第27話 十

 やべー魔法だけ知りたい……。てか、旅に出るって、どこへ行くんだ?


「そういうことで、ご両親にはちゃんと話すのよ」


「両親……? って、あぁ……」


 俺の返事に、アナトは大きく溜息を吐いた。今のってなんだか、わざとらしい感じがするよな。


「そうね……。私が話すわ」


「え? 別にいいよ」


「あなた、ちゃんと説明できるの?」


「いや。でも俺、ずっとここに居るつもりだし……」


「それだと困るのよ!」


「俺は別に困らない」


 俺、ここでなら、この家族となら一緒に過ごすことが出来る気がするんだ。


「ふーん……そう」


 なんか、アナトが意地悪い顔をしてる。なんだ? もしかして、自爆装置とか取り付けられてるとか? それとも、変な踊りをさせられる魔法がかかってるとか?


「そのままだと、魔法が使えないけどいいの?」


「……行かせていただきます……」


「よろしい」


 今度は、超ご機嫌な顔になった。まぁ、どこかに行くったって何年もかかるようなものじゃないだろうし、ちょっとぐらいは付き合ってやっても良いか。


「じゃあ、私がご両親に話してあげる」


「お願いしまーす」


 まー俺、マジで詳しいこと分からないしな。ここはおとなしくアナトに任せておこう。


「それなら、私まだここにいることになるけど、いい?」


「ん? 俺は別にいいけど?」


 なにか問題があるのか?


「そろそろ、妹さんが目を覚ますから……」


「あぁ……」


 そういや、なんだか俺の敵認定をされてたんだっけ。


「まぁ、大丈夫だろ?」


「その言葉、信じるからね!」


「別に、小さい子供なんてすぐに気が変わるだろ? 気にするな」


 なんか、アナトが複雑な顔で俺を見てる。


「なに?」


「いや……なんて言うか……」


 なんか、言いにくそうだな。そんなにまずいことなのか?


「その顔でその言葉遣いは……」


 あー確かに……。一応、アナト以外の奴と一緒にいるときは気をつけてたんだが、アナトだけだと気が緩むよな……。


「別に、二人っきりの時はいいじゃん」


「そうなんだけど……これから一緒に旅に出る身としては、変な女の子と仲間と思われるのがね……」


「変じゃないだろ? 超絶美少女だろ!」


「だから、余計にね……」


 あぁまぁ、確かに言いたいことは分かる。こんな美少女が俺とか言って乱暴な言葉遣いをしてたら引くよな……。いや、まてよギャップ萌を狙えないか? 完璧な美少女なのにその言葉遣い! みたいに……って無理か……。俺も、そんなのには萌ないしな。


「そうね。これから気をつけるわ」

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