第2章
第15話 復興
異世界生活も早いようで10日目に到達した。まあ、丸二日寝ていたので体感8日くらいだが。
「エルフ、いけそうか?」
今日はクレイゴーレムたちと一緒に森エリアの一部を切り開いて畑にすることになった。
「ええ、このくらいのスペースがあれば今の人数なら余るほどの作物が取れそうです。」
森の一部を更地にした俺たちにエルフが頷く。
「あとは畑として使えるように耕すだけですね。」
かなり順調に進みそれからすぐに作業が終了する。
一日かかるつもりだったんだけど思っていたよりも早く作業が終わってしまった。
「それではさっそく何か植えてみましょうか。」
とはいえ、植えられるものなんてこのダンジョンにはヒリグ草とエネル草の2種類しかない。エルフは両方畑に植え魔法を唱える。
「ハーベストタイム」
すぐに二つの薬草は成長して採取できるサイズになった。エルフは満足そうに頷いた。
「これでポーションとマジックポーションはかなり作れそうだな。」
会議室に戻りながらエルフとそんな会話をする。
「そうですね。あとは果物なども育ててみましょうか。」
エルフが倉庫の中を思い浮かべて言う。
「それもいいけどジャガイモとかの芋系も欲しいかな。どこかにあったりしないかな?」
「この辺なら結構あるかもしれませんね。探してみます。」
エルフならきっと見つけてくれるだろう。無かったら模倣で生み出せばいい。
「じゃあ、頼むわ。」
「それじゃあ、外に出て行かないといけないですね。火狐さんが帰ってきたら一緒に出かけてこようと思います。」
もうすぐ昼飯なので火狐も帰ってくるだろう。
「それとゴブリンの集落の様子を見に行ってもらえないか?」
居残り組を潰しておきたい。上位種など主戦力は全て攻撃に参加するが村に残るゴブリンが少なからずいる。全員で攻撃しに行ってその間に空き巣に入られたらバカだからな。
「生き残りの殲滅ですね。わかりました。」
「ガーディアンも必要なら連れて行っていいぞ。」
1体でゴブリンを壊滅させられるらしいガーディアンゴーレムを連れて行くか尋ねる。
「いえ、わたしと火狐が外に出るんですからダンジョンは守ってもらわないと。」
結局、連れて行くのはストーンゴーレム2体と荷物運び用のクレイゴーレム1体になった。完全にいつもの遠征セットだな。
「いってらっしゃい。」
俺はエルフたちを見送って会議室に戻る。
「メイ、採掘量はどんな感じだ?」
メイも朝からクレイゴーレムを使って採掘していた。クレイゴーレムの数が足りないので金鉱山と炭鉱に1体ずつ。ストーンゴーレムも1体導入され、金鉱山を掘らされていた。
「ソータ、金鉱山からミスリルが取れる。これでより強い武器と防具が作れる。」
順調なようだ。畑仕事が終わったクレイゴーレムたちもすでに採掘を始めており、せわしなく働いている。
「マジックポーション一本飲んでクレイゴーレム増やしてもいいぞ。」
ただでさえ金鉱山と炭鉱の二部屋に増えたのにそれぞれの鉱山面積も増えたのでクレイゴーレム6体(ストーンは地上階に返した)ではとても掘りきれない。マジックポーションはエルフのおかげで安定生産できそうなので採掘を優先してもかまわないと伝える。
「ありがとう。でも、さすがに今はそんなに装備も必要ないし急がなくていい。」
メイが冷静に返す。
「それより、ダンジョンも広くなったしそろそろ新たな魔物を増やしてもいいと思う。」
確かにゴーレムだけでは戦力的には足りてないがそれならメイがゴーレムを作ればいいと思うのだが。
「昨日の戦いで火狐とエルフがいるだけで戦略の幅がだいぶ変わった。魔物のバリエーションが増えれば戦略の幅はもっと広がるはず。」
なるほど、ゴーレムだけだと単調になっちゃうから魔物の種類を増やしたいと。今の比率だとどうしてもゴーレム頼りになっちゃうから数を増やすのはありかも知れない。
「確かにありかもな。」
幸い俺は今日、肉体労働はしたがほとんど魔力は使ってない。メイもそれをわかってて言ったんだろうけど。
「そうなると、触媒をどうするかだな。」
今手元にあるのは魔導書がサーチ、スキャンのいつものにいつ使うんだかわからない幻影と昨日の戦果で火狐が覚えた隠密か。
「魔族が必要なわけじゃないし、その魔導書をうまく組み合わせるだけでもいいと思う。」
俺が悩んでいるとメイが助言してくれる。でも、適当すぎませんかねえ。
「そんな適当でいいのか?」
「ソータなら、それでも強い魔物を引き当てる。」
何故か根拠の無い信用をされている。
「それにそこにある魔導書で微妙な魔物は出ないと思う。」
ちゃんと理由があったらしい。
そんなわけで3日ぶりの召喚になる。候補にあったうちからシナジーがありそうな隠密と幻影の魔導書を触媒に選んだ。
「召喚」
さすがに4度目だと魔方陣が光っている様子にも見慣れてきた。おなじみの魔方陣が触媒を取り込み魔力を持っていく。
「あれ?ほとんど持っていかれた感じがしない。」
驚いていると魔方陣から魔物が出てくる。黒い子犬、いやオオカミの子供か。
「かわいいな。」
火狐が少し成長してしまったので少し懐かしく感じるこのかわいいぬいぐるみ感。
「その子は影狼。姿を隠して影から獲物を狙うハンター。」
影狼について教えてくれるがこのかわいいもふもふがそんな物騒なやつに見えない。
「よろしくな、影狼。」
言葉に反応するように影狼がワンと吠えた。
「ソータ。魔力はどれくらい消費した?」
影狼を撫で回してひとまず落ち着くとメイに尋ねられる。
「ビックリするくらい消費しなかったんだけど。」
魔力の消費量が少なかったことを説明すると
「影狼の魔力量は火狐と同じくらいのはずだから、ソータの魔力量が上がったのとスキルのおかげ。」
なるほど、成長したから消費魔力量が少なく感じたのか。
「マジックポーション飲んで、もう1体召喚してみる?」
触媒にできる魔導書も残ってるしやってみてもいいかもしれない。
「やってみるか。」
マジックポーションをがぶ飲みして魔力が回復しているのを感じてから魔法の準備に入る。
「召喚」
消費魔力はさっきと同じくらいか。スキャンとサーチなら分析系の魔物が出てくるのだろうか。分析系の魔物が何なのかは知らないが。
「は?」
現れたのは白い子犬。いや、オオカミの子供なんだけど見た目は子犬。
デジャブを感じていると
「白狼?まさか影狼に触発されて。」
メイが思い切り動揺していた。
そんな俺らをよそに白と黒のオオカミの子供たちはにらみ合ったかと思うとケンカを始めた。
「こいつらいきなりなんでケンカしてるんだ?」
さすがに止めようとメイに声をかけると
「影狼と白狼は昔から犬猿の仲で有名。お互いにライバル視してるから出会ったらだいたいこうなる。」
と教えてくれた。相性最悪じゃないか。メイと二人で2匹を引き離す。まだ、子供なので簡単に引き離せたが成長したら手に負えなくなりそうだ。
とりあえず模倣でゲージを二つ出してそれぞれに隔離することにした。対策はゆっくり考えよう。
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