第22話 五

「ミーナおねえちゃん? どうしたの? どこかいたいの?」


 ミミが、心配そうに俺を見上げてる。


「あの、かわいそうなおねえちゃんにいじめられたの?」


「違うよ。ちょっと、考え事してただけ。あのおねえちゃんにも、いじめられてないよ」


 そう答えたとたん、いきなりミミの身体が崩れ落ちた。


「ミミ!」


 なんだ? いったい、どうしたんだ? なにか病気か? それとも、俺、なにかしたか? それよりも、こんな時はどうすればいいんだ?


「ミミ? ミミっ!?」


 必死に呼びかけるが、なんの反応も無い。えっと、揺さぶったりとかはダメなんだよな? 頭をぶつけてたりとかあるかもしれないし……。


「大丈夫よ」


 腰に両手を当てて、仁王立ちしているアナトがそう言った。


「大丈夫って……お前がなにかしたのか!?」


「ちょっと眠って貰ってるだけよ」


「眠って?」


 改めてミミの顔を見てみる。かなり穏やかに寝息を立てていた。


「話をするのに、色々と都合が悪いでしょ」


「確かに……」


 だからって、いきなりはないだろ? なんか前もって言ってくれよ……。心臓が止まるかと思った……。


「とりあえず、その子をベッドへ連れて行く?」


「あぁ」


 とは言え、ミミのベッドってどこだ? あまり広い小屋じゃないし、ベッド自体はすぐに見つかるだろうけど、どれがこの子のかは分からない。仕方がない。俺が寝ていたベッドに運んでおくか。あそこなら、話してる最中に寝ちゃったとかなんとか言い訳できるだろう。


「俺が寝ていたベッドに運ぶから、待ってて」


 アナトにそう言い、俺は自分が寝ていた部屋へと向かった。なぜか、アナトも付いてくる。気にせずに部屋に入り、ミミの身体を静かにベッドの上に置いた。


「アナト」


「何?」


「ミミは本当に大丈夫なんだな?」


「ええ。ただ寝てるだけよ。話が終わったら、ちゃんと目を覚ますから」


「なら、いい……」


「じゃあ、明日にはここを出るから準備よろしくね」


「へっ?」


 明日? ここを出る? いったい、どういうことだ?


「ちょっと長い旅になるから、しっかり準備しておいてよ」


「あの……」


「ん? 何?」


「明日とか、ここを出るとか、旅とかどういうこと?」


「あーだって貴方、書類を破壊しちゃったんだもの」


「書類? 破壊?」


 もしかしなくても、書類って昨日の白紙のことか? それにしても、破壊って変な言い方だよな……。

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