのはそれはそれで面倒くさい。
「それとさっきかなり遠くですけど、ロックベアーがいましたね。」
また新しい魔物が増えたようだ。
「またなんか新しいの見つけたら教えてくれ。」
結局その日は何も起きず、テンカたちはイノシシたちを大量に狩ってきた。
翌日、朝からニーナに呼び出された。
「これを見てください。」
集められた俺たちは映像を見せられる。
「フレイムタイガー。レッドタイガーの上位種。」
メイが教えてくれる。
「じゃあ、こいつ結構やばめってことか。」
そもそもレッドタイガー強い部類の魔物になるのでそれの上位種ともなればかなりの強さを想定しなければならない。
「それから、こっちにはロックベアーの群れですね。」
今度の映像にはロックベアーが3匹ほど一緒に行動している。なんかまた、森の様子が変わってきたな。まだ、ダンジョンの近くに来る感じじゃないけど。
翌日、事件は起きていた。朝起きるとメイに話しかけられる。
「ストーンゴーレムの数が足りない。」
昨日の夜まではいたというのでダンジョン内のカメラの映像を確認する。そうするとスケルトン3体がダンジョンに侵入し、入り口の部屋にいたストーンゴーレム2体と交戦したのがわかった。そのうちの1体がやられてしまったようだ。
ニーナによればイノシシの数も再び増殖の傾向が見られるという。
その日の夜はストーンゴーレム2体にアイアンゴーレム1体を入り口の部屋に置いてみた。
異世界生活19日目。朝カメラを確認するとスケルトン5体が侵入してきておりこちらの損害はなく倒せたようだがこのスケルトンがどこから来てるのかが気になる。明らかにどこからか送られてきているがどこからかはわからない。
その夜、寝ずに起きてた俺は夜中の0時を過ぎたあたりでスケルトンたちが侵入してきたのを確認し、夜目の利く影狼とテンカを起こす。今日はスケルトン7体にゾンビも2体も混じっていた。テンカたちに外を確認させたが怪しい存在は見つけられなかった。
翌日、さすがに不可解なので会議を開くことにする。
「明らかに俺たちへの攻撃だよな。毎日数も少しずつ増えてるし意図的としか思えない。」
俺の考えに異論があるものはいないようだ。
「でも、見回って何も見つけられなかったならどうすることもできない。」
メイが悔しそうに言う。
「しかし、少しずつ索敵範囲を広げれば何か見つかるかもしれませんよ。」
「わたしと影狼だけだとダンジョンから離れるのは危険コン。」
暗くてドローンによる探索もできないため、夜の索敵は難しい。
「となると何か夜の戦力になる魔物を召喚しないといけないか。」
夜の魔物を召喚する触媒となると難しい。
「こっちもスケルトンとかアンデッド系を作成できる魔物がいれば戦力上がるのにな。」
俺がなんとなく言うとメイが腕組みする。
「アンデッドを作成する魔物。上位種の魔物で言えばリッチ、ワイト、デスドラゴン。魔族で言えばデュラハン、ヴァンパイアあと一部の悪魔も作成できたはずだけど不確実だからおすすめしない。」
アンデッドを作成できる魔物を挙げていいてくれる。
「ヴァンパイアってアンデッド作成できるの?」
今の話を聞いて疑問に思う。エルフたちも頷いているのでこちらではわりと有名らしい。
「なあ、封印の館に封印されてるのってヴァンパイアだったよな。」
嫌な予感がする。
「でも、封印されてるからアンデッドの作成はできない。」
メイの答えは事実だろう。
「封印が解けてなければな。」
さすがに最近の魔物の異常発生と無関係のようには思えない。つい最近まで魔王もいたようだしこっそり封印が解除されてる可能性が否定できない。
「可能性はあると思う。もし、仮に封印が解けてるなら館で戦闘になる可能性は高い。それなりの対処はしていくべき。」
ヴァンパイア対策は必須か。直近の課題は決まった。
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